アトリエの
鉱物・化石



福島 紫水晶左右17cm
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  アルバム紹介とぶどりへ 

 多くの産地を訪ね歩いて鉱物アルバム(冊子)を出したのですが、このH.P.は、その鉱物アルバム本以後の追加標本や追記にします。今回、鉱物・化石アルバム(トップページ)に総合索引をつくりました。現在は6ページまであります。鉱物編の検索はアイウエオ順です。ご利用ください。
 自然科学のほんの一分野である化石・鉱物は私にとって同等です。鉱物も大小、地味派手ありますが、どちらも物語るストーリーを持ってます。
 自然科学分野に広く興味があり、縁あって採集したのなら纏わることを知りたい。つまらないとか地味なものだって面白い物語を持っているかもしれない。てなわけで広く取り上げたい。タイトル(テーマ)によって決まったスタイルはありませんが、それなり見守ってください。
 化石アルバムのほうも同時進行します。こちらもどうぞです。
              
         
      下記での赤字タイトルは、すべて後々での画像あるいは文の改定や補筆(リニューアル)したケースになります。

1菱マンガン鉱→2洋紅石→3水晶→4自然金→5燐灰ウラン鉱→6燐銅ウラン鉱・7砒銅ウラン鉱→8セリウムフローレンス石→9日本式双晶→10火閃銀鉱11ミアジル鉱→12菱鉄鉱→13菱亜鉛鉱→14エオスフォル石→15針ニッケル鉱→16菱苦土鉱→17水鉛鉛鉱→18ザレシ石→19磁硫鉄鉱→20蛍石→21花崗岩ペグマタイト→22亜砒藍鉄鉱→23毒鉄鉱→24砒灰鉄石(アーセニオシデライト)→25水亜鉛銅鉱→26自然蒼鉛→27輝蒼鉛鉱→28アダム石→29紫水晶→ 30トムソン沸石→31灰十字沸石→32鋼玉・コランダム→33自然銀→34バナジン鉛鉱→35白鉛鉱→36デクロワゾー石→37紅安鉱→38鉄電気石→39金紅石→40ラムスデル鉱→41濃紅銀鉱→42コニカルコ石・43コーンウォール石→44ゼノタイム45モナズ石→46褐レン石→47エシキン石→48銅重石華→49デビル石50珪亜鉛鉱→51ヘディフェン→52都茂鉱→53青鉛鉱→54宗像石→55スコロド石→56方鉛鉱→57黄銅鉱→58閃亜鉛鉱→59大隅石→→60藍銅鉱→61亜鉛孔雀石→62菱ニッケル鉱(T)→63メラノテック→64コンネル石→65コバルト華→66輝コバルト鉱→67トパーズ.黄玉T68ブロシャン銅鉱→69デューク石→70アガード石 次ページへ 現在ほとんどの鉱山は稼動してはいません。
アマチュアがとり上げるトピックであり信頼度100%ではありえません。間違いも多々あるかと思うので、いろいろあれば、ぜひぜひ"鉱物・化石アルバム"か、"リンク;アトリエぶどり"からのメール等で指摘いただければ幸いです。それと昨今の化石を取り巻く事情からH.P.上で詳しい産地情報を扱うのは適当でないとしました。     
 
              
     小さな鉱物は母岩全体撮影では、よくわからないので拡大しています。画像のmm単位のサイズはおよその
 ものです。 撮影は結晶サイズがおおむね2mm以上ならデジカメそれ以下のサイズなら一眼デジ+いろいろ。
  ですが、ページの写真枠に合わせて原画像を縮小するので解像度が落ちてます。
      

                     1◆似てないなー菱マンガン鉱

 タガネも欠けるほど硬い母岩が多いマンガン鉱の中で、菱マンガン鉱(5p-41にも)はくみし易い。菱マンガン鉱は珍しいものではないが現在は鉱山が稼行終了して久しいので、採集で図鑑のような立派な結晶を得る機会はほとんどない。菱面体でできていることもあるが、ぶどう状の結晶も珍しくない。
 長野県竜島鉱山は安曇野地域の川沿いに分布する小さな鉱床でそのためかズリらしいものが殆ど残ってない。低品位鉱が殆どなので当然菱マンガン鉱は少ない。昔は露頭にも小さなガマが見られ水晶と共存するピンク色の菱マンガン鉱がちらほらみられたものの、最近再訪した際にはもう見るべきものは殆どなかった(右上画像は以前のもの)。
 次の岐阜県土岐市の画像はぶどう状の菱マンガン鉱である(右下画像)。この地ではイオン半径がほぼ等しいMnとFeのイオンが共存しているため入れ替わりやすく、鮮やかなものから黄色みを帯びたものがある。つまり菱鉄鉱に見えるものも多い。これは後述のエオスフォル石の北猪飼でもみられた。それでも菱鉄鉱の一部にはカットされるものさえあるし、価値が落ちるなどと思わなくてよいはず。 
 菱マンガン鉱は酸化が進みゆっくりと退色するので注意すべきだ。日光にさらさないことで退色が鈍化する。たとえそうなっても市販の還元剤の使用によってだいぶリカバリーできるはず。
 ぶどう状の結晶は結局菱面体が微細になっているということで、静岡県河津鉱山の菱マンガン鉱を追加する。下画像はガマの一部であり下述の菱鉄鉱と同じような結晶が確認できる。この画像を遠くから見れば丸い結晶になる。なおこの菱マンガン鉱は黒く汚れているのが玉に傷だが、殆ど赤色といってもよい色合いだ。
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菱マンガン鉱 静岡県下田市蓮台寺町球径5mm
菱マンガン鉱
菱マンガン鉱
 Rhodechrosite
 長野県松本市竜島鉱山 ガマ径1.5p
菱マンガン鉱
岐阜県土岐市下石町 ガマ径3.8p
                        2◆洋紅石小さすぎ  

 探すのが困難なのは相変わらずだが洋紅石の産地は少しずつ増えてきた。
 実物はカーマインレッド(エンジ色に近い)の光沢ある針状結晶で、エナメルを剥いた時の線の銅の色のようだ。針の長さは0.2mm前後であろうか。20倍程度のルーペで針状がはっきりみえる。これが球顆針状に集合したり、結晶面の見えない球状になったりもする。たまに赤色でキラキラとした面をもつ別の結晶のようなものも見るが、これはスコロド石などの上を覆っているのだろうか。このこと
海外の標本などを見るとやはりそれもあるようだ。
 
 洋紅石が入る石には赤や茶系統の褐鉄鉱くずれが多く見られ、色(写真はまあまあの再現)をきちんと覚えておかないと紛らわしい。たとえば洋紅石はルーズな結晶でなくはっとするほどの美しさがある。マウスの矢印を画像に合わせると(以後マウスポイントとする)上下の画像とも結晶の形が分る拡大画像になる。
 大分県観音滝、山梨県黄金沢、また、岐阜遠ヶ根の旧鉱山を訪ね、運よく洋紅石を採集できた。
 全体的なズリ石の見かけはだいぶ雰囲気が違う。黄金沢鉱山は、小さなエリアしかないズリを入れ替わり立ち代わり掘っているのか、もう母岩自体小さいものばかり。遠ヶ根鉱山では、逆に広いエリアだが、結晶のはっきりしない硫砒鉄鉱や砒鉄鉱の多い不毛の母岩ばかりで、成分を構成するひとつの鉛が少なく鉱石の腐りも小さい。観音滝旧坑は、アプローチが大変なうえ、ヒルの出迎えがあるので覚悟がいる。更に秘境といわれていたが、もう今では到着してもしばらくは色つき鉱物が探せない。どこもここも運+情熱が必要で何も採れない可能性もあるという印象だ。
 探石は、砒酸塩の存在環境で、鉛と鉄のイオンの供給がある石英空隙を意識して探した。.
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洋紅石
Carminite 山梨県甲州市塩山 黄金沢鉱山 
洋紅石
大分県佐伯市宇目町木浦鉱山木浦内 洋紅石
                          3水晶(1)

 宮崎県西米良村はずいぶん以前から知られた水晶産地で、たいそうきれいなそうな。資料ではもう絶産なのだが、その周辺にはまだ何かしかあるらしいことが分ってきた。ちゃんすがあったので立ち寄る事になった。たどり着くまでも大変な現場だが、そこからすべりやすく斜度のきつい斜面の上のほうに向かう。それでもめぼしい場所ではすでに残り物状態。厳しい作業が待っていた。
 こてこての褐鉄鉱(俗にいうところの鉄さび)に包まれているものほど透明度が高く、「しめしめだ。酸で溶かせばよい」と思ったが、そうは問屋がおろさない。広く探したほうがよかった。基本はかっ鉄鉱にくるまれて所々水晶の面が現れているという状態。これでは大量の酸を消費するのだ。さらにここの特徴である細長いタイプの水晶は、ていねいな作業中でも簡単に折れるほどデリケート。それは褐鉄鉱が水晶の表面を覆う際に水晶に対して強い力が加わったことを暗示している。
 ついでにご注意。3月なのに、現場でなんと山ヒルにやられた。それは昼だった。それだけならアホな駄じゃれだが、ヒルは野生動物のシカやイノシシに吸い付いて拡がることが知られている。日本人が鹿やイノシシを食べなくなったり過疎化の進行がすすむ昨今はヒルの生息域が逆に広がっているため、ヒルが出るような鉱物の産地が間違いなく増えているのを実感している。昔のバランスに押し戻さないと今後のアウトドアは影響が大きい。
 話は戻るが、支柱になる水晶の上に多数の小旗状態の水晶がついたものがいくらか見
られたが、それはいままで他産地で見たことがないような特徴だった。e-i

水晶 宮崎県西米良村板谷 5cm前後、12.5cm
水晶
                         4◆ 自然金         面白半分マオ

 この長野県の甲武信鉱山も、金鶏鉱山も甲斐の国の信玄と関係が深かったのだろう。金銀山があれば領地は栄える。軍資金として金は不変のものである。
 自然金は銀や銅他が含まれていてもだいたい金色が基本だが、量が多ければ色合いが白〜赤みを帯びるし、酸化しにくいものの少し暗くなる可能性もある。微小の黄鉄鉱、黄銅鉱、硫砒鉄鉱などの硫黄成分をもつものと紛らわしいし共存もする。状態によっては金そっくりで、金をよく見ているとだいぶ慣れるものだが、ルーペサイズギリギリの物ではベテランでも迷うことがあると思う。甲武信のものは純度は高くないと思っている。このこと、いちおうの見分けは鉱物アルバムの本文に記した。
 世間の常識と違って、鉱石の中の自然金は目に見えないサイズが大半。なので比重、条痕、硬度、色、結晶系などの金のあれこれをお勉強しても。これらは対象が大きかったり、破壊してもいい程度にサイズの余裕があるときには良いが、そういう場面はほとんどお目にかからないので現場ではあまり役に立たない。知った人に同行して経験を積んだ方がよさそうだ。ちなみに金鉱山としての採算は、海外の大規模なら母岩1トンあたり1g以上含有されれば十分だが、日本では5〜8g以上だったといわれる。さらに肉眼で金の粒が確認できるような場所は、トン当たり30g以上の高品位鉱の部分であるという。
 上画像
は不定形で肉眼サイズ(老眼世代と違い子供たちはよく見えるという)で、ホセ鉱に伴いやすい。しかし鉱石を下ろしてきた現場には残った総量がもう多くないと思う。でも、どこかにびっくりものが隠れているだろう。しかし誰かさんが、そのあと2018年に行ったが、もう行くのは無駄だよと報告があった。
 諏訪大社からそう遠くない金鶏鉱山もまた信玄の隠し・・(1558年)とある。戦いに明け暮れていたころだ。金の出るところの城下は押さえておきたいと考えるだろう。でもなぜこの戦国武将だけ隠し金山という話だらけなのだろう。そこんところ大河ドラマの中でも信玄は金山のことを殆ど伝えなかったが、軍資金として金の出るところは何としても所領にしたいのが当時の常識だろう。
 下画像は、金鶏鉱山の自然金である(自分だけに昼寝姿の我が家の猫にみえる)。ここで
下画像をマウスポイントすれば、こんどは拡大画像だがそうは見えないなあ。
 自然金のある付近を大きく拡大してみると、かすかに見える金が結構あり、金は眼に見えない微粒子が普通のサイズなのだとあらためて納得した。とはいえたまに大きいものに厚みのあるのもある。現地は冬は雪深そうなかなり不便な場所にあり、採算に見合ったものかと考えたくなる。
 ここの金は
テルル蒼鉛(のグループ,3p-23)他に伴うことはあるが、単独に近いこともありスポット的だ。その金属鉱物も一見すると金っ気のないような平凡なズリが広がるもので、目星がつけにくく見つけるのは簡単ではない。
 他の金属にはゲルスドルフ鉱や磁硫鉄鉱?とかの他の鉱物もあった。結晶ははっきりしないが、銀鉱物も混じっているのだろう。
 金鉱石の純度は砂金が最も高い。ろう石鉱山においてはやや高いと聞いたことがある。確かにほぼ黄金色に近い色合いでいつも紛らわしい黄銅鉱などほとんどみられないので、もしここで金色鉱物が出るとかなり小さくてもここのは「金だ」としてよい。
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長野県川上村甲武信鉱山 自然金1mm前後自然金
茅野市金沢 金鶏鉱山        1mm超
下画像をマウスポイントすればマオ(猫)
自然金
                5燐灰ウラン鉱

 目覚めて、放射性鉱物の産地をと探すが意外に現在は適当な場所がない。友人の言葉「質を問わないなら採れるのではないか」。それを頼りに、山口県を通ることにして迷いに迷ってたどりついた。やぶ蚊が大量発生しそうな薄暗い場所だ。ミネラライトを持参していたのでそれを頼りに捜索する(実は長波長のランプでも光る)。 現場で石を割りとってもすぐばらばらになってしまうので、結局小さいものばかりが手元に残る。このとき体内被曝に注意かも。燐灰ウラン鉱はミネライトで薄緑色に強く光るが、光ったところをよく見てもその場所に黄緑色りんぺん状鉱物はなかなか見えないので、あせってしまう。
 愛知県の三河地方(現西尾市)からも採集したが、こちらは小さな電気石や柘榴石を散りばめる花崗岩のペグマタイト部に見られ、黄色っぽい薄緑色として肉眼でも割合よく見える。それと燐灰ウラン鉱の密度がやや高いのでブラックライトで観察するだけで幻想的な世界が広がる。それとここの産地のペグマタイトの一部には4ミリ以下の皮膜状の燐銅ウラン様鉱が近接していることがある。そういう例は他に知らないが面白いことでありうることだ。
 家の中で夜に光で照らしたり、ミネラライトで照らしたりしながら撮影場所を特定したりもするが、放射性鉱物であることを忘れさせる(怖い?)。今思えば私は気づくのが遅いけど、採集のときに夢中になって石粉を多く吸い込まないように。低放射性といえどもからだに入れば無視できない。保管は燐銅ウラン鉱と同じようにしているが、γ線は通過する。まあ距離をとれば減衰するし、いいかと思っている。放射性鉱物はきれいな結晶になるものが多いようで人によっては魅力的かもしれない。
 なお画像は石井鉱山のものでミネライト不使用、以前の画像を拡大して細かい結晶の組み合わせからなることが見えるようにリニューアルしている。
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燐灰ウラン鉱
山口県柳井市 石井鉱山 1.5mm
        6◆燐銅ウラン鉱  7砒銅ウラン鉱

 燐灰ウラン鉱も産地が少ないが、燐銅ウラン鉱はまたいちだんと産地が少ない。それに、燐灰ウラン鉱のときはミネラライトで光るのに燐銅ウラン鉱では銅が邪魔して光らないので見出しにくい。
 近県の黒川鉱山や五加鉱山の何度目かの探査で見つけたが、石を割るとちいさな緑っぽい色が一瞬きらめいた。稀にしか出ない上、結晶はさらに少ないし小さい。ブロシャン銅鉱より若干明るいガラス光沢・緑の系統で、さいころを薄く切ったような結晶になるが、鱗片状のものでもその形が基本になっている(色は少し薄くなる)
 岐阜県産の右画像は先述A氏の手によるもので、同じ石の撮影なのに燐銅ウランの粒が増えたような不思議な気分で、サイコロのような特徴あるかたちがよくわかると思う。
 放射性鉱物なので金属とプラ箱の二重構造で保存しているが、よほどためこまなければなんでもない。問題は、採集、整形の時の石粉の吸い込みのほう、ところで現地の石をコンビニ袋に集めただけでも測定すれば線量が数倍にはねあがる。
 燐銅ウラン鉱はもちろんだが、前はたくさんあった緑鉛鉱(3p-1)の結晶さえも信じられないくらい少ない。また、過去には文献にはないような種類がいくつかあり興味深かったが過去形になりつつある。
 参考までに岡山県の砒銅ウラン鉱を滑り込ませてみた。倉敷市にある三吉鉱山産である。現地は、広い地域にたくさんのズリが散在しておりどこがポイントかが分からず、まともに採集できたのは三度目の訪問になる。でも広いだけに新しいものが見つかる可能性はありそうだ。・・・といいながら私、最近動きが鈍くなっている。もう情熱とかロマンだけでは動けない。
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燐銅ウラン鉱
燐銅ウラン鉱 岐阜県加茂郡白川町0.5mm前後
砒銅ウラン鉱
砒銅ウラン鉱岡山県倉敷市三吉鉱山 1mm弱
           8◆セリウムフローレンス石  

 久しぶりの金鶏鉱山へ。場所もうろ覚えになっていたが、あわよくば話題のセリウムフローレンス石なるものをと。 その日、運よくリュックを背負った守護神が登場。その神の啓示のもと、ちょっと頑張ってみる。石友には神が宿ったが、私は嬉しい悲鳴をあげることもなく帰ります。だいたいこのごろそんなもの。
 もちかえった石をヒマという武器を使って丁寧に割りこむと、まれに小さな水晶洞の隅にCe−フローレンス石が顔を出す。ちなみに大きい石のままで見えたのは一度だけ。直接には見えず酸処理(あまりしたくないが)で初めて顔を出す場合もあるから見つけ出すのはかなり大変。緑雲母、石英、晶洞の米水晶、黒っぽい鉱物(チタン鉄鉱らしい)からなる石を割ることになるが、それにしてもこれはと言い切れるほどのパターンがない。いわばそんな石は現地に無数にある。
 ちなみに家に戻ってからの私の検査済みのズリ石を持ち帰った石友は、その石を見直すだけで私と同じくらいの数のフローレンス石を得ている。集中力がなくなっても惰性でルーペを使ったが、自分のザルを思い知った。でも私に捨て去られずにすんだのだからよかった。
 多くは先に晶出した水晶に邪魔されながら最後に晶出している。そのためかあまり形がはっきりしないが、形のよいものは変な形の紫水晶ないしその一部のように見えた。そんな画像(下)を追加しておこう。ちなみに、赤紫結晶は黄褐色〜褐色の皮膜に覆われることが多く、これは無数にある小さな水晶と同じ。もし全体がこのような茶色の皮膜で覆われていたときは簡単に見分けはできないものである。それ以外ではピンク色の結晶〜塊状をなしているのもある。ただ最近は産出を絶っているとまで言われるようになった。実際に2018年に行ってみたら、露頭で産出していた狭い範囲はすべて空中になっていた。あれまあ。
 CeはLaグループなので同居しやすく、グループ中でCeのモル比がもっとも大きいもの。ちなみにセシウムではない。
 Laグループは今話題の希土類元素だが、モナズ石(後述)やバストネス石が主要鉱石で中国からの産出が多い。(レアアースだ)
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セリウムフローレンス石
セリウムフローレンス石
長野県茅野市金沢金鶏鉱山1mm〜2mm
セリウムフローレンス石
                                           9◆ 日本式双晶って

 水晶は石英がいい条件で結晶したものなので、鉱物図鑑を見れば水晶はないか、あるいは石英の項参照とある。地表で一番多い元素のNO1とNO2が結合したものでありふれている。水晶は狙って手に入りやすいし、結晶がほかより大きく、きれいなので学術評価と関係なしに人気がある。嫌いな人はいないはずだ。
 それはさておき日本式双晶である。鉱物アルバムでも取り上げ済みだが、今回は専門家の手を煩わすほどのレベルでもなく、何より水晶好きの方々にお聞きしてもあいまいで解決しない単純な疑問がある。
 そのひとつ。双晶は84.5度の角度をなして接合するというが正対して撮影したと思われる鉱物図鑑の写真を見ても軸が84.5度より大きそうなのだ。どこを測るのかということ。
 もうひとつ。ひとつの水晶に小水晶が84.5度をなしているとして他方からみれば95.5度だ。95.5度の双晶があれば日本式双晶といってもいいのかということ。
 仕方がないので私も他の人にならっておおよそ角度と願望で日本式双晶と決めているが、すっきりした気分ではない。
 昭和38年宮崎県の板屋の部落内で発見された大量の水晶が分類された冊子を見れば、丁寧に測角をしている(どう測ったかの記述なし)。そのうちの日本式双晶は2個だけ。擬日本式双晶は、120個以上だったのである。
  さて画像の日本式双晶は・・・・まだ採集ほやほや、水をかけただけのものでちょっと画像上で探す必要があるのもある。また、全部が透明双晶だが撮影角度によりそうは見えない。
 上の画像は、通常のハート型水晶なのでよくあるタイプ。中の画像の双晶は中央少し上部にあり接合面が柱面の大半を飲み込んだかたちの軍配型。下の画像の場合は一見ふつうの水晶のようだが、接合面が錐面の大半を飲み込んでいるかたちだ。これは何というのだろう。
 これら日本式双晶は両翼長で測ると大きさは3〜12mm程度であり岐阜県下の同一産地である。なおここはヒルがいます。

 先述の金鶏鉱山にも小さな日本式双晶を時折見ることができる。水晶の見られるガマのうち平板水晶があったら、双晶が出る確率は高くなるもの。差し渡し2〜3mm以下が多かったが、写真の標本だけは抜きん出て大きかった(一番
下画像)。金鶏鉱山にはきれいな帯緑の白雲母、帯緑の苦土電気石(ともにクロムのためだろう)。更に小さいがテルル蒼鉛に伴う自然金もでた。TeやBiは金と相性がよい。しかし、自然金は今は少ないし、あっても小さいものばかりだった。
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日本式双晶ハート型
日本式双晶中央上軍配型
日本式双晶
長野県茅野市 金鶏鉱山 11mm
日本式双晶
               10火閃銀鉱      やはりなかったか

 福岡出身ということもあって、九州にはなつかしさがある。火閃銀鉱という素敵な名前に惹かれ(石友も同じ)、ここを知る方からのマップも得て西米良村の天包山にも足を運ぶことになった。天包山を回りこむルートはルートファインディングに迷い、ルートの寸断に自信を失い、歩き続けることにも不安になり、こんな山奥に鉱山があるはずないと弱気になった。一人ならとっくにあきらめていたところ。現場らしきところがわかり採集を試みるが現物を見る機会がなくい苦戦したし、後から考えてもこれは産量が少ない。たどり着いてもありつけない人が出るなあ。
 火閃銀鉱が産出している鉱山は串木野鉱山でもさらに希産だったとされていたが、それがここでも見つかったというだけで相変わらず希産鉱物だ。宮崎の西米良村の天包山からさらに山奥に向かうという相当不便な場所で、鉱山というほどの規模でもないようだ。そういえばそのころ一緒に行った石友が、2015年になって案内で数人で出向いたが、まったく見られなくなったといっていた。昔もそう多くなかったからかなあ。
 この上画像では輝安鉱にへばりつくような、褐色粒に見えている。下画像は元が良いものでオレンジ〜赤系統の火閃銀鉱の粒に見えるかもしれないが、圧縮前の元画像では薄板状が林立している。そのつもりでよーく見れば圧縮した後の画像でもそう見える。ただし、20倍のルーペではそこまで見えない、・・・というほど一つ一つの結晶は小さいもの。これで濃紅銀鉱(三方晶系)とは思えないが。
 かなり無理して拡大しているが、最後はカメラ機材グレード+経験技術の問題。下画像は、撮影趣味の友人の手によりリニューアルしたもの。輝安鉱の表面に付着する火閃銀鉱の特徴がより明らかになった。
 火閃銀鉱での銀の含有率は輝銀鉱ほどでなく、だいたい濃紅銀鉱(後述)程度だが、何しろレアなので採鉱時のメインにはならないだろう。濃紅銀鉱とも共存できる可能性はある。それらしいものもあったかもしれない。 火閃銀鉱が乗っかっているのは主要鉱物の輝安鉱(木)に生えるキノコのように覆っている。輝安鉱はそのサイズと環境によっては、ガマを造ることなくペランとした形でヘキカイ面を見せるのみだ。総じてここの銀鉱物は銀、アンチモンの硫化物となっている。
 他にはやや立派な白〜淡褐色の針状〜球状さらに単結晶のバレンチン鉱。それにミアジル鉱(後述)もあった。近くにはこれらの脈の形成のきっかけになる石英斑岩〜花崗岩系統の岩がみられた。
 
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火閃銀鉱
火閃銀鉱 宮崎県 西米良村 天包山 
                11ミアジル銀鉱

 ミアジル鉱は、AgSbS2の組成を持ちミアジル銀鉱ともいわれる。化学組成から見て輝安鉱やベルチェ鉱と関連性があるようだ。Sbが同じ母岩にあるとは限らないが、砒酸塩の地帯では産出しにくいことになる。ちなみに濃紅銀鉱(後述)も同じ元素構成だ。ミアジル鉱のほうが銀の比率が小さいこともあって銀の含有率は主な銀鉱物のうち最も低い。このことから輝安鉱やベルチェ鉱が目立つ場所では、品位が低いミアジル鉱のほうができやすいことを想像した。しかし、品位が低いのに不思議にも全国的に産出の見られる濃紅銀鉱よりミアジル鉱の産出地の方が圧倒的に少なく、それもこの鉱物は九州、北海道に産出が片寄っている気がする。産出条件が限られるのか。
 ミアジルの資料が少ないので自信はないが、敢えてミアジル鉱の特徴を言えば、まずは、やや黒ずんだ小さなとらえどころのない塊状金属が多い。結晶については、この塊状部が点々としているところで小さな(水晶)ガマが付近にあれば可能性がある。たとえば隙間に硫砒鉄鉱や黄鉄鉱とは違う結晶で、暗銀灰色の金属光沢か表面酸化のため黒色で光沢のないものまで幅がある。単斜晶系で形は短柱とかそれがいくつか入り組んだような複雑な形に見える。C軸に平行な条線はけっこう特徴的だが、それが見られないものもある(両画像ともよく見ると見えるはず)。また、光にかざすとその方向によっては赤味のさすのもあった(濃紅銀鉱のとはやはり違うが区別がつかないのもときどき出るはず)。
 ミアジル鉱は、よくある黄鉄鉱など他の硫化物が多いところには見ないが、黄鉄鉱の少ないところには産出を見ることがある。
 わずか三ヶ所程度の産地でのアマチュアの観察結果であり、これらの特徴はどこにでも通じるものではないだろう。あくまでも参考程度のことだ。画像の結晶は1mm内外。暗い小さいガマの中なので画像は全体を少し明るめにしたが、それでも不足気味だ。多くは石英のガマに見られた。長時間の経過でさらに暗くなるのではないか。
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鹿児島県日置市  豊城鉱山

ミアジル鉱 大分県山香町 三井大高鉱山
                 12菱鉄鉱

 岐阜県土岐市の五斗蒔地区は藍鉄鉱の産出で一時話題になったが、その南に位置する土岐市久尻の道路工事現場でも藍鉄鉱が出て、同じく菱鉄鉱を伴っていた。それは特に結晶が目立たない黄褐色半球形を主としていたが、最近になって見ていたら、酸化が進んだのか若干黒ずんでそのためコントラストがついている。まるで菱面体(住宅)の大集合住宅のようで、それがぶどう状に見えている標本が中にあった。 画像をポイントして
 同じグループの方解石がそうであるように、菱鉄鉱でも実際はいろいろな顔つきを見せ菱面体だけとは限らないし、菱面体が明瞭なものはむしろ少ないとおもう。
 菱鉄鉱は炭酸イオンと鉄イオンというありふれた組み合わせ。これならどこにでもありそうだがH.P.検索をすると、国産に限ればヒットが予想外に少ない。これは地味さに加え、いろいろな顔つきで産出していることもありそうだ。塩酸では、じんわりと発泡して溶け液は鉄イオンの黄色系統になった。
 菱鉄鉱と共存しやすい藍鉄鉱もFeは(2価)であり、その状態は安定でないこと。藍鉄鉱の保存は気にかけたが、これに伴う菱鉄鉱の標本の保存には無関心だった。これも変化を受けやすいのかもしれない。でも、自然に任せるのもよいし、コントラストが出て結晶の形が明瞭になったと考えればよいか。
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菱鉄鉱
菱鉄鉱 岐阜県土岐市 久尻 直径7mm
                 13菱亜鉛鉱   いろいろな顔つき

 菱亜鉛鉱も炭酸イオンと亜鉛イオンというありふれたイオンの組み合わせながら、国内に限ってH.P.検索をすればヒット数は菱鉄鉱より更に少ない。菱鉄鉱よりも産地が少ないことは確かである。
 スミッソナイトというスミソニアン博物館にからむ由緒あるネーミングである。結晶になることもあるがあまり目立たず、不純物による着色で目立つものが海外では好まれている。
 日本産のはモノトーン気味が多い。上画像の滋賀県石部町灰山近辺の菱亜鉛鉱もそうだ。ここでは銅鉱物と共に産出するが、交わらない。別々なのだ。 結晶のシャープさもいまひとつであり、菱の字にこだわってはいけないなと思う。写真は標本の中でも、少しでも色づいているものを選んでみた。微妙に味わいのある色変化を見せるので海外での人気がすこーし分かるような気がした。菱亜鉛鉱を多く含む石は持つと重く感じるのがわかる。
 それでもしばらく後に訪問したときには別の露頭が現れ、そこから崩落した岩からはキラキラとして菱形を見せる透明ぽい菱亜鉛鉱があらわれた(
上画像をマウスでポイントすると見られる)。とくに画像内の下隅に典型的なものをみることができる。さらに、すぐ近くの通称灰山では、爪状でやや透明感のあるの菱亜鉛鉱が出たことがあり、これもそれに近い。
 海外産のは不純物で着色されているものが多いがベースは上画像と似ていて、米粒あるいは濡らしたお米の集合体みたい(結晶が発達しないものでは少し表面がとろんとなっている)研いだ米のよう。例えて和菓子の求肥のような見かけともいわれている。ともかく菱がつくグループの中で、ちょっと変わっている。
  下画像に参考のために富山県の亀谷鉱山のものを示す。現場は富山県の南東部山奥になるが有峰林道からやや急な斜面を沢を登ったところにあった。かすかに青みを帯びてみえる灰白色で、灰山産と少し雰囲気が違うが”もち”の皮のようなフィーリングが似ている。異極鉱(5-46)と間違いやすいがそちらは板状結晶の集合体で、球を作っているようには見えない。酸に対して発泡して溶けるはずで、この反応を試せばより完全だが、残念ながらちいさな標本しかないため試していない。このほか三川鉱山(新潟)にも半透明で表面はガサガサの虫の卵みたいな菱亜鉛鉱がみられた。
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菱亜鉛鉱
Smithonite菱亜鉛鉱 マウスポイント画像あり
滋賀県石部町石部鉱山 画幅4cm
菱亜鉛鉱
富山県大山町 亀谷鉱山 画幅3.2cm 
            14エオスフォル石 これぞ結晶

 多度町では狭い範囲ながら、藍鉄鉱をはじめとしたリン酸塩鉱物が得られる。エオスフォル石、メッセル石(後述2P)などの珍しい鉱物のほか菱鉄鉱や菱マンガン鉱などが出ていた。でも最近ついに見かけなくなった(すぐ近くに別の施設ができた)。
 エオスフォル石は曙光石という素敵な和名を持つ鉱物で、海外のは小さいながらもやや透明感のある薄桃〜褐色系統で、錐面のイメージは洞戸鉱山産の透輝石のような形。そのつもりでいろいろ探すが見えない。ここのは縁取りがわずかに淡褐色の白色の花びら状・真珠光沢をしているようなものがエオスフォル石だとされる。分析されているからそうなのだろうが、海外標本とのあまりの違いに私は気になってしょうがない。
 最近、手持ちの石の中でエオスフォル石?としていたものも含め、よーく観察したら一個の石にやっと、海外標本のような特徴ある錐面と色を持つ小さな小さなエオスフォル石が見つかった。ルーペでも確認しづらいサイズと場所だったが、何とか再現を試みた。
 実物はもっとシャープな形だが、いちおう上画像では左際や右際の場所にそれが見られる。それが、分りにくいとのことで、エオスフォル石の特徴ある結晶が見られるように編集した画像を準備した(
画像をマウスポイントする)。このような標本は通常の花びら状のエオスフォル石の部分では見出しにくく立体的な空隙(いわゆるガマ)がないと出てこないみたいだ。
 下画像として通常みられるタイプのエオスフォル石を追加してみた(通常といっても簡単には得られない)。それは、岩の狭い隙間に出るもので、球状ないし半球状になっている。うまく割れるときらきらとした針球状で現れるが、この縮小画像では一個一個の結晶の形までよくわからない。
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エオスフォル石
三重県桑名市多度町猪飼エオスフォル石 Eosphoriteとポイント像;下は通常のタイプのもの
エオスフォル石
         15針ニッケル鉱   コーティングどうしょう

 白亜紀前期の化石を求め訪れたこの地域。天皇浜の針ニッケル鉱はそのついでに立ち寄ったものの、場所不明で退散し2度目の訪問になる。付近にはシルル紀の化石が見られるはずだが、鉱物界の同行者のため今回は封印。聞けばめざす鉱物はほとんどとれないらしいが、それでも行きたくなる。我ながらいやな病気の発作だ。
 ただの針状金属光沢であった。すべすべした母岩のところに含まれているということは似ていて(ドロマイトのようだ)、長さはまれに7mmを越すものもあった。変質して緑っぽくなっている部分もあるが、これがかのジャンボー石ならよいのに・・・。天皇浜での産出範囲がはごく限定されているようなので、そこを見切るかどうかがポイントになる。
 
上画像をポイントすると、群馬県茂倉沢鉱山の針ニッケル鉱である。ここはMn鉱山だが、もともとマンガンしか出ないわけでなく変な鉱物がひょいと顔を出すことが多い。例えば、他の例だがゲルスドルフ鉱、輝コバルト鉱、四面銅鉱・・・。この画像のたぶん針ニッケル鉱もその偶然みたいな産物だろう。小さいながら、普段あまり見られない条線が観察できる。
 それまでに大分の若山鉱山で針ニッケル鉱のメノウ質母岩に出ている放射針状の真鍮色のものを得ている(下画像)。それは新たに収納のため石を小さく加工する際に出てきたもので新鮮である。
下画像をポイントするともう一つの画像があるが、これは話しに聞いたが針ニッケル鉱はゆっくりとではあるが黒く変質して行くらしい(このこと、母岩の質や保存環境にもよると思うが)。空気に触れにくくするためコーティングをしておいた。そのときコーティング液を塗った瞬間の質の変化を見て少しだけ後悔したのは確かだ。それは7年以上前にコーティングしたものだが今回のと比較してみると、確かに初期の輝きを保っているように思う。こうなると新たに割り出した下画像標本をコーティングしようかどうか迷ってしまう。c,g 
針ニッケル鉱
針ニッケル鉱 和歌山県広川町  4mm前後針ニッケル鉱
Millerite 大分県三重町  1mm超
 ポイント   群馬県桐生市菱町 1mm前後
                                  16苦土鉱

 和歌山での目的はむしろ菱苦土鉱(マグネサイト)であった。画像のようにシャープさを欠く八面体もどきの形で、画像上では母岩の上に苦灰石(ドロマイト;3p-12)の脈ができ一部が爪状になっていてそれらの上に産生している。他にも産出のタイプがある。ただし菱苦土鉱はMgの炭酸塩というありふれた元素の組み合わせながら産出は苦灰石に比べてかなり少ない。画像では爪状の形が多い苦灰石と違い、塩酸をたらしてもしばらくは変化しなかったので区別ができる。
 それからこの地域では辰砂が苦灰石に伴い濃集しているところが、ちらほらとあった。(たぶん辰砂と思う)
 ここの印象としては、ほとんどとれないとまでは思わないが、運にも見放されると苦灰石だけになる。大した硬度のないドロマイトや菱苦土鉱の脈に比して母岩は非常に堅いのでトリミングする前に脈が次々とはじけ飛んでしまったような気がする。なお、一部に針ニッケル鉱を含む部分が見られた。
 これまで菱のつくグループをいろいろ採集してみて、その代表である方解石は一番菱形がしっかりしている。これには炭酸イオンに対して陽イオンを構成する各金属イオンの半径の違いが出ているのだろうなと思うが、それでよい?
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菱苦土鉱
  和歌山県広川町 菱苦土鉱Magnesite 7mm前後
              17◆モリブデン鉛鉱

 色別で黄色になる鉱物は少ない。その中で水鉛鉛鉱(モリブデン鉛鉱)<Wulfenite>は、産地も産量も限られているのでまず鉱石としての利用はない。鉱石としては輝水鉛鉱が主になる。先の鉱物アルバムには福井県中竜鉱山仙翁谷産を載せたが、ここで改めて取り上げる。
 白っぽい異極鉱上に乗るタイプは色彩のコントラストがよいが、サイズがやや小さいような傾向。それと異極鉱自体もその後の生成物のためくすんで見えるのもある。今一つは母岩の小さな隙間や、くぼみに密集して見られるもので、母岩に似てくすんでいるが、やや大きい。現場で見ているとモリブデン鉛鉱は低温でも生成するのかなと思わせる節がある。
 新たに撮影した画像に入れ替えた。上画像(こちら一眼レフ使用)は薄い結晶で黄色。それと下画像(こちらコンパクトカメラ使用)は厚みのある結晶のため、赤燈色に近くなっている。しかし薄くてもきれいな赤燈色になるものが稀にある。この黄色やオレンジ色の発色の原因は、その色変化から不純物の2クロム酸イオン〜クロム酸イオンの仕業とされるが、存在が確認されたものだろうか?。単純なクロムイオンだけではこういった色にならない。
 結晶サイズ程度は上下画像とも2mm前後。水鉛鉛鉱は長四角形で、その角が取れた形になることもある。更に正方錐形にもなりうるようだ。
 仙翁谷側でも目立つようなズリではないがよくみれば方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱(以上後述)、硫カドミウム鉱、異極鉱(あまり注目されないがいろいろな形態で産出している)孔雀石、そして少ないが青鉛鉱(後述)、白鉛鉱、緑鉛鉱もある。
 標高差の大きいズリだがその下部ではカラミが多く見られ、面白いのがある。
 現場に向かう林道の道は、最近は使われないようで、荒れて崩れやすく車では無理をしないように。お出かけタイミングが悪いと無数の大小の落石や樹木が道をふさぐ(更に運が悪ければ車ごと崖下へ運んでくれるかも)、Uターンもままならず。
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水鉛鉛鉱 モリブデン鉛鉱
福井県大野市中竜鉱山仙翁坑 水鉛鉛鉱
水鉛鉛鉱 モリブデン鉛鉱
                18ザレシ石

 アガード石(1p-70)はその成分元素にCa, REE(REEは希土類元素たち)を持つがそのうちほとんどCaに富むものをザレシ石とするようになった・・・。という理解でいる。
 大和鉱山での採集会に参加したことがあるが、その際、「現場では日本式双晶がある。新産のザレシ石やフィリップスバーグ石はここでは他の砒酸塩鉱物もでる所付近を探す」。そのような説明があったのだろうが、私には、"ザレシ石などは新産鉱物。まあ無理だろうが、とりあえず今までで言うところのアガード石をめざせばよい" と解釈して、当日参加された発見者の作業エリアで採集をしたりしていた。家に持って帰った石の少なさが難儀を物語る。
 その後ある方を介して資料を手に入れることができ、それをチェックすると、採集した狭い範囲は大半がザレシ石成分とのこと。なので分析環境にはない私の標本はそのままザレシ石としておく(アガード石の可能性も少しある)。
 縁あってその後友人とも出かけたが、もともと少なかった石は気の毒なくらい何もない。それでも少し加わった知識と先回の経験のおかげか今回は珪孔雀石上にできたものを得ることができた。
 ザレシ石の色はここではおもに緑系統だ。しかし、同じ場所なのに布賀鉱山のように一部に青系統もある。これがカメラや光源の影響なのか構成成分の差なのか知らない。また、最近からの鉱物の分類は細かくなり分析頼みが増え素人では決めるのが難しい。自信あるわけではない。
 一緒に出向いた石友が、当地の石はなぜかかなり放射能が強いよと報告してくれた。この付近閃ウラン系の鉱物が分解しているのだろうか。REEのためか、ちょと気になる。
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ザレシ石
ザレシ石 両方とも山口県美祢市 
                19◆磁硫鉄鉱いいじゃないか

 向谷鉱山は茅野市と高遠町の境界付近にある小さな鉱山。小規模な金鉱山らしいが金はいずこ?。ここは最近、都茂鉱(後述)の産出で話題になったが、今は少なくなった。テルルービスマス系は都茂鉱をはじめ種類が多く、そのどれも似たような外観を持つので共存しているとネーミングは難しいし、それ以前の問題として普通に見られる硫砒鉄鉱のチップと紛らわしい。
 ところでかわいそうなことに都茂鉱グループの入っていないような石ころは見放されやすい。そんな石で小さな水晶ガマや他の空隙にやや黒ずんだ金属のような「何だろう鉱」があった。強力な磁石にひきつけられることが分かり長野県産磁硫鉄鉱?としていたが、その後もっと形がしっかりしたものを見出せたのがこれ。画像はブロンズ色とまではいわないが短冊状集合体で光沢もあり、まともな結晶を見ることが少ないこの鉱物にしては大きさもあるので存在感がある。向谷鉱山では磁硫鉄鉱でも形のはっきりしないものが多く見過ごされていそうだ。長期保存に難ありらしいが頑張りましょう。
 結局見出したものは都茂鉱、他のテルルービスマス系鉱物、小さい硫砒鉄鉱の長柱状結晶、さらに少ないがゲルスドルフ鉱や緑色の毒鉄鉱(後述)やスコロド石自然蒼鉛(後述)、赤褐色針状の金紅石(ルチル・・・後述)もあった。
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磁硫鉄鉱
磁硫鉄鉱 長野県茅野市 左上1.5cm
                 20◆蛍石 4箇所
 蛍石はカラーバリエーションがあって好まれる。ただ、ピンクと黄色の日本産は見たことがないがどこかにあるのだろうか。また最近まで蛍石はその気になれば採れるだろうとしていたがもう、いろいろな理由でどこも採集が難しくなってきている。
 福島県舘岩村の蛍鉱山は通称なのだろうが、まさに蛍石の鉱山なので分かりやすい。現場の坑口付近に残されたズリに時折蛍石を含む水晶が見られるが、これが往々にしてハリネズミ状態だ。現場の石を手にとり上げるだけで、針またはそれより細い毛状の水晶が手袋を突きぬける(上画像)。余談だが、あらかじめ持参したルーペつきのとげ抜きで拡大してもわからないほどの、1mm以下の長さの透明なものが2箇所に。帰ったあとまで所在不明の水晶のなんともいえない痛みに苦しんだが、こんなことがあるとは。蛍石は、白系統が多く緑がそれに続き紫はほんの少しだけ。上画像には緑と白色が見られるが、右下のような八面体や六面体はごく少なく、多くは集形で晶洞に入っている。
 東濃地方の現中津川市は花崗岩ペグマタイト鉱物産地として有名だった。晶洞には何度も美しい色のきれいな蛍石を見たが著しいヘキ開のため、どんなに注意を払ってもおおかた破損してしまう。数あるチャンスでも晶洞ごと取り出せたのはわずかである(中画像)。
 下の画像は蛍石のわが国最大とされた平岩鉱山産。ここの蛍石は白か緑が玉髄質の母岩に埋まって産する他形が殆どで、とりだしがたい。稀には小さな紫色結晶もあってこれが愛らしいが、紫のほとんどは母岩に弱い縞状かスポット。成因に違いがあるのだろう。
下画像をマウスポイントすれば、同じ傾向の笹洞鉱山の蛍石だ。施設跡があるのに反してズリは少ない。穴は上にいくらでもある。そういえば昔はいなかったが今は両箇所とも吸血ヒルが多くなっているらしい。
 紫外線(長波、短波とも)によって蛍光がみられるがそれが蛍石の所以でもある。しかし同種の鉱物でもその強さや色はさまざまだ。ブラックライト(長波長タイプ)よりはエネルギーの強いミネラライト(短波長タイプ)を使ってためしてみた。傾向としては透明度の高い結晶ほどあまり光らない。つまり出来損ないとか不均一な結晶のほうがよく光るようだ。この点立派な結晶ではエネルギーが、より透過していき吸収が少ないのだろうか(内部から出すエネルギーが少ない)。ただし、
ただの直感です。
 蛍鉱山は弱い青白色、中津川市の採石場のは青白色他もあるが光らないものもある。平岩鉱山、笹洞鉱山はラベンダー色だった。ちなみに中津川市での別の場所だが、蛍石でない部分も含めるとラベンダー、緑、赤の三色というゴージャスなものがあった。この色の強さは一時話題になっていた和歌山の大塔鉱山の蛍石に勝るとも劣らないものだ。大塔鉱山の蛍石では結晶度が不十分なものは強烈に蛍光する。太陽光でのわずかな紫外線でもわずかに蛍光するのもあった。
 蛍石の用途は光学レンズ(最近は合成ができるようだ)、それに融点の降下剤として金属の精錬、取り扱いが大変なフッ化水素酸の製造ほかであろう。
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蛍石
Fluorite  福島県舘岩村蛍鉱山 画幅23cm
蛍石
岐阜県中津川市各所 左下ので11mm
蛍石
岐阜県武儀郡上之保 中央3mm
 マウスポイント画像下呂市金山町 15mm前後
             21◆花崗岩ペグマタイト 

 大きな花崗岩ペグマタイト産地の一つの岐阜県東濃地方の恵那〜中津川の採石場は現在ほとんど休山中だ。後継ぎだけの問題ではない。日本での住環境や工事方法が変化している。例えば、自然石を庭に置かなくなる、通常の石垣は減りコンクリ製石垣が多くなる、土留め工事方法の変化。墓石にはペグマタイトを産するような粒度の石は向いていない。それ以外で勝負となれば安い輸入石材にはかなわないなどなど。最近、東濃地方では花崗岩をはじめとしたペグマタイトの新しい産出の話題を聞かない。花崗岩ペグマタイトも採集したことさえ遠い昔のようだ。残りの大産地もそれぞれの理由でペグマタイトの産出は減少している。
 当時の現場のかたは「雪だから先に帰るよ」と言われたが、その後から見つけた物で大量のガマ粘土のため車中までドロドロ。急な雪に慣れず、すべりまくる自動車の事故と渋滞。という記憶が残る。
 さて、花崗岩中の微量の放射性元素は、マグマが冷えるときにできた水晶中に格子異常があると徐々に色を変える。おなじみの水晶、長石、雲母の結晶は珍しくないと思っていたが、今はどの産地も様変わりして珍しくなってしまった。長石の立派な結晶は少なく人気があるらしいということを最近聞いた。
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花崗岩ペグマタイト
花崗岩ペグマタイト 岐阜県中津川市蛭川 左右35cm
           22亜砒藍鉄鉱(パラシンプレサイト)

 50年以上前の新鉱物だが、亜砒藍鉄鉱(パラシンプレサイト)の新産地はあまり増えていないようだ。大分県の木浦鉱山で得られたが、それに続く岐阜県蛭川の遠ヶ根、一柳地域は最近はほとんど見かけない。両鉱山とも砒鉄鉱や硫砒鉄鉱がリッチなところがあったが、共にやせ細って見る影もないし、最近は地道に転石から探すしかない。(秋は立ち入り禁止)
 スコロド石と化学組成は似るが、パラシンプレサイトのほうが圧倒的に産出が少ない。パラシンのほうの成分中の鉄イオンが、より不安定な形のためだろう。藍鉄鉱よりは変化が緩やかだが、ゆっくりと分解してゆき、光沢は失われ色も暗くなって砒藍鉄鉱などに変わるという。実際に2個を自然放置したら3〜4年後には皮膜状の方はほとんど黒色にまでなっていた。また、しっかりした結晶は気になるほどの経年変化をしていない。でも、いい標本の状態を長く保つために遮光と酸化を防ぐ方を選んでいる。
 上の画像はこれ以上拡大できないし、ガマ奥行きが深いため光が届かず奥の方が判然としないが、よく見ればほぼ無色〜淡い水色〜淡青〜藍青色で、極地方の厚い氷のような青でいろいろなタイプの結晶があり変化に富む標本だ(大小ある)。この画像は、まだ左側へ続く(上画像をポイントする)。今回、メイン画像を入れ替えたので、ポイントした方は前の青く放射状になった結晶を主にしたもののほうである。大きな結晶では、薄板を斜めに切ったような姿があるかどうかがめやすになる。
 下の画像はガマ立ちのイガグリ状であり一見スコロド石に似る。いずれにしてもふたつあわせてみればバラエティに富む結晶だと分かる。(鉱物アルバムにはガマではない産出状態のものも掲載しているが見掛けの変化は大きい。)
 両画像とも採集してその日のうちにすぐ隔離し、最近の写真を撮るときだけ出してまたすぐ隔離しているという待遇なのでまさに[箱入り娘標本]である。なるべくこの状態を保つべきとは思っているが、どうなるやら。
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亜砒藍鉄鉱 パラシンプレサイト
パラシンプレサイトParasymplesite 上と同じ蛭川 8mmガマの右側。画像ポイントで左側に延びる。
亜砒藍鉄鉱 パラシンプレサイト
蛭川 イガグリ状のタイプのもの ガマ径3mm
                        23特徴チカチカ 毒鉄鉱

 小さいものついでに岐阜県の毒鉄鉱を。大きさは0.2mm前後と小さいので、毒鉄鉱は慣れないと見出しにくいが明るい光を取り入れながら見ると、基本的に結晶からの反射光が四角形ばかりである。このことは、ミニ透明黄鉄鉱六面体を見ているのだと想定できる。もし、そこに三角とかの反射面がかなりあれば結晶質のスコロド石(後述)との共存か、水晶かもしれないとかとりあえず思う。
 毒鉄鉱の画像はルーペで見たときと同じ色仕上がりになりにくい.。それは、光線の加減の他に、微小で透明感と光沢があるからだろう。また、毒鉄鉱結晶(晶洞タイプ)をルーペで見た時、見る角度を変えると結晶が見えなくなる。でもサイコロのような形状からして90度横から見ればまた見えてくるはず(母岩が邪魔して困難だが)。山梨県黄金沢鉱山で見つけた毒鉄鉱を石友に見せたらどこか分からないという。そんなことはないはずという自分も再度見つけられないということがあった。これが石の隙間にできたものでは観察しやすい。
 また、この鉱物を探すなら砒酸塩地域で褐鉄鉱と石英のすきまの存在を気にする。小さいのでめだたなかったが、反射が強くキラキラするのが目安になる産地は増えるだろう。より見る機会が多いスコロド石とは共生することもある。毒鉄鉱は最大0.5mmほどになるものを得たことがあるが、そちらは撮影上の問題があるので見合わせた。
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毒鉄鉱
蛭川 奥側も手前も0.2mmほど 下画像は、
別のところで石の隙間に生成したもの。再現難しいが、青系統の色が多い。
毒鉄鉱
                                                     24砒灰鉄石

 砒灰鉄石、アーセニオシデライトどちらをとっても馴染みにくいネーミングだ。砒酸塩鉱物産出地は西日本に多いが、これを産するところは通常知られている3箇所しか知らない。最近は産地荒廃で開拓が難しいが、知る人が増えれば産出報告は増えるのかもしれない。
 特徴は微細な金色リン片状だが、空隙にこれの球状集合になった結晶の集合体。あるいは空隙の壁に張り付くように放射状集合の断面を見せるもの。さらにそれらが皮膜状鉱物で覆われ別の鉱物と見まがうようなものも結構ある。また、やや大きな結晶片の扇状集合をなすものもそうだと聞いている。総じて小さいが結構きれいなものだ。
 砒灰鉄石として通常は放射状集合断面とか、りん片集合体は見かけやすいのでそれがよいかとも思ったが、どなたかのページの場面で見られると思うので、ここでは画像としては別タイプをアップしてみる。結晶がリッチなものと、微細ではないものの二つとしよう。
 それからスコロド石と共産するのを見たことがある程度で、すぐそばにあまり他の鉱物を随伴することはなかった。また、砒灰鉄石の産出そのものは稀だが、一個の石を割ればその何箇所か見かけるようなタイプだったような気がする。また、割り出してすぐの光沢に比して、その後のものはなんとなく光沢が減少したような気がしないでもない。
 大分県の木浦鉱山ではたまに見かけたが、最近はほとんど見かけないと聞いている。奈良の竜神鉱山や三盛鉱山では最近は見なくなった(過去に一回しか見つけてないだけのこと)。
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砒灰鉄石 アーセニオシデライト
Arseniosiderite 大分県宇目町木浦鉱山
下画像結晶は 2mm 
砒灰鉄石 アーセニオシデライト
                         25水亜鉛銅鉱

 岐阜県洞戸鉱山の水亜鉛銅鉱は少ししか見なかったが最近では珍しいし、いちおう水準以上に見えるのでアップしておく(だけど下画像の海外ものとは雲泥の差だ)。
 最近は年のせいか遠征が少なくなってしまったが、再発見をめざしての近場でも気負わなければ悪くはないもの。それはそれでいろいろある。
 水亜鉛銅鉱は銅、亜鉛の炭酸塩で青〜青緑系の美しい鉱物である。皮膜状であったり、上画像のようにピリッとしない薄板状で真珠光沢それが半球状集合体になったもの等見ることができる。実物はもっと美しいものだ。
 産出は少ないが似たものにサーピエリ石(硫酸塩)2p-43がある。薄い酸に対してこちらは泡が出ないし、産出のときの結晶の集合の仕方、共存鉱物、産地などでわかるから気にするほどではない。静岡県河津鉱山産の水亜鉛銅鉱の中には一部で針状結晶が見られた。そちらは新たに
上画像をマウスポイントすると見ることができる。日本ではなかなか見られない針状結晶タイプはメキシコのオハエラ鉱山産の代表的な水亜鉛銅鉱になっている。
 ところで、水亜鉛銅鉱は拡大しなければ本来小さなものだ。下画像は有名な滋賀県の灰山(石灰岩の山)産出のもの。石を減量したがそれでも左右20cmにもなる石だ。石のあちらこちらにしっかりした球状タイプの青い水亜鉛銅鉱がついているのだが、画像サイズの制約があるので縮小している。そのため何となく、さえない。ただ母岩に着床している様子は分るはずだ。
 青を基調とするが、この石の裏側には水色どころかかなり白味が強いところまである。また、ここでは異極鉱の中に水亜鉛銅鉱が取り込まれ青みをおびた異極鉱がガマをなしてもいる。異極鉱のほうは青みを帯びていても透明感が違うのでわかるものだ。
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 下画像のように球状になり、破面がみえない水亜鉛銅鉱は色濃く見える。例えば亜鉛孔雀石(1p-61)とか見分けにくくなる。亜鉛孔雀石のほうがずっと少ないこと。そちらは青緑色と、針状結晶の球状集合体の成り立ちが何とか確認できそうなこと(高倍率のルーペ)で、断面があればなおわかりやすい。で水亜鉛銅鉱の球状の方は色がよりブルー系統で球の表面が幅のある結晶の集まりからなるのが見える(高倍率のルーペ使用)かもしれない。これも球の断面でもあればわかるし、そこが真珠光沢で白く輝く。
 
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水亜鉛銅鉱
岐阜県関市 Aurichalcite ガマ左右12mm
マウスポイントは静岡県下田市蓮台寺の
水亜鉛銅鉱
母岩に着床 滋賀県湖南市石部町 左右8cm
                 26◆自然蒼鉛(ビスマス)

 続けて岐阜県洞戸鉱山の自然蒼鉛(ビスマス)へ。 地元の人は杉原坑付近で銀紙のようなものをよく見たらしい。これが輝水鉛鉱のことだろう。本邦での自然蒼鉛の産出地は稀ではないのに採集チャンスは少ない。どこでも少し出る程度だからだろう。
 この地の自然蒼鉛は銀紙ならぬ輝水鉛鉱と相性がよいのだが、MoはBiよりSがあるとき格段に結びつきが強く硫化物になりやすいと考えたがどうだろう。ここでは同じ硫化物の黄銅鉱・方鉛鉱系の石には自然蒼鉛は稀だ。
 自然蒼鉛は一方向のヘキカイが目立つがその産状をたとえると、小さなトランプを少しずらせて重ねたような形が基本でこれをいろんな方向から見たようなもの(またはモザイク状に組み合わせたようなもの)。色は銀白色だがほのかに赤みを帯びることが多い(金色っぽくもある)。小さいサイズのときは、幾重にも重なる輝水鉛鉱や硫砒鉄鉱と見分けにくいかもしれない。(物理的性質の違いでわかる)
 上の画像はやや新鮮な自然蒼鉛で、石英や金属部の光の反射で見にくい。溶融状態から結晶したように丸っこい。かすかに一部にはヘキカイがみえる。分解物の蒼鉛土(黄色)を伴うものもあった。
 下の画像は一柳鉱山に差し替えた。こちらはやや大きいものであり、銀色にみえるところから伸びる黒ずんで見える部分もそうだ。ただ、ここでの産出の記録はあるが自然蒼鉛はなかなか出てくるものではない。
 なお金属鉱物の多くにみられるが自然蒼鉛も少しずつ色が変化してゆく。写真に撮っておくとその変化がわかる。
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自然蒼鉛 関市洞戸町 1.5mm 
自然蒼鉛
一柳鉱山 銀色部2.5o
自然蒼鉛
                   27◆輝蒼鉛鉱 結構いいのかも

 関連しての輝蒼鉛鉱について。 独特な輝きの美しさを持つ自然蒼鉛や、輝蒼鉛鉱と性質が似ている有名な輝安鉱に比べて色合いや大きさが地味に映る。産地はいくつかあるのだが標本の所持者は少なく私自身、輝蒼鉛鉱を見せていただいたことがない。
 岐阜県遠ヶ根鉱山には過去に輝蒼鉛鉱の産出記録があり、自身も過去に一個だけを採集できた。ガマからでたもので輝蒼鉛鉱の一つの傾向である伸長方向を切る面が見られ伸長方向に条線が見られるもので、大事にしていた標本だが、しばらくして、よかれとおもってやったエステ処理で大失敗し昇天させてしまい遺影の画像だけが残った。
 それからしばらく縁がなかったこの鉱物に最近になって、遠ヶ根鉱山すぐ近くの一柳(自然蒼鉛は産出)で、ほんと地味なズリでの掘り割り作業のすえ見出したのが下画像の鉱物で、石友と相談して輝蒼鉛鉱とした(条線あり)。
 いろいろな画像例を調べてみてもすべて母岩中でのもので、上のようにガマだったり、下の画像のような単晶が散在しているものはあるのかどうかが不安になる。しかし下画像の部分をルーペで見ると輝安鉱に似た錐面を持つところがある。輝蒼鉛鉱の性質のおおくが同じ硫塩の輝安鉱と似ているというが、輝安鉱はここには存在しないはず。なにより自然蒼鉛が存在する。といった産状だ。それにまだ画像化していないが、石英上の小さな針状結晶集合体標本もあり、これもそうだと思う。そちらは他のH.P.でよく似た画像標本を見かけた。
 上の画像のような失敗はもうしたくない。それで、もし疑問があればメールを使ってご指摘お願います。
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輝蒼鉛鉱
輝蒼鉛鉱 中津川市遠ヶ根鉱山2mm幻の品
輝蒼鉛鉱
中津川市 一柳鉱山 2mm以下
              28◆(銅)アダム鉱    大吹やはりあった!

 昔、宮崎県土呂久鉱山に産出したらしいが、今は大吹鉱山のアダム鉱(蛍光鉱物)がどんな面をしているかを見たい。というのも意外な希産鉱物で、おおかたが含銅アダム鉱(蛍光なし)の産地であり、それを含めても数箇所。しかも、その多くは微妙な話とか産出量がごく少ないということになっている。世界でも偏在の傾向のようだ。亜鉛はありふれているし、砒酸塩もそこそこある。しかし、この組み合わせはごく稀ということなのか。
・・・・・ということだったが、今回家の収納スペースの関係で昔の石を小割りしていたら大吹鉱山のアダム石はあった。銅アダム石ではないほうだ。母岩では特に区別がつかないから狙えない。全体はやや丸みを帯びるが上画像では板状結晶の集合体と分かる(拡大)。報告されているものより黄色みが強い(海外産みたいに)ことが気にかかる点ではあるが、とりあえず大吹鉱山に多いミメット鉱には見えない。
 岐阜県に金城鉱山がある。ここは山ヒルの数が半端でなく、血気あふれる人以外は訪れる季節に気をつけなければならない。 最近の様子はズリ表面にカラーストーンはごくわずか、掘り返そうにも急傾斜のズリの土砂が掻き落とされたため見るべき石はあまりない(=少ない)という状況。しかし、金城鉱山は産地の少ないアダム石が採れるとされる鉱山である。
 ここのほとんどのアダム鉱は細かい柱状結晶の集合体が球顆をなしていて、小さなものだと結晶らしき物も失せてつるんとした緑の玉に見えるが、幾多の小さな反射面を持知キラキラしているので小さな結晶の集まりと分かる。
 ここで友人と怪しくうごめいていたら通常のに加え、追加標本にしようかという石が出てきた(
画像にマウスポイントする)。こういったものはあまり見ない。今回のは鉱物アルバムのものより更に色が薄く、画像では見にくく感じるが黄白色で板状に近い(拡大した他の視野には錐面らしきものもみえる)。それが円座に集合しているものだ。これもアダム鉱と言ってよいと思う。
 アダム鉱は銅の含有度による色変化はともかく、斜方だけでなく単斜もあるという。いくら多形をとる鉱物だといっても2枚の画像を比較すると様子がまるで違う。
 それでも他の標本で
は板状集合体ぽい銅アダム石もあるにはある。

 金城鉱山の一部では、硫砒鉄鉱のやや大きな結晶、灰鉄輝石の結晶(菊寿石)、緑系水晶
などで知られている。 そうそう、ここは柿野鉱山と混同されているようだ。
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アダム石
宮崎県西臼杵郡日之影町 大吹鉱山
銅アダム石 アダム石
岐阜県山県市金城鉱山 (以前の一枚) マウスポイント(今回の黄色板状に見えるところ、稀)

                                    29◆紫水晶 夢のような日

 福島県宝川の紫水晶は、忘れることのできない体験だった。ということもあって、ここではアルバムとは趣を変えておもに採集記ということにする。
 だいぶ以前になるが、紫水晶ほしいとの私の要望に石友は「期待しても採れないかも」「それはあたりまえ、他所も目指すから」という事にして、採れないならばせめてカメラで撮ろうと、珍しくカメラを持参して行った。真夏の朝に集合した場所の川に降りて3人で産地を探しにゆく。・・・・・やっとの産地と思しきところは、第一印象「やっぱりお土産程度だ」。
 先に石にとりついた友人達は、群晶で採りたいはずなのにいつの間にかそれが単晶になるという始末の石質。もう、あわててもしょうがないと悟り、凹んだ所を無理やりに半日かけて取り出せればOKと判断。まるで青の洞門の物語と一緒の途方もない話。30分もすれば疲れて弱音「やっぱり無理かもしれない」・・・・・他にやることもなく、先の見えない作業をしていたらタガネの音がドンドーンと変わってきて、そのうちたがねがスコンと突き抜けた。穴の奥は真っ暗でわからない。長い草を入れて空洞ありと確認すると、石友も集まってきた。その一人が大きなビニール袋に水を入れて注いだが一杯では利かない。顔を見合わせ、山中に歓声が上がった。友人も加わって慎重に、狂ったように立ち向かう。・・・・・・黄門様の「もういいでしょう」という声にとりあえず終了。3人で分けて「もういいか」として別の場所へ向かった。上画像とそれを
マウスポイントしたものはその中の良品。
 ちなみに最近になって石友S氏に聞くと「もう、冴えないよ」とのこと。
 質は海外の紫水晶にははるかに及ばないが、紫水晶は国内でも産地ごとに表情を変えるのが良い。このときはメノウの内側に続成するタイプでガマの上部と下部では様子が違い下部では泥、粘土鉱物、緑色の?が表面を汚していたのと、ガマの内部がぬれているものは質が良かった。
 ところで、水晶の発色の原因について荒っぽく言えば、岩石に含まれる微量の放射能の長い間の影響により、水晶中の不純物の鉄イオンの状態が変わり吸収する光のバンドが変わるため結局、見かけの光の色が変わってしまうという。
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紫水晶
紫水晶 福島県麻耶郡宝川 長径20.5p
紫水晶
現場でガマの一部の写真より画像化。 水で濡れて色が強調されている 
         30◆トムソン沸石  31灰十字沸石

 
沸石の仲間はたいていモノトーンだがその結晶は愛らしい。おもに安山岩や玄武岩の小さな晶洞に鎮座していたり、その晶洞を埋めつくしていたりする。通常でもルーペを必要とするサイズなので、先端など細かい特徴の観察がしにくく、100倍ほどの顕微鏡がほしいもの。ルーペ頼みではちょっと。
 トムソン沸石がみられた新潟県小杉の砕石場は、規模は縮小、別の石が運び込まれていて新しい石が出てない状況のようだ。
 トムソン沸石は多くが半球状〜球状で半透明〜不透明で長板状結晶の集合体とされるが、見ていたらうんよく長板結晶を見出すことができたので、これを配置して(中央の少し左上)画像化した。 その脇には長板結晶の集合体になっていることが丸見えの球状の結晶があり、これを基準に以前のものをいろいろルーペで眺め回すと、トムソン沸石の球状部分の表面には長板集合のなごりのシワが残っていることがわかる。
 ただし、ルーペで見たときのシワの刻みはごく浅いブロック状のことが多い(針状ではない)。それに、山口県の川尻海岸など合わせて観察すると半径が小さいものには表面がつるんとしている傾向もあり、この沸石のいくつもの顔つきに悩まされる。大きい結晶の断面を見ると同心円構造が見えるものがあり、木の年輪の場合と同じように成長環境の変化を示すことを伺わせた。
 
2か所に共通しているのはトムソン沸石や灰十字沸石だった。その灰十字沸石は双晶をなしていることが通常たそうだ。ということで一見単晶のように見える左上の結晶も双晶である。晶洞内にはこれらが集まって半球状になり、その表面がちかちかして美しい。さらに横断面を見せているものは半球結晶の集合状態がわかりやすいので、この画像は盛りだくさんだ(一見単晶にみえるもの;今はわかりづらいので別の角度からの画像が必要だと思う)。なおこの画像では十字架に見える双晶は見られない。
 
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トムソン沸石
トムソン沸石 新潟県柏崎市米山 1p球
灰十字沸石
灰十字沸石 山口県長門市川尻 半球約2o
             32◆鋼玉(コランダム)

 以外または常識。コランダムは国内での産出は珍しくないものでロウ石鉱床、火成岩の成分とか、特に紅柱石のそばに居そうな印象がある。もちろん宝石クラス(ルビー、サファイア)はない。
 昔にタイ国の個人零細鉱山を訪れたが、そのときの原石は使い物にならないカスでも日本なら標本として上級。何でこうも違うものか。
 コランダム産地をということで穴虫を訪れ、そこの小川で川砂をパンニング。母岩は風化した安山岩とされるが、構成鉱物の比率は場所により違うようで、どこでもコランダムが入っているわけではなさそう。チタン鉄鉱とかも紛れ込むが、最後は石英粒、ザクロ石、それにわずかなコランダムとその他の鉱物が残るので持ち帰って選別する(過去には穴虫のザクロ石事業所の選別した残り砂を利用したことがある)。
 圧倒的に多い鉄バンザクロ石は強力な磁石でかなり排除できるが、わずかしか含まれない小さいコランダム探しはイライラして結構大変。ここのは六角柱状の形状もあるが、多くは板状で色だけでいえばサファイアといえるほど美しい。ひとつだけジルコンがあった。
 画像には不思議なものが写っている。薄緑色の六角板状だ。万華鏡の部品かとも思ったが上流には人家もなくいまだに所属不明だ。
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コランダム
鋼玉 奈良県香芝市穴虫 竹田川 2mm以下
             33◆自然銀     ミニミニナゲットの変身

 10年以上前?栃木県の西沢鉱山で自然銀を得た(上画像)。昔の大身谷鉱山以来の感激だった。
 当日は雲行きが怪しい。友人がさっさと紅銀鉱(淡紅銀鉱<後述>か)を採取。そんなものかと思ったが後が続かず、場所を移動して石を堀りだし良さそうなのを纏めておき、それを割ったら友人が絶句。まばゆいばかりの自然銀の塊だった。西沢鉱山で自然銀を得るとは思っていなかったし、箔状やヒゲ状でなくまばゆい塊だったのでこれにはびっくり。しかし、それからあとが続かない。不安定な天候どうりすぐに雷と雨が攻め立ててきたので車に避難するも埒があかずやむなく現場を後にした。あとで知ったが、この日はあの北関東での竜巻襲来の日だったのだ。
 自然銀はイオン化傾向が小さいにもかかわらず、大気中のイオウと化合しやすく黒ずんでくる。現場に硫化物は多いのになんと不思議な環境だと思ったものだ。
 
ほとんど使用されないときの銀製品は黒ずんでくることがある。これが空気中の硫化物イオンの長期間での影響とされる。大気汚染の影響ということだ。
 
家にある記念銀貨や銀細工は手垢ではなくともだいぶ黒ずんでいる。結局保存の判断は密封とした。これでは必要なとき見にくいもの。
 さて10年ほどたって西沢の自然銀塊をみたら、なんとエレクトラムかと見まがうほど金色になっていて自分の目を疑った。調べたらそういう可能性があるとする記事があった。
 こういうことはたまにあるようで、黒ずむ前の途中経過なのだろう。仕方ないがなおさら綺麗になった気がする。とりあえずそのままにする。銀の食器の復元方法は知っているが、自然銀だけ掬い取ることができない。密封し暗所での保存なのに、それでもかという思いが残る。
  ついでに通常見るタイプということでちょっとマイナーだが大笹鉱山の自然銀も画像化してみた。ここは少し分かりにくい。一度行けたのに二度目は道を間違えてあきらめたところだった。これは三度目の出土品である。これの含まれる石は残り少ないから粘るしかない。下画像は樹枝状の銀とはっきりわかる。こちらも改めて見直しあが、15年以上たってから久しぶりに見たが、心持ち新鮮さを失ってる気がするのと、金色化しているのがある(同じ場所)。しかし黒ずんではいない。採集後、自然銀に簡単に被覆し手暗所保存をしているためなのか。はたまた母岩の違いとか。
自然銀 silver
自然銀 栃木県栗山村  2mm超
自然銀 silver
自然銀 岡山県総社市 1mm前後
                                           34◆バナジン鉛鉱 35白鉛鉱

 バナジン鉛鉱産地とされる場所を訪れたが、実物を手に取ることができたのは群馬県沼田市の数坂峠だけだった。そこも話題から一年半以上すぎていたので運が良かったということ。もう今後の自分には無理だろうなという気持ちでここを離れた。(現在は絶産)
 一般的なバナジン鉛鉱は六角短柱状〜板状で色は黄赤〜褐色。良いものは光沢もあり光を反射してチカチカと輝いている。小さいが色や形は一般的な海外の標本と似ているので迷わない。
 ところが、
ここは柱状が伸びたものもある(未撮影)とされるのでちょっと困ったこと。そのうえ発表では、この地ではバナジン酸塩以外に、そのお友達のリン酸塩、砒酸塩まで産するとされている。バラエティに富むということは面白いということなのだろうが、リン酸塩の緑鉛鉱や砒酸塩のミメット鉱も産するとあれば区別は難しい。おまけに砒バナジン鉛鉱もあるらしい。あざやかな黄色の針状結晶群、オレンジの針状結晶など鉱物種不明が多くなってしまう。
  レアメタルになるバナジウムを含む鉱石としてバナジン雲母などとともに利用されているようで個人的にはそれのほうがもったいない。。
 バナジウム単体ないしその化合物や合金としては、化学反応の触媒として重宝されている。それ以上にバナジウム鋼として歪に強い性質を生かし、高層建築や橋の建築の資材としても使われる。

 
 次の画像はぐっと話題性が落ちるだろうが白鉛鉱だ。白鉛鉱は鉛の二次鉱物としてはあまりにもポピュラー。にもかかわらず白鉛鉱の顔つきはいろいろあり、肉眼だけの見極めは慣れが必要だと思う。右の画像は図鑑でよく見るものとはかなり雰囲気が違う。なんとなく鉄イオンが含まれているような色合いだ。
 その白鉛鉱のリッチなものでは重量感があるということになっているが、まさに画像はそうだった。それまでの白鉛鉱は石ころの上に光沢のある小さな結晶がパラパラついているものだったので見直した。
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バナジン鉛鉱 Vanadinite
バナジン鉛鉱 0.5mm程度 
上下画像とも群馬県沼田市の数坂峠  
白鉛鉱
最大3mm程度。ここでは通常タイプの白鉛鉱もあった
               36◆デクロワゾー石   画像追加

  デクロワゾーとは変わった名称だがこれは人の名前である。ここ沼田市でのデクロワゾー石はバナジン鉛鉱と共存すればその土台になっていることが多いので、バナジン鉛鉱より先に晶出していることになる。
 「珍しいから大事にして」といわれたはずの神岡鉱山のデクロワゾー石を、整理のとき捨てたらしくどんな雰囲気だったか比較のしようもないが、ここの赤みの強いデクロワゾー石は何より派手にみえるので魅力がある。しかし結晶集合体でなく、まばらになったものは結晶粒が確認できるのでこの画像を今回追加した(
元画像をマウスポイントする)。
 鉛(亜鉛・銅)のバナジン酸塩でありいろいろな顔つきをしているが、赤味が強いのは不純物のFeかCrかMnかそんなところだろうか。もし、上の画像でチカチカがわかるなら、群馬県のデクロワゾー石は小さな結晶の集合からなることがわかる。Zn多めがデクロワゾー石で、Cu多めがモットラム石になるが本邦産は稀でありしかも皮膜状での産出が普通。
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デクロワゾ―石
デクロワゾー石 群馬県沼田市の数坂峠
画像ポイントも同じ産地
                37◆紅安鉱 よくがよくない

 鹿児島県に足を踏み入れたら桜島が小爆発で挨拶。だけど「おーっ」と見ている人は少ない。そうなのか、と妙に納得します。
 日ノ本、錫山、妙法鉱山あたりは日本で数少ない紅安鉱の産地ということになっていたが、今はそうもいかない。唯一可能性のあるとされる日ノ本へ、一度は訪れるものと石友と二人で小さなズリに挑戦。単調作業のうえ共産鉱物も少ないこともあって、はるばる来たのにもかかわらず3時間も持たず他へ移動してしまった。家にもどって後に紅安鉱の収穫を確認、ラッキーというほかない。実は後にもう一度機会があったが20名以上で取りついた現場で「出たー」の声は一人だけだった。自分はかすりもしない。たどり着いただけで気が済んだ先回と違い、欲がよくないのか。
 化学式を見れば輝安鉱の中途半端な酸化で生じるようだ。希産ということなので、この条件がかなり限定されるのだろう。輝安鉱、ベルチェ鉱どちらの酸化でもよいはずだが、ベルチェ鉱のときは構成元素の鉄は追い出されることになる。
 色には幅があるが、濃赤〜ワインレッド。なにやら似た鉱物はほかにも出る。しかし、ほんとの紅安鉱が出たら、はじめて見たとしても「これだ」とわかるとおもう。迷うようなことがあればたぶん別物だろう。酸化による虹色変化の場合の赤では、メタリックな赤になるし見る方向で少し変化する。メタ輝安鉱が結晶に混じったものでは鉱染状だったり、はたまた赤鉄鉱のように錆びた色がのっかっていたりする。
 これまで下画像でアップしていたのは、日ノ本鉱山ではない紅安鉱だがそれを石友に差し上げたので新しい画像にリニューアルした。やはり小さな石を割っていたらでたものでガマ(6.3mm)の中で育った紅安鉱である。しかし、産地に関してはちょっと問題がありしばらくそっとしておきたい。
 そうはいっても、いずれの産地でも産出の方程式がなく、出そうな石だとおもっても簡単には出ないのが紅安鉱であり、このことは紅安鉱は酸化の受け入れ方がデリケートだということを改めて思い知らされた。
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紅安鉱
鹿児島県吹上町日ノ本鉱山 3段で9mm程度
下は別
紅安鉱
               38◆鉄電気石(T)もトルマリン 

 トルマリンは鉄電気石を含む電気石の総称。トルマリンの焦電性や圧電性から健康への効果をうたう事があるが、そのトルマリンの使われ方を見ると?・・・でプラシーボ効果のようなものだろう。
 宝石質ではないポピュラーな鉄電気石でも美しいものもあるが、充分目立つ肉眼サイズなので驚くような代物は今後は見られなくなってゆくだろう。
 電気石の硬度はやや高いはずだが日本産の多くはもろさを感じる。福島県石川町のように海外産に引けを取らないものもあるが、おおむね海外物では見た目のよいものばかりを見かけるが選別されているためだろうか。
 鉄電気石は三角形に近い六角形が多いようだ。縦に条線の発達するものが多く、ヘキカイはないが鉄電気石は脆い事を承知しておくべき。
 福島県のは母岩がややもろくて採集後の整形は楽だったが、通常の日本産ではたとえ良いものを見かけても石英が丈夫で採取そのものが大変困難。整形の途中でも壊れだすと止まらない。例のベンツマークと例えられる錐面付きなどは容易ではない。
 さまざまなペグマタイト質に産出するのがふつうだが、どこか不満足なのが多い。
長石中に埋没するものはまだしも、多くは硬い石英に埋没することが多く、衝撃のためたいてい母岩中に見出した段階でも、既に鉄電気石はヒビが入っていたり壊れていた。母岩がもろいのならよいがそうではない。表面が雲母化しているのが多いのではないか。ヒビあれば整形の段階で電気石は木炭のようにぽろぽろと崩壊していく。
 画像は三重県の大山田の鉄電気石だ。大きさ、輝き、錐面つきの三拍子そろった国産品は福島石川町だけのようで、今回のはよほどのめぐり合わせだったような気がする。私の前後に行った人たちは汚いものばかりだったというが、その合間である。ただし画像標本は母岩を大きく重いままで持ち帰り、化石のクリーニング技術を利用した。おかげで、錐面の残る状態でいくつか残すことができた(この画像の錐面は二個とも平らに近い)。下画像のはこん棒状となった電気石で面白い形をしている。
 ここにはもうアップしないが、他にも12cmで太いサイズのものと10cmサイズ他を得ている。    
他の鉄電気石(U)(V)は4Pに移動。cs,m
鉄電気石 三重県大山田村 Schorl10cm前後鉄電気石
同上 Schorl 6.4cm
鉄電気石
              39◆金紅石(ルチル)

 Tiはレアメタルのひとつで軽く腐食に強く熱にも強い。いいことずくめのような製品材料だが、取り出す方法に手間取りその利用の歴史は古くはない。また、実際の鉱石としては金紅石(ルチル)よりチタン鉄鉱のほうが多い。金紅石は産出は珍しくないといわれるが、それでも近場にはなく私にとってはなかなか自採チャンスはなかった。ここでの画像のも、ルチル産地としては知られていない所だ。
 上画像では黒色柱状のものと赤褐色針状のものをあげたが、二つのみかけはずいぶん違っている。また、60度で交わる双晶を作りやすいというが、そのような実物を見たのでやっと納得できた(画像にはない)。
 
東北の福島県のように中部の三重県では放射性鉱物産地が多いが、上の画像は、Y-エシキン石(後述)という珍しい放射性鉱物の出た四日市菰野町に産したもので、この場所はごく小規模にTiの化合物が生じている。産地を知ったのは遅く、産出の締め切り日がせまってやっと訪問した。向谷鉱山の金紅石を先に得ていたため、上画像のはこれでもルチルかと思っていて、少ししか採れず、後日これを目的に友人と出向いたときは一個も採れなかった。おかげで60度で交わるとかいう双晶は献品したため今は手元にない(笑)。
 下の画像は都茂鉱(後述)で名を知られるようになった長野県の向谷鉱山の金紅石。小さいものだがよくみればその特徴は出ている。これは現地でも滅多に出ないようだ。採取したのはここが話題になってからのこと。当時、モノトーンの石が多いここにしては何か少し違うなという程度の感覚でとりあげたこの一個の石だけで、これも片割れは友人の元へ。
画像をポイントすると拡大画像になるのでルチル特有の面白い双晶が分る。
 見比べては、柱に平行な強い条線と上の黒い標本でさえ、かすかに赤色の要素を持っていることが似ているといえなくもない。タイプのずいぶん違うこれらが手元にあるおかげで今後ルチルを見てもそうそう捨てることはないだろう。
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金紅石 ルチル
金紅石 三重県四日市市菰野 1cm前後
金紅石 ルチル
Rutile 長野県茅野市 向谷鉱山 1mm前後
                                             40ラムスデル鉱 二酸化マンガンへ(1)

 寝姿山は仰ぎ見ればなるほどという姿だが、世界的には産出の少ないラムスデル鉱の産出で有名である。にもかかわらず最近は国内でも見つかっているようだ。しかし、他では産出が稀とか丸秘とか事情があるのだろう。情報そのものは殆どない。
 成分は二酸化マンガンの系統だが結晶になっているというのがいい。現場一帯は寝姿山の上半分に当たるところ。見当をつけて山林に入ればそこかしこに画像のような淡紫色灰質流紋岩(上画像)が散見しているので、広い範囲に分布しているのではないかと思った。カリウム肥料原料として採掘もされたらしい。もちろんどの流紋岩からもラムスデル鉱が出ることはない。少ないながらも黒い脈(MnO2だろう)の走るものに、よりラムスデル鉱の出る可能性がある。
 斜方晶系、黒(灰色少し)色で条線を持つことのある板状結晶を見るが(上画像)、針状もある。まれにある隙間や晶洞の中では銀灰色で金属光沢をもつものがある。とくにこの金属光沢は寿命が短いと思う(下画像)。いずれにしても時間をかけ風化してさらに黒ずんでゆくようだ。見れば錐面は平坦も欠けるような斜めもある。興味、時間、運しだいのものだろう。
 他には目立った鉱物も出ないので、我々は現場を後にしたがなぜ結晶になるのだろうと思っていた。そういえば同じ伊豆に出る轟石やランシー鉱(後述)も二酸化マンガン系統だ。
 伊豆半島の鉱山跡や海岸をあちこち訪れると火山の影響が色濃く残っていることが良くわかる。温泉の多さにあらわれていることは言うまでもない。そんななかで流紋岩の割れ目に沿っての熱水から結晶が晶出したのだろうか。
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ラムスデル石
Ramsdelliteと母岩 静岡県下田市寝姿山
画幅 1.5cm  下は空隙 結晶3mm前後
ラムスデル鉱
                     41濃紅銀鉱  農耕銀行パソコン


 濃紅銀鉱は前述のミアジル銀鉱とともに出ることがあるが、共に出るときはミアジル銀鉱がSbを先に奪って生成すると見え、少ない。
 濃紅銀鉱はそのSbが同じ族のAsに置き換わった砒酸塩の淡紅銀鉱(後述)との区別が問題だが、通常淡紅銀鉱はレアなので産地次第で気にしない。
 
塊状のことが多く、ヘキ開片や破面の一部で赤い光がきらめく場合はわかりやすいが、そうでないときも多い。そのときでも赤い部分を持つ石のぎらついた破面を頭に入れておいて対処するのが良いとおもう。ヘキ開の目立つ、やわらかそうな銀色集合体だ。できれば明るい日差しの下で見るほうが観察しやすい。この2種はルビーシルバーという表現されている。
 ただ、この濃紅銀鉱の赤い色も日光の下では次第に黒く変化してゆく。昔のカメラのフィルムが銀イオンを使っていたり、高校の化学実験で銀塩の感光変化を体験した人もいるはず。しかも全体が黒っぽくなってくるとミアジル鉱とも区別しにくくなる。
 六角柱状結晶になるとあるが、そんな結晶に出会うことは鉱山操業終了後ではズリからはマレだとおもう。原子の配列が微妙なのか仲間のミアジル鉱より結晶しにくいのだ。それでも時には結晶の光沢面の一部が見えることもあるはず。(たとえば下画像の右下)
 まだ鉱物かけだしの頃に、兵庫県の大身谷鉱山での採集に参加した。偶然に濃紅銀鉱の赤いものが採れてしまい何人もの人が見に集まってきた。「へーこれがいい物なのだ」ということで特別に置いてたものだから、かえって行方不明になってしまった。最近出てきたが、まだ色合いが残っていた。これは、標本が結晶質なのと保存方法にこだわったのが幸いだったのか。。
 上画像は、縁がないだろうと思っていた柱状結晶(上)だと聞いた。黒光りするが赤みがあるかなといった状態である。強い光を当ててみるべきか。ただ、この石の他の部分にはより小さいが赤味の強い結晶質がいくつかある。それとルビーシルバー(下)のもの。ルビーという言葉を使うが赤いということでは共通している。
濃紅銀鉱
濃紅銀鉱 鹿児島県吹上町豊城鉱山 
錐面の幅0.4mm
大分県山香町三井大高鉱山 画幅6mm
濃紅銀鉱
      42◆コニカルコ石と43コーンウォール石は酷似

 ありそうでないのがよく似ているコニカルコ石とコーンウォール石の区別の記事。いつも別々の話ばかりだったりして。それで痺れを切らせて調べてみた。ネットの情報は信じてしまうと時折矛盾が出てくるので、少ないが自分の訪ねた場所の情報も合わせて照合してみた(もちろん、このアマチュアの情報も大したことない)。
 共に砒酸塩鉱物だが、組成の上からの二つの違いはコニカルコ石が、CuとCaを持つのに対してコーンウォール石はCuだけを陽イオンとして持っている。このなかで銅イオンの発色が強いだけに色の差が少ないので困り者なのだ。
 産地ごとの共産鉱物に注意して調べてみたら、コーンウォール石ではアガード石系統が見られるのに対して、コニカルコ石産地ではあまり聞かない(断言はできないと思うけど)。それ以外のオリーブ銅鉱、斜開銅鉱、アーセニオシデライト、スコロド、ミメット・・・。などの砒酸塩はどちらも産出するので決め手にならないのではないのかなということだ。
 ただし、大規模な砒酸塩鉱物の地帯では、その区域内でコニカルコ石もコーンウォール石も産出する例があるようだし、これらが産出していても立ち入り禁止の鉱山の産状はわからない。だから、もともと乱暴な仕分けであることを断っておく。
 一般的にはコニカルコ石は明るい透明感ある緑色(宮崎県のほう)。一方のコーンウォール石はやや暗い緑色(広島県のほう)で透明感も落ちるといわれているが、透明感あるコーンウォール石もある。また、コーンウォール石はもちろんのこと、粉銅鉱といわれるコニカルコ石にも結晶質のものがあったりするともう色合いもなんとなく当てにならなくなってくるものである。
 縮尺が違った状態になったが、実際の画像の粒の大きさも同じようなもの。
 
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コニカルコ石
コニカルコ石 宮崎県高千穂町 土呂久 
コーンウォール石
コーンウォール石 広島県瀬戸田町 林 
              44◆ゼノタイム 放射性鉱物V

 三重県下で珪長石をとっていた美杉、竹原鉱山は距離1kmほどしか離れていない。それで産出鉱物は似ている。ハローを見せるゼノタイムが多く、他にモナズ石。あとジルコンやフェルグソン石他の放射性鉱物は少ないようだ。ハローは、ゼノタイムから連想するよりは明らかで放射線の影響を思わせる。
 美杉鉱山のは放射線によるメタミクト化が進んでいて、本来の色よりなんとなく黒ずんでいるし、もろくて形も悪い。もともと花崗岩ペグマタイトからは完全な結晶はなかなか出てくれない。思うに放射性鉱物は鉱物特有の色というやつが、そんなに当てにならない気がするし、結晶形もはっきりしないものが多いから私的にはいらいらする。
 ゼノタイムは、La系列の希土類の中で最も多いYのリン酸塩。左画像のうち最も右のゼノタイムは二つあって、前面のほうは正方錐が半分もぐりこんでいる。右画像は時に見られる球状ゼノタイムの紹介。ここの鉱物は通常不完全な断面ばかりみるが、内部は表面よりもう少し淡く緑色も持ちあわせている。
 
 放射線測定器(β線、γ線タイプ)で1〜2mmのゼノタイムが少しついている程度の石を測定してみるとバックグラウンドの3〜4倍程度であった。これなら毎日ポケットに入れていても心配なさそう(やりません)。しかし、ここのゼノタイムのリッチなものを測定してみると200μsv/時近くまで跳ね上がった。これは紙箱、ポリ袋に入れても殆ど変らず、菓子の金属缶に入れたら急激に下がった。また、これらは少し離れると殆ど検出しなくなるので人工的に濃集させない限りは缶入り保管で大丈夫だろう。(続きはモナズ石で)
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ゼノタイムゼノタイム
ゼノタイム三重県美杉町 両方2.5mm
                 45◆モナズ石  放射性鉱物W

 モナズ石はCeのリン酸塩でこちら竹原鉱山のものである。画像では黄褐色でいくつか見られるが中央付近のが比較的わかりやすい。同じものが近くの美杉鉱山のではかなり黒ずんで見えるのが不思議だ。
 これは板状に見えるが、ややゆるい錐面を持つのがよくある。また断面の場合は細長い6角形ぽく見えることもある。
 モナズ石は黄褐色〜褐色が多いがもっと色の幅が広い。もろく樹脂光沢だがガラス光沢にもなる(見たことはない)。
放射性鉱物だが、その線量レベルはあまり強くないのが普通。
 放射線の続き;実際の健康被害が出始めるかとされる危険レベルは1sv(シーベルト)/年で、さらに一桁の安全を見込んだ注意レベルが100msv(ミリシーベルト)/年ということなので、この注意レベルのほうを一時間当たりに換算すると11.4μsv(マイクロシーベルト)/時になった。ここで測定した自分の家のバックグラウンドが0.12μsv/時付近だったので、注意喚起レベルに対しても概略90〜100倍の余裕はあるんだなということになる(たぶん)。ただし、ICRPでは、完全に安全なレベルとして1msv/年を定めた。
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モナズ石
Monzite  三重県美杉町 中央5mm
 
                     46◆褐レン石  怖い場所ではないか! 放射性鉱物X

 上のトピックの続きになる。褐レン石(上画像)はCeやYほかのケイ酸塩。
 、放射性のサンプルを使いたいと思ったころがある。そこで福田山を再度訪れることになったがそれも10年以上前のことである。その2度目の訪問では借り物のガイガーカウンターを持参して真っ暗な坑内に行った時のことが忘れられない。同行者と「褐レン石ならばこれで探せるはず」ともくろんでいたが、まったく役に立たないどころか逆効果になってしまった。たいしたことではないだろうと思っていたがここの坑内ではほとんどの場所でビー、ビ、ビビーと鳴り続ける。想像でピッピッピッ・・程度かなと思っていた。どこに褐レン石?どころではなかったのだ。それでも少し坑内に居たが集中できる状態ではなく、しばらくして外に出た。
 ただのカウンターのため線量はわからなかったが、この時の入坑にて、こんなところで作業したのかと我ながら恐ろしくなった。「知らずに何度か入坑した人もいたはずだ、きっとマスクもせずに粉塵を吸って」とか、「ここの鉱山の関係者たちは大丈夫だったんか?」「カウンターをもって行かないほうがよかったかも、知らぬが仏だ」などなど帰りの車ではこんな話ばかり。
 なお最近、放射線測定器で強さを測ったら10倍超程度だった。これは上のトピックのゼノタイムやモナズより値が大きいが、これは結晶が大きいためだろう。それだけでなくザクロ石を含む長石、黒雲母を主とするサンプルでも6〜7倍程度もある。それでも今回のカウントの音から推定してすれば、坑内での線量はずいぶん大きかった。
 その友人と最近「ちょっとだけズリを見て帰るか?」と鉱山に立ち寄るが、現地も木が伸びてわかりにくくなっていた。自然に溶け込んできている。これでいいんだと・・・。
褐廉石
褐廉石 三重県白山町福田山  4.1cm
                                             47Y-エシキン石                   放射性鉱物Y
 

エシキン石グループは傾向の似たような化学式を持つ一群で、希土類のうちでYが優勢な鉱物がY-エシキン石だ。表わしてみれば(Y,Ce.U,Th)(Ti,Nb.Ta,W)(O.(OH)
2なんだとか。この産地のエシキン石はYそしてTiが優勢になっている。REEの影響で弱い放
射能がある。
 
上画像
で黒〜褐黒色その断面は黒でギラっとしている。四日市市のエシキン石でレアアースのYを含む。Yはレーザー器具などに使われていることがある。放射性鉱物であり、周りの母岩にハロを与えているのが多い。ハロががよく分かるものほど自身の結晶の形は崩壊しているのも多い(下画像)。卓状の外形をとるとされるが、整っていてもそれがはっきり見えないのが結構ある。外形がはっきりしたものを見ると板状というよりは断面を取るとわずか台形になって見えるのさえある。それを台座状というのかも?(板状のもある)。少し離れたところには上述のルチルをはじめとした別のチタン鉱物がちらほらある。
 ほとんどは形の崩れたのが多いもの。ちなみに形がくずれた1cm前後の結晶(割れ目では樹脂光沢あり)を測定したら220μsv/時(20倍前後)ほどあった。条件次第では石粉を吸い込みたくないレベルだ。本当に怖いのは内部被爆である。この産地を初期に訪れて収穫に満足するまで叩いた人はマスクをしていたんだろうか。それでも短時間であり大した被曝ではないと思うが。また線量計では距離が離れれば急激に線量は低下するもの。46の福田山坑内のように線量は低くても大量にある場所は本当に怖い(ただし、計数器を持たない人は怖くないでしょうね)。


エシキン石 三重県四日市市菰野町 4mm


ハロを見せるエシキン石
                                                48◆銅重石華 粒だ

 派手さはない上に銅重石華を産するところは少ない。そのうちのひとつが山口県の大和鉱山で、お隣の山上鉱山にも産している。その他もあるのだろうが思い浮かばない。おおかたは黄緑色の皮膜状で母岩をペイントのように覆って見られる。少し違ったものはないかと探したら画像のように緑が強いものがあった。これは厚みがあったり空隙で成長できるときに、より緑色が強くなるようでこうなると結構美しいものになる。
 山上鉱山では
灰重石を覆うように出るのが特産品のようで、初めの頃は銅重石とはそういう産状なのだろうと思っていた。 また、最初は孔雀石と思われていたそうだが、山上鉱山で層状の孔雀石を見たことがあるのでなんとなく納得できる。
 その灰重石はCaとWの酸化物であり、ミネラライトで強い青白色の蛍光を発するが、銅重石華の部分は光らない。
 ところでこの標本の緑色だが、似た傾向があるなと思い浮かべるのは砒酸塩のベイルドン石で、産地が少ないのも似ている。並べてみるとよく似ているがたぶん迷わない。銅重石華は砒酸塩鉱物でないし、一緒の産地で出ることはないからだ。
c
銅重石華
銅重石華 山口県美祢市於福 大和鉱山 
画幅3mm
                49 ◆デビル石 悪魔の石?

 この画像の標本は7年以上前の京都府の船岡鉱山再訪問の時の採集品。別の採集者が「轟石がでた」と見せてくれた日でもあった。
 石は
沢のなかから採集したものでその派手な色から、小さくても目立っていた石だった。あとでいろいろ調べてデビル石<Devilline>の可能性を考えながらも、参考に足りるだけの本邦のデビル石の写真や資料そのものが図鑑にもなかったこと。また,船岡鉱山でのデビル石産出の記録が見つからないので、そのままにしておいた。
 最近、A氏に撮影をしていただき、その画像を見て薄板状結晶の集合が見られたことで、それならデビルということでまあいいだろうと判断した。(
画像をポイントすれば拡大)そんな状況なので今後修正するかもしれない。
 デビル石はCaとCuの硫酸塩で、似た化学式や似た色合いのものがひしめきあっている。その中でデビル石の色は青〜青緑色が基本のようだが、きれいな色だ。この標本はギリシャのラウリオン産のデビル石と、色合いと形それに随伴鉱物もよく似ている。
 下画像は山梨県の妙法鉱山のデビル石になる。ここは黄銅鉱ではなく珍しく輝銅鉱を主にした鉱石だそうだが、金属鉱物はほとんど印象がない。現地では、ズリ石の流出防止のためか主なところに金網がかけられていた。そのためわずかだけになったズリは目立つものといっても、脈石の方解石、濁沸石、貧弱な孔雀石が殆どであとは硫酸塩のブロシャン銅鉱がわずか。今回皮膜状のデビル石があるらしいという情報だけで、別地のついでに立ち寄ったもの。
 画像は、ここで割った石の泥岩中の粗雑な石英の脈〜スポットに美しい青色の粉末が散見していたもので、もしやと超拡大すると小さな薄板状結晶がちらほら見えた。
中央部やや左上に結晶がちらほらあるのだが、右のダウンサイズされた画像では見えるかどうか。
 
妙法鉱山の今は前述のように二次鉱物は殆どが緑系統であり、たぶんデビル石は困難。ブロシャン銅鉱で満足できればいいが、わざわざ行くまでのことはない印象だ。
 学名は悪魔とは関係なく、デビルという人の名前に由来するらしい。国内での産出例は少ないが、兵庫県の樺坂鉱山にも産するらしい。サーピエリ石より青みが強いはずだ。どんなものかは?。分ればそのうちアップしたい。
e-i,d
デビル石
デビル石 京都府園部町船岡鉱山 画幅3.1cm
マウスポイントで拡大画像
デビル石
山梨県南巨摩郡身延町常葉  微細サイズ
                  50◆珪亜鉛鉱燐光  

 
燐光が見られるということで購入した新産鉱物の沼田市数坂峠の珪亜鉛鉱標本は見かけはどうてことない石だが、強い緑色の蛍光性のほかに、ミネラライト(短波長)を取り去ってもぼんやりと燐光を発する。これらの現象はライトから受け取った紫外線エネルギーの放出の仕方が複雑ということだろう。 方解石や蛍石の蛍光が状態によって変化するように、珪亜鉛鉱だから必ず光るわけでもなく、微量の不純物(Mnなど)を含むときだけであり、不純物なしも多すぎも光らないといわれる。蛍光は緑色以外にみえることもある。完全結晶(高純度)よりも欠陥があるような結晶あるいは結晶質の部分がよく光るようだ。
 右の上画像は珪亜鉛鉱とそれに短波紫外線を当ててみたもので、ポイントすると画像が切り替わるようにした(露出時間を長くすると光が重なるので短めにした)。さらに、ポイントしたときの位置関係がわかるように左から弱い光を当てている。赤い色はおそらく方解石だろう。このように結晶が良く分らないところでも強く輝くのは燐灰ウラン鉱を思い出してしまう。
 採集した珪亜鉛鉱では珍しい燐光という現象も見られるが、この場合はライトを切るとポイントした画像のほうでの赤の部分はすぐ消えるが緑の部分は最大30秒ほどしばらく続くのである。この燐光は日本産出鉱物では珪亜鉛鉱で初めて確認できて、ちょっと感動します。
 採集品のなかには、結晶がよくみえるものがあった(下画像)。このような結晶の産出を群馬では見聞きしていない。そこで海外の標本を参考にするとナミビアのツメブ鉱山の珪亜鉛鉱の中には右の画像とよく似た六角短柱状で電気石のようにベンツマークの錐面を持った結晶があるので、これは珪亜鉛鉱の結晶だろう。こちらは方向によってなのか菱面体にも見えることがある。
 結晶系は問題ないが
ほかに結晶の明らかな産地が出てこないのは落ち着かない。有名なフランクリン鉱山のは塊状だし。 透明〜白色〜淡褐色。as,i
 
珪亜鉛鉱
珪亜鉛鉱 画像をポイントすると蛍光画像へ

サイズは1mm以下。画像で見るより透明感がある
                                               51 ◆ヘディフェンだよね

 
ヘディフェンは、新産鉱物ではないんだろうか?いつの頃からおなじみになったのか、国内で他の産地を聞いたことがない。それで友人が購入した標本を見せていただいたが、白くて表面が蝋か陶器様の光沢で結晶の面はシャープではないため何とも言い難いが塊状に近かった。ちょっと白鉛鉱かもなというイメージだ。
 その後高価な標本を見せてもらう機会があったが、六角形ぽくて一見ソロバンの玉に似ているというのだが、そろばん玉の形を知っているだけにますます??。・・よくわからない。
 しばらくしてよくわからないまま、現場挑戦ののちもどって細かく点検したら、友人の持つ購入標本とはちょっと違うが、かなりあやしいのがでてきた。
 まず六角堂の屋根のような形でかなりシャープな結晶である(とくに黄色矢印が大きくて判りやすい)。色は黄白色〜淡灰緑色までいろいろ。六角堂の屋根を二つ張り合わせているので(両錐形)これがソロバンだまのように見える。断面破片を見ればやはり白色に近い。この画像の結晶の稜をルーズにしたものが、数坂峠の一般的なヘディフェンだと思う。
 海外のヘディフェンを探し出して見ると手持ちに似た標本を見出せたし、結晶図があったがそれもクリアしている標本。 それでも、直接目にした数坂峠で初期に産出したというヘディフェンの国産標本より立派なためにためかえって気になる。おそらくヘディフェンで間違いなさそう・・と思うが。
 気になるときはぜひ御指摘ください(メインページのメールアドレス)))o

ヘディフェン(黄矢印他多数))Hedyphane
 群馬県数坂峠 
少量の透明な珪亜鉛鉱と同居している。
                   52◆都茂鉱

 
島根県の都茂鉱山から少し産出していた都茂鉱BiTeだが、H.22年頃熱心なハンターにより、それまで無名だった長野県のとある鉱山の狭い地域でまとまって産出することがわかり、ちょっとだけにぎわった。すでにだいぶ採集困難となっているが、当時の現場ではこの耳慣れない金属鉱物の産状を把握するまでには至らなかったのか、見落し品が散見していた。
 ここで迷うとすればまずは硫砒鉄鉱で、ここのは菱餅型の長い結晶のタイプで愛らしいが、ほとんどがチップになっていて結晶形がわからない。そして都茂鉱のように光を反射する。微妙に厚みがあるが、何日か外でさらせば色がくすんでゆくのでわかる。厄介なことに他の輝くBi-Te系との区別もつきにくい。BiとTeの層状構造がヘキカイ面を作っていて光を強く反射するのだろうが、結合モル比の違うピルセン鉱やヘドレイ鉱(大きな都茂鉱またはホセ鉱に似るという)も産出することがあるので見掛けが似ているだけに区別がつけにくい。ただ都茂鉱は、石英から離れたところで脈状になって産出するものはOKというのでそれをよりどころに探した。
 右画像はそのうちのひとつであり、一見灰色に近い脈にびっしりついている。石を傾ければ他もキラキラとするのですべてが都茂鉱だろう。
画像をポイントすれば拡大画像の主要部はヘドレイ鉱だろうか。こちらなら経験的には自然蒼鉛を伴うことが多いとされる。自然金も。
 しかし、現場で小さく割られて転石になってしまったものでは難しいかもしれない。
 また、式量の大きいピルセン鉱やヘドレイ鉱はここでは都茂鉱より粒が大きいとのこと。それと脈状というよりはスポットらしい。確かにそういうのもあるので下画像でも示す。その中央少し右には、なかなか見られない六角形の結晶が見える。Bi系は名称が違っても似た外観のものが多いのでやっかいだ。それから少し色づいてるのもあるので自然蒼鉛(上述)があるかも。
 銀色の鉱物が多く地味なのだが悩むからこそおもしろい。
e,e
都茂鉱
都茂鉱 長野県茅野市 向谷鉱山 
1mm前後(もっとキラキラしている。反射する鉱物の再現は難しい))
ヘドレイ鉱
ヘドレイ鉱(おそらく) 画幅7mm
              53◆青鉛鉱   晶洞タイプ(2)と隙間タイプ(1)

 
上画像
は兵庫県多田鉱山の青鉛鉱と白鉛鉱(上画像の白いところ)である。鉛、銅の塩基性硫酸塩であり銅が発色の主因だろう。濃青色〜明青色でガラス光沢であり、その光のキラキラが写真撮影をじゃましてくれる。結晶の状態によって色合いは違うようだ。 母岩の薄い隙間に晶出するときは横に寝た放射状結晶でこれは多い。ややおおきな隙間に晶出するときはいろいろな方向に成長し、大小もさまざまのようだ。個々の結晶は長短の柱状〜板柱状に見えるものが多い。皮膜状も多いが比較的結晶しやすいので、いくつも得られればその中に美しい結晶がたまに混じってくる。結晶サイズは1〜2mm程度までがほとんど。藍銅鉱の方が、わずかに紫色を帯びるので区別ができないことはないらしいが、色合いが殆ど似ている産地のもある。こんな場合は酸で溶かしてみて泡の出る出ないで確認?。結晶をダメにするのは間違いないので悩ましいケースはありうる。
 青鉛鉱で知られる産地は
亀山盛鉱山(秋田)、辻が瀬鉱山(兵庫)などが有名らしいが、でなくても鉛主体の鉱山なら比較的見られ小さくても結晶は目立つ。そして逆に青鉛鉱は
鉛を含む鉱床
の存在をうかがわせる。同じ硫酸塩のブロシャン銅鉱と共存する場合、青鉛鉱がgoodならブロシャンもgood。

 
上画像をマウスポイントしたものは同様に晶洞の中から現れた例。青鉛鉱で知られるわけではない所。福岡県宗像鉱山のもの。割合に町の中にある小さな規模の鉱山で大半はやぶの中。ここのは細かくて青鉛鉱として面白みのないものが普通にあるが、画像のような板柱状のものが、ひょいと現れた。この形はあまり見ないが、れっきとした青鉛鉱である。
 下画像はもう忘れ去られそうな万井鉱山産。範囲は狭いし、鉱物の種類も少ないし目玉品もない。訪問者少ないためか、泥の中に紛れてきらりと光る青鉛鉱が残っていたこと。画像にあるこの形が通常の青鉛鉱の形状になる。あと、緑鉛鉱もわずかで金属鉱物は見なかったが、この鉱山の全体像が分からないためだろう。
 鉛を含む鉱床に生成しやすい二次鉱物の青鉛鉱だが、鉱石の隙間や割れ目にはたまにいいものが鎮座していることがある。結晶がルーペサイズでなければ、この青色で多くの人の目を引き付けるはずだ。
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 兵庫県猪名川町 多田鉱山 Linarite
マウスポイント福岡県宗像市 宗像鉱山 Linarite
seienkou 青鉛鉱
 岐阜県益田郡間瀬村2mm程度
青鉛鉱 1 
                                                     54◆宗像石   ミニ青針銅鉱のよう

 
上述の青鉛鉱と同じ宗像市の河東鉱山の宗像石<Munakataite>である。世界新産鉱物で亜セレン酸塩になるという。その後には秋田県:亀山盛鉱山など数箇所で産出が確認されたそうだが、それらをまず見ることはない。
 明青色〜帯青白色と表現されている繊維状結晶の集合体で青っぽい球状にもなる。サイズはおよそ40μm(0.04mm)以下ということだが、画像上のサイズからすると80μmほどのもある。それでも10倍程度のルーペでは繊維状を確認できない。
 宗像石はいろいろな鉱物と共存できるので厄介だが、そのなかで(炭酸)青針銅鉱が出ないとすれば、ここで普通に産出するは青鉛鉱との区別が問題になる。それも青鉛鉱かどうかはっきりしないような小さいものが、そっくりの明るい青に見えることがよくあり似ているのだ。それでも青鉛鉱は小球状に見えても結晶からできている時は球に見えても積み木でできたような球になるのでなんとかわかる。それと表面の光沢は青鉛鉱のほうが良い。
 宗像石と化学式の似たカレドニア石(後述)という、ややレアな鉱物は青鉛鉱とも共存するし明青色ないし水色にも見える。文献や資料では宗像石もガラス光沢〜絹糸光沢と微妙だし、海外標本では宗像石も水色っぽいのもあるようだ。こういうことだとカレドニア石も紛れてあるのかと気になってくる。さらに河津鉱山で出たという亜セレン酸塩のカルコメン石ではないか?もあるが、分かる人が周りにいないのでこれは保留するしかない。
 過去に九州での採集会が催されたが、宗像石は現場で確定できずとの記述を見た(あくまでも記述)。たぶん超ミニの青鉛鉱との区別の難しさだろうと思う。「分析するものがある」とも記述があった。
 上画像では直径が大きそうなものを拡大してみた。がこのような美しい青色玉ほど表面での構造は観察しにくい。別にあったものでルーペでもぼんやりとした淡青色かと思う標本を拡大したのが下画像だが、これは無理やり拡大で画像はボケている。炭酸青針銅鉱を少しぼやけさせたようなウニの棘のような様子が見える。もっと鮮明ならよいが、今は限度。これも宗像石。
 次に針状の画像だ中画像。当地もののこのタイプの標本を、あとでわかった海外産ものではこれが見られる。その画像をよく見ればやはり青鉛鉱結晶(すぐ上にある1P-53)とちょっと違うなというのが分る。なお繊維状や針状のほうが一本一本が球状タイプのほうの繊維(針)より長くて太い結晶だ。
 ここに出したタイプの宗像石は、良いル−ぺであれば青鉛鉱と区別はできる。しかし、改めて見直しても、最も多いとみられる繊維状結晶では小さいのがネックで青鉛鉱との区別はやはり難しい。見分けにくい繊維状の宗像石をアップしていないが、このようにいろいろな見かけを持つ宗像石だが、近年の新鉱物の中では相当きれいな結晶であるという印象を持つ。
 ちなみに河東鉱山の中でも元々稀だったこともあって、最近では殆ど産出を絶っているということ。どこもここもそういう話ばかりだ。最近は。
am,am
 
宗像石
宗像市河東鉱山 宗像石 球状0.5mm以下

同上  珍しい針〜長板状結晶0.5mm以下

同上 Munakataite 針球状結晶0.5mm以下
                         55スコロド石

 
分布域の少ない砒酸塩鉱物から生じる二次鉱物としてスコロド石は生じやすいほうだろう。有名なのは図鑑などで有名な木浦鉱山主要部からのスコロド石だろうが、今時はやはり少ないし他所と同じレベルのものが多い。小さいのが災いして実は小さな水晶だったというケースが良くある。産出はやや西日本に多いような気がする。
 木浦鉱山の離れ屋敷になる観音滝(上画像)。ここはアプローチに難儀するだけに秘境とされたが、それも今ではまったくその面影はない。ここではスコロド石の産出は聞かなかった。灰緑色ガラス光沢、いきなりにしては立派なものだった。 
 岐阜県の遠ヶ根鉱山も砒素を含む硫砒鉄鉱や砒鉄鉱の酸化帯ということで次の一柳鉱山とも共通するが、こちらのスコロド石は石の隙間にキラキラと暗いガラス光沢で見られる(母岩の色の影響かも)。少し大きいものが石英の隙間で灰緑色(だいぶ濁る)となっていたり、稀には淡青色ガラス光沢(下画像)という風。また、柱面が発達したものもあり、さらに結晶しないで皮殻状〜モコモコにもなる。というようにかなり形状や色に幅がある。
 その一柳鉱山のスコロド石も挙げておく(下画像をポイントする)。同じような元素構成で、よりレアなパラシンプレサイト(亜砒藍鉄鉱)は不安定なFeUが入り、スコロド石のほうはFeVなのでこちらが安定している。一柳鉱山の規模は小さく産出数自体も少ないが、木浦のようにこの両方を同時に見ることのある鉱山だった。結晶は八面体を構成する三角形が集まったようなのがチカチカとする状態。

 スコロド石をたたくとニンニク臭がするが、やっと見つけた石の結晶をわざわざたたいて試す人はいないだろう(砒酸塩の二次鉱物はすべて小さいので紛らわしいけど)。
 ここでの画像はマイナーな場所なので珍しいのだろうけど、鉄を含む砒酸塩地帯では比較的生じやすいものだから量は少なくてもいろいろな場所に見られるはずだ。
i,k
スコロド石
大分県佐伯市木浦観音滝 1〜1.5mm粒

Scorodite 岐阜県中津川市蛭川
結晶の集合体部 2〜3mm
 ポイント下画像 1mm粒以下 
                                       重っ!56方鉛鉱と57黄銅鉱(T)


 
新潟県白板鉱山での方鉛鉱(PbS)や黄銅鉱(CuFeS2)ほか金属鉱物を目指したが、そこは想像以上に狭い所の多い坑内の奥深くで、久しぶりのスリリングなところだったという印象。ここを冒険したという初期のころの話とびっくりサイズの閃亜鉛鉱を見せられたが、坑内が危なそうでしばらく行く気はなかった。
 
それで遅ればせながらの時期に訪問。その現場はみたところもう取りこぼしもなく手も届きにくい所のみ鉱石が残る。時間をかければ何とかなるという無理やり採集だったが、それでもおおかたの金属鉱山が閉山したいまどき、今後は露頭から金属鉱物を採るというチャンスはないのでは、と案内・同行者に感謝している。
 白板鉱山のは結晶がはっきりしていて大きさもある。一般に結晶が大きくはっきりしていれば種名決定に問題ないが、実際はそうでないときがかなり多いものだ。
 ここでの上画像は白板鉱山の有名な方鉛鉱(鉛の重要な鉱石)だが、ところどころに黄銅鉱(銅の主要な鉱石)の結晶もあり重量感がある。ここの方鉛鉱の表面はかなり酸化されていて硫酸鉛鉱他で覆われていて、古いバッテリーの極板のようだ。鉛灰色で三方向にへき開があり、鉱石を割れば同じような方鉛鉱の子供が生まれてくる。また両方とも明らかな結晶なので判別の苦労もない。また、ここにはアップしないがミネラライトで光る白色粉状のブライアンヤング石(2p-25)のついた石もあった。石は地表のズリでは得られない形ばかりなのが嬉しい。
 下画像は黄銅鉱で方鉛鉱を伴うもの。黄銅鉱も酸化されて表面はやや色がくすんでいるが結晶型の鉱山よりはっきりしていると思う。 

 無理な姿勢で無駄な力を使っての採集で、じっくり細かく坑内を見学する余裕はなく泥だらけで、金属鉱物の重さに閉口しながら疲れはてて地上に生還した。地底から泥だらけで地表に戻ったとき、ようやくカメラを持つべきだったと痛感する。その気持ちの余裕がなかったことが悔やまれるが、「カメラ持ってまた行くか」といわれても、きつい。「・・ノー」だ。g,c-i
方鉛鉱
方鉛鉱 新潟県入広瀬村白板鉱山max2.5cm
黄銅鉱
黄銅鉱  中央部よりの所    画幅6cm
 
                                                   58 閃亜鉛鉱(T)べっ甲タイプ

 
閃亜鉛鉱<Spharelite>は亜鉛の硫化物で同じ硫化物の方鉛鉱とよく共存している。新潟県の白板鉱山の閃亜鉛鉱は透明感ある結晶が有名だったという逸話があるが、ヨーロッパの一部では本当に宝石にカットされた美しいものが出ている(硬度が4なので宝石といいいながら貴石の類になるはず)。
 四面体を基調とする結晶をしているというので三角形の面が出てくるはずだろうが、実際はこの集合体なのか複雑で特徴をとらえがたい形をしている。結晶を成さず劈開のみ発達するとかルーペサイズのチップとかになれば、図鑑などで良結晶しか見慣れてない場合は迷うこと請け合いだ。
 色は黄色が基本で、鉄の割合が増してくるにつれ褐色から黒色になる。そして実際は黒色が多いもの。実際は判定に迷うこともあるが補助としては、紫外線ライトで、黄色〜赤系統に光るのが多いので、鉱物が小さくて情報を読み取りにくいときは参考になるかも。
 含まれる不純物によっても
多彩な色を見せるようで、以前には鹿児島県の豊城鉱山で赤色の閃亜鉛鉱のチップが、同じく一方向に明瞭なヘキカイのある濃紅銀鉱のように見えて困ったものだ。 また、ここにアップしている白板鉱山の閃亜鉛鉱は透明感はないが、亜金属光沢というより金剛光沢とか樹脂光沢の類のものが割合多い。上画像は結晶の形が良いもので脇に黄銅鉱と方鉛鉱の結晶を従えている。坑内で
手の届かない、見えにくい奥のほうにあって持ち合わせていた長いタガネを使って時間をかけて取り出した。母岩に押されたのか少しへこんでいる(双晶かも)。
 
上画像もマウスポイントした画像
も同じ白板鉱山のもので採集時は写真よりさらに透明感があったような気がする(石が濡れていたからかも)。
 下の画像は細倉鉱山産のもので、方鉛鉱と一部ベッコウ亜鉛のコンビである。
 
ここは閉山前に訪問することができた数少ない鉱山であった。日本の鉱山は戦後資源が枯渇したり、海外からの輸入鉱石の価格に体力を奪われて次々と閉山していった。結局所得水準が高くなれば、低い国の資源販売力に負けてしまうのは成り行きになってしまう。
 
この鉱山は最後の頃は鉱物資源のいろいろな利用法を考えて販売しようとしていたが閉山後はマインパークとか、鉛資源回収とかで姿を変えて頑張っているみたいだ 
-i,h-i
閃亜鉛鉱
閃亜鉛鉱2.4cmポイント画像は9mm
新潟県南魚沼郡入広瀬村
閃亜鉛鉱7.5 べっ甲亜鉛
宮城県栗原市鶯沢7.5cm
                                                      59大隅石おおきくなあれ

 
湯の町大分県別府市の大隅石だ。大隅石は火山岩中の酸性タイプ、つまり流紋岩や安山岩の一部にできる。ところが、産地はなぜか鹿児島の大隅半島周辺のみ・・・。だったはずが、最近は他でも報告されているがやはり少ない。
 古い資料の報告を元に、大分県内での近くを通過する機会をとらえて友人と行ってみた。現場はかなり状況が変わっていて草木に埋もれかけた流紋岩を見つけたが目的のものはさっぱり。どこかで割った石を裏返すと新鮮な面に黒い斑点として観察された。どうも風化に弱いようだ。また、産出範囲は偏在するようで周辺を手分けして探したのがよかった。
 良品なら大隅半島周辺のものに負けていない。ガマの中にはわずかに青みを帯びきれいなものもある。当地は桜島と同じように周辺に温泉もあるので溶岩があったようなところなのだろう。
 他にはオレンジ〜黄褐色の形のしっかりした金雲母(少し離れた場所)があり、むしろこれのほうが目を惹いた。ちょうど山口県の六連島産のにそっくりだとおもう。他は鱗珪石だがこれは微粒すぎる。
 どれもこれももう少し大きければという贅沢な気持ちでここを後にした。
 ところでそれより以前にすでに大隅石を得ていた(アルバムにある)。そこは岐阜県の飛騨の川の上流になるが、産出報告後遅くないタイミングで行けたので、かなり山奥の露頭があるわけでもない状態でも、得ることができた(ここは今はどうなっているか)。下画像の鉱物がそれになるがこちらのほうがかなり大きい(6mm)。ところが青みがかっているものはないので、話が相前後するが「いつかは大隅半島かな」と思っていたがもう気力がなくなった。
e,e
大隅石
大隅石 大分県速見郡日出町  1.5mm、
下は岐阜県高山市河合 5〜6mm
大隅石
                                               60藍銅鉱 厚みで違う色あい

 
多彩な二次鉱物を産出することで有名な、新潟県三川鉱山の藍銅鉱である。 石友が初めて行ったときは熊を見たと言っていたし、その後に自分が行ったときは猿の集団が来てうるさいときがあった。最初に道より上のズリにたどり着いたときは、けっこうカラフルでよい印象だったのだが最近行った人によれば「行き着くのに困難になってきた、しかも難しいね」。最近そんな話ばっかりだが、行かなきゃ何も始まらないもの。 
 岩絵の具としても今でも日本画に使われるが孔雀石に比べ藍銅鉱は高価だ。これは産出量と精製しやすさに関係している。藍銅鉱が産出する所はいくらもあるが、量的には少ないので実際にはあまり見かけない
 上の画像は三川鉱山の藍銅鉱の集合。状態にもよるがわずかに紫を帯びている。孔雀石と元素構成は同じだが組成比は違う、生成条件は孔雀石より酸性強く、CO2量は多いところでできるので常温では孔雀石のほうが安定になる。藍銅鉱もゆっくりと孔雀石に変わってゆくが逆はしらない。その色はいわゆる紺青色とされる。
 Pb鉱物が近くになくても青鉛鉱はできる。それとの区別はいうほどにやさしくはない。はっきりしないときは希酸を使うと違いが出る。実際にためせば藍銅鉱のつもりが青鉛鉱だったりするのはけっこう多い。
ポイントの画像はびっしり藍銅鉱の張り付いたその母岩のほう。
 下の画像は愛知県中宇利鉱山の藍銅鉱である。当地での藍銅鉱は皮殻状のものがたまに出るくらいだが、ここでは他の珍しい鉱物の目印になる。そのうちで珍しく結晶が観察できるものがあった。上画像も同じだが、ややずんぐりして色が濃い。撮影で結晶の一面だけを反射できず面がはっきり見えない。実物より見栄えが悪いなあ。
 中宇利鉱山は少しだけ掘ってやめ、そのまま放置された蛇紋岩で山に向かって左右によく知られた坑口がある。他に産地の少ないヒーズルウッド、Co-ペントランド鉱、中宇利石、菱ニッケル鉱がある。ただし、ここの母岩は年月が経過し水分が通りきわめて剥落しやすい面を持ち、大きな岩がかすかな衝撃で音もなく落ちてくることがあり、石好きにとって有名な危険な坑道だと知られている。初めてのころはズリでも表面がかなり青々としていたような気がする。
m,c
藍銅鉱
Azurite 新潟県東蒲原郡三川村 画幅7mmポイント その母岩 11.5cm

 愛知県新城市富岡 
                       61亜鉛孔雀石 ありそうでなさそう

 
新潟県三川鉱山の亜鉛孔雀石(rosasite)は上画像で、下画像は宮崎県萱野鉱山になる。綴りからはローサ石か。でもローザ石としているのが多い。バラはrose(ローズ)だからなのだろうか。
 両方とも、以前に収穫していた石をチェックしていたらあっただけのこと。日本産出の亜鉛孔雀石の資料が少ないので、そのものがよくわかりにくい。。
 孔雀石のCu2+の一部がZn2+で置き換わった形だが、亜鉛イオンの色は基本的に無色なので結局孔雀石の色系統だ。また、亜鉛孔雀石の産出のほうが圧倒的に少ない。
 孔雀石と似て緑っぽいものから青っぽいものまで幅があるがローサ石の基本は青緑色とされる。かたちは球状のことが多くそれが針状結晶の集合体とわかればいいが、球状の多くの鉱物のようにぶどう状や皮殻状にもなるとむずかしそう。よくありそうなものなら孔雀石、珪孔雀石の球状のもの。珪孔雀石なら細かいヒビがあったり酸を使えば分るはずだが、孔雀石の色の薄いものにはよく似ている。 見かけても虫の卵と称されるくらい小さいのが多いようで、観察しにくい。上画像には針状が見えるが、やや大きめのものを選び拡大した画像でルーペではここまでは無理。
 下画像のほうは亜鉛孔雀石のように見えるが、ここの産出記録を確認できていないので違う可能性がある。
 もし高校生の立場なら、高校化学ではCuやZnのイオンの分離検出と確認があったから、目的がこれだけなら設備とNaOHがあればやれそうだ。 
 ただのアイデアだが鉱物を使ってそのような実験をすれば、薬品だけを使うより実践的でいい教材になることだろう。
e,e
亜鉛孔雀石
亜鉛孔雀石新潟県東蒲原郡三川村 
0.3mm前後
亜鉛孔雀石
亜鉛孔雀石 宮崎県高千穂町 
                                   62 菱ニッケル鉱(T) ここのはそう単純でない

 
愛知県中宇利鉱山で菱ニッケル鉱だろうとしているもの。国内では菱ニッケル鉱は比較的レアな鉱物とされる。蛇紋岩は少なくないので少し意外に思う。中宇利鉱山では、他にもあまり知られない鉱物がめじろ押しだ。中にはレアな鉱物も産出するが、ここはいくつかやっかいな問題がある。
 @坑内が危ないこと,で有名な鉱山として知られる。A鉱化作用にムラがあるのか鉱物の組成が安定しないのか、同じ鉱物がいろいろな顔を持ってしまう。肉眼では種名を決めにくいのだ。皮膜状の部分が多く分析値も安定しにくいものがある。B訪れるのは冬か春先が無難だ(マダニ注意)。
 さて、ここの菱ニッケル鉱なるものはCoを含みそのCoの発色が強いため、桃色になっている。画像のように皮膜状が多いが小さくても目立つ。Co〜NIは成分の交代があり、それに伴って幅広く分析してなければ種名の信頼度もない。
 そこで(分析してないのに)これが赤色系統ならもう菱コバルト鉱と言ってよいと思っている(ルーペで菱形が観察されるのもある)。いろいろ探してみるとさらにCoをほとんど含まず菱ニッケル鉱そのものの色を呈しているものさえある。当時の分析発表が通用してしまっているが、いろいろのタイプを分析したとは思わない。
 
 
たとえば画像にしたものは上の標本採集からしばらく経過しての桃色の放射球状だが、桜色は含Co-菱ニッケル鉱として良さそう。では、対照的な明緑色球状は?これこそがニッケル孔雀石だろう。
 面白いところだが、資料は驚くほど少ない。それで、どれもこれも明言できない。とにかく色とりどりなのだが、結晶は小さく形や色が微妙に変化してゆくものがよくある。200倍くらいの実体顕微鏡があるともっとはっきりできそう。いまの中宇利鉱山は悩み尽きぬ鉱山だ。
菱ニッケル鉱
愛知県新城市富岡  上(画幅6.3cm)
                        63メラノテック 不思議な着生

 
少し前のことになるが珍しい鉱物をいろいろ産した群馬県数坂峠。3年ほど前の日本新産鉱物メラノテックである。新鉱物や、日本新産鉱物は細か過ぎるレベルが多く特に関心があるわけではないが、メラノテックについてはすぐにメラノーマ〔黒子(ほくろ)の癌〕が思い浮かんだので覚えていた。PbとFeのケイ酸塩鉱物である。
 ここは現地の事情によりもう採集できないようだが、なにぶん遠い所なので実のところよく分らない。
 あきらめていたはずのメラノテックが見つかり、それを見た限り密集して産しやすくそこが黒いシミとか縞のように見える。微晶ではあるがしっかりした結晶にもなることがあり、それは日差しを受けてキラキラする。これが撮影のときにはネックになってしまった。画像のあちこちに光の点が残ってしまう。それも事実だとして処理をしてないままの画像を使ったが、メラノテックをH.P.にアップしている方はどう処理しているのだろうか。
 結晶が母岩に着生しているさまは面白い。卵を立てて接着剤で平面につけたときのような不安定な状態で母岩に着床しているものが所々に見られる。まさに自然のなせる不思議なわざだ。
 
画像をポイントすると母岩の様子がわかるようにした。蹴飛ばすような石かもしれないが、ルーペでみれば別世界が広がるといったたぐいのものだ。i
メラノテック
メラノテック 群馬県沼田市園原
ポイント;母岩のほうは5×7cm
                                                    64 コンネル石 

 
山口県の志津木鉱山のコンネル石。ここは足場の悪い海岸沿いにわずかな坑口やズリが残る。コンネル石は福井の内外海鉱山、鹿児島の双子島が産地としてはもっと有名のようだ。訪問した志津木鉱山の状態から推定するとこの二箇所も波のしぶきがかかることもありそうな所のような気がする。 
 非常にきれいな青色の銅の含水塩基性硫酸塩で塩素を含み、化学式から推定すれば水にでも溶けそうな気がしてデリケートさを感じる。
 すでに志津木では
アタカマ石の採集を試みたことがあるが、今回「コンネル石もあった」という話を頼りにアタカマ石が目的の石友とともに訪問した。そのアタカマ石自体は冷静に採らないと結晶質の物は簡単には得られない。今回はコンネル石だけに焦点を合わせて探したが生成条件が限られるようだ。やっと青インク状態の石を見た友人は「よくもまあ」という表情だった。
 最近これをルーペでしっかり見直してみると一部の石に微小な玉ころ粒(針状結晶の放射球状らしい)を発見。ならばとカメラで撮りなおしをしたのが右画像だ。
画像をポイントしてみれば撮り直す前のものになるので比較できる。e-i
 
コンネル石
コンネル石 山口県萩市青長谷
ポイント:母岩は左右2.5cm
                                                    65コバルト華 いしの華

 
和歌山県の奥の大勝鉱山のコバルト華である。久しぶりに訪問したもので荒れていた。少しサンプルを持ち帰り、合わせてから選び直すべく、家にあったもの(昔採集のサンプル)を割っていたなかで、欠片を見ていて気になった石を拾い上げルーペで見ると、丸いコバルト華と違うかなと思うのがあり、これをできるだけ拡大して画像化したが、無理がたたって右画像では少しぼけている。
 数多くコバルト華を見た中で、このイガクリのタイプはさらに微晶だが、極めて珍しいものだろう。しかし、ありえないほど特異なものとは思えない。上画像では見づらいが、理想的な平行四辺形の結晶が見える。その、
上の画像をポイントすると結晶だけを見えやすくしたものになる。ただし、それに伴うほかのことが犠牲になってしまうことは容赦願いたい。 
 
 7年ほど前だったか。
下の画像を使った恩師への年賀状で「これは石から生まれた花のようです」。と言葉を添えたのが、「本当に石に咲く花があるんですね」と感心されてしまったことがあるのを思い出した。それは
針球状結晶の断面(花びら状)が出てしまったもので、このタイプはときおり見ることができる。 その、下の画像をポイントするとコバルト華を持つ母岩であり、これが通常見ることの多い赤〜ピンク色の球状の結晶集合体になる。大勝鉱山はこのタイプが多いが他の産地ではピンク色のぶどう状、皮膜状のことが多いようだ。
 ちなみにコバルト華は、特に鉱床の存在を暗示しているといわれるが、それは主に輝コバルト鉱など砒化物の場合だろう。大勝鉱山はコバルト華の生成条件には良かったかもしれないがその割に目に付くのは、少なく小さな輝コバルト鉱と含Coの硫砒鉄鉱のようで、本格的に出鉱したのかは疑問だ。それから今回は付近にヒルがいた。
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コバルト華
Erythriteイガ 和歌山北山村上ポイント:拡大像花びら状タイプ下ポイント: 球状結晶と母岩
コバルト華
                       66 輝コバルト鉱    ほんのり桃

 
山口県の長登鉱山産の輝コバルト鉱とコバルト華の組み合わせだ。一部にCo鉱床が微妙に分布していたことから、昭和の時代から採掘対象になったらしい。10年以上前に訪れては見たものの、広いので全体の様子は分らずじまいだった。
 コバルト鉱石は国内での分布が少なく、産出も多くはない。鉱物種も知るところグローコドート鉱、輝コバルト鉱、ペントランド鉱などの硫化物くらい。
 
手持ちの輝コバルト鉱(上画像)は方解石を伴うのが多く、コバルト華を噴いているものほど溶蝕が激しい。それでも結晶ははっきりとみてとれる。そしてその結晶は六面体他があり丁度、黄鉄鉱結晶と同じような型だ。結晶は薄いピンク色を帯びているが、酸に少し入れると、キラキラしてくる。風化しているとピンク色がはっきりしてくるものだ。これが何となくBi系の鉱物に似ている。
 三重県内に和歌山県の飛地がある。65.にもある大勝鉱山はコバルト華でちょっと話題になったが、Coイオンの由来は?と見渡しても元になる鉱物はわずかしか残っていない。鉱脈の規模が小さいとか、掘り抜いてしまったのだろう。
 
持ち帰った同好者が成分を調べたら、そのほとんどが含Co-硫砒鉄鉱だとのこと。さて右画像はすぐそばで掻きとっていたS氏の恵与品だが、(拡大してみた)これからみて確かに、輝コバルト鉱もあるのだということが分かる。
 ただし、規模は小さそうで大勝鉱山のコバルトの含有率はり低いものだったろう(コバルト華はそれでも良く生じるもの)。近くの堂ヶ谷鉱山の方が規模が大きかったとかの記述を見た。

 鉱物の世界ではCo鉱物といえば桃色をイメージしやすいが、人が使う化合物の形態ではコバルトブルーで代表される青がイメージされやすく、この落差が面白い。
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輝コバルト鉱
輝コバルト鉱 山口県美祢市美東町 1mm超
cobaitite 輝コバルト鉱
和歌山県東牟婁郡北山村 約2mm
                                                      67トパーズ(1)  あのころの

 中津川市苗木地域
のトパーズ(黄玉)。
 苗木のは知られていた産地より、だいぶ外れた所のもので相当以前のものだ
 トパーズは斜方晶系。産出は100m以上離れた2か所のガマからのもので、。ガマからのもので、もう残っていない。長さは5cm以上のもいくつかあった。
 
何年もたって後に請われて案内はしたものの、何の目印もなく記憶も地形も変わり辿れなかった。昔からいろいろ興味があり、たまたまこういうものに当たっただけで、疑問は残るけど出方がわかってよかった。縁があればまたあるだろう。
  一帯はやや風化した花崗岩だったと思うが、さらに変質していて破砕気味の石英、細かい雲母など、石切り場のガマとは明らかに違い、細長い粘土様に突き刺さるようにあったと思う。膨らんだ粘土様部分は縁では頭のとれた結晶が多く中心部ほど完全なのがある。どこも最初からサイズが大きかった。 興味深いのは見えているところが不透明な結晶(スが入っているというらしい)であれば、もう錐面が成長してはいないこと。つまり粘土に埋没していても見えない部分の状態が分るという話だ。
 一方、2〜3回ほど川の中のパンニングもトライしたことがある。多くはヘキカイ面で折れて短柱状になっていたり、表面が少しすりガラス状になっている。それでも屈折率が高いため川の中から水晶と一緒に出てもトパーズのほうがひときわ引き立つものであった。
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 岐阜県中津川市苗木 Topaz 5.8cmトパーズ 黄玉
                                                      68 ブロシャン銅鉱 
 
 上の画像は静岡県の河津鉱山掛橋のブロシャン銅鉱で今回入れ替えた。エメラルドグリーンの針状だが、上画像の上のほうは太さがあり、元画像では錐面の様子もわかるほどだ(ただし、ここでは現画像をサイズダウンしている)。上画像の下のほうのブロシャンがむしろ普通のサイズだ。
 河津のは他の鉱山と違って二次鉱物が表面に見えていないのが結構多く、その分小さな晶洞内に収まっている傾向がある。
もう一つ画像のマウスポイント晶洞内の美しいブロシャン銅鉱を見ることができる。河津でもこのタイプだけでなく卓状のものも少ないがあった。ただ、最近では鉱物の産出そのものがかなり少なくなっている。加えて各所が人家と近いことゆえの問題もある。ブロシャン銅鉱そのものは珍しいものではないがこれはというものはさすがに少ない。そんななか河津鉱山のブロシャン銅鉱はいつのまにかブランド化している。
 下の画像
中宇利鉱山産。ここは気をつけるべきことがある。(上述;菱ニッケル鉱にて)こちらも結構なブロシャン銅鉱を産するが有名ではない。しかし、少しタイプの違う結晶があったので撮影してみた。単斜系のためだろうが、将棋の駒のような錐面も、平板に見えたりもする下の画像にも両方あるが、画像のサイズ制約のため両方は見えないかもしれない。
 
ブロシャン銅鉱は皮膜状も多いが結晶にもなりやすい。大きさはルーペサイズであり、緑〜濃緑色で針状(幅がある)から短いものは卓状の結晶にも変化する。また幅があれば、柱面に平行な条線が観察できることもあるはず。
 
ブロシャン銅鉱と間違いやすいのは、でき映えのいい孔雀石だろう。被膜状はなおのこと孔雀石と間違いやすい。ブロシャンは針〜柱状の一本すべてがすっと透明になっていて結晶は色あせたところのない緑色を呈し、硫酸塩なので希酸に泡を出さずに溶ける。
 普通程度の孔雀石結晶なら多少なりとも一様でなく緑が少し白味を帯びるとか10円玉の錆た色にも近くなったりもする。こちらは希酸には泡を出して溶ける。さらに、はっきりとした半球状や球状になることがある(3p-13)。
 この薬品を使った実験は言うだけなら簡単だが、母岩から結晶をはずさないと母岩の一部が反応してしまうことがあるし、実際には顕微鏡下でやったほうがいいのでさほど簡単な話でない余分な標本があれば可能だが、貴重なものには使えない。
 どなたか;小さなガラス光沢の鉱物撮影では光源反射のためきらめきが強く出て白とびして見苦しい。何とかキラキラを消すことができないものでしょうか。e,e
ブロシャン銅鉱
静岡県下田市蓮台寺Brochanite 
マウスポイントの画像 :画幅10mm
ブロシャン銅鉱
 愛知県新城市富岡 画幅5mm
                                                      69デューク石 フクサイトもお忘れなく

 デューク石<Dukeite>の画像例や情報は海外含めてごく少ない。それはBi.-Cr-(Te微量)の酸化物が主体の結構複雑な化合物だ。これが集合しているところは日本では少なく、共存ししかも化合物を作るような条件はごくごく限られるということだろう。
 それが長野県の金鶏鉱山で見つかったとのこと。金鶏鉱山では、Crの存在それにこの鉱物のメインになるBiの化合物もある。しかしそれぞれの産出する場所はフィールドでも離れているため、どこで一緒になれたのか。おまけに稀産だったフローレンス石より1/1000くらい稀産と聞いたことがある(冗談でしょうけど)。そしてその露頭は今はないというダメ押し。
 だと言われていたのにおかしな鮮黄色のたまちゃんを見つかりそれがデューク石(
上画像)。稀の稀産鉱物ならもっと小さいはずという先入観があった。これはじつに大きい。ただ黄色粒というたぐいのものなら、あとにも記すが注意すべき。
 他の鉱山でほとんど産出を見ないが、ここでよく出るものに
緑色のCr-白雲母(フクサイト)がある。ここでは多産するのでかえりみられないが、小さくとも結構きれいな結晶があり、きっとあの時手にしておけばよかったという日が来ると思う。このフクサイトが鉄の影響で黄色〜黄褐色になるし、鉄系のさびも同じような色になる場合がある。なので黄色というだけでいちいち目を止められないのが現実。・・・・もうない情報づくしのはずだったが、その後には玉ちゃんの小集団がまた顔を出したので合計で2個体得られた。相当ラッキーだったというだけだろう(デューク石は玉ちゃんタイプだけではない)。何の前触れもなくひょいと出てくるのだもの。ここのは酸を使って洗浄しないとよくわからない石が多いが、いずれも洗浄なしの状態で産出した。ということは鉄分のやや少ない環境で生成したというヒントかもしれない。試していないのでデューク石が酸洗浄に対して弱いかどうかはしらない。
 デューク石を拡大してみると実にきれいなものだ
(上画像をマウスポイント)。球状だがその表面から小さな結晶が飛び出して見え、それがキラキラしている。
 さらにひとつ、デューク石のイメージが広がるように半分ほどの大きさしかないが、小集団の画像も下画像においてみた。それと、時には繊維集合状にもなるはずだ。
デューク石
デューク石 ポイントすると拡大直径2mm
長野県茅野市金沢 直径1mm以下
デューク石
                      70 アガード石    アゲートではなく

 アガード石(関連;ザレシ石)は、[YやCeなど希土類元素・Ca]の砒酸塩鉱物で緑〜黄緑の皮膜あるいは針状結晶を見る。皮膜は珪孔雀石に似るが質感が違う。結晶をはじめてみたころは小さな孔雀石との区別ができず困ったが、アガード石はかなりきれいな鉱物だし、六方系で小さいので基本的に針状で多くは放射状。球状でもいがいがタイプ。孔雀石は繊維〜針状でも何となくルーズ、色の褪せたところがある。また、注意深く酸を使えば溶け方で察しがつく。
 先ほどの
YやCeは希土類金属の中では最も早く発見された類で、それだけ出現しやすいということであろう。国内ではY-アガード石タイプが多い。レアな鉱物としても知られるが、正体が知れるにつれ産出報告の鉱山が増えたので最近はそうでもないなと思う。しかし・・・・。
 
 上の画像は、初めてアガード石を手にした奈良県の三盛鉱山のもの。そのアガード石をルーペで見たときが、およそ上画像程度のサイズになる。もうひとつ小さな凹みに覗いていたやつを超拡大したものが
マウスポイントの画像ミクロ探検気分だ。なお、最後に訪れた4年程前には二次鉱物自体が激減していた。
 下の画像はよく知られた広島県の林旧採石場のもの。ここは1〜2年前に行った方の話では、もう結晶は無理かもしれないと聞いた。現場は夏でも草木が生えてないのをどう解釈しよう。さらに
下画像をポイントすると岐阜県の五加鉱山。それに6年ほど前にやっと訪れた栃木県の日光鉱山も、坑内はうわさどおりで遅かった。アガード石かな程度。
 しかし・・・・産地は増えたとはいえ産出が少ないので結局採集は困難になっているところばかりになってしまったようだ。ほかもあるのだろうが様子はわからない。
 こんなことだから、いまどき石ころに興味を持ち始めた方にとっては大変。・・といっても私もスタートが10年遅いなと感じていたものだ。ただ、初心者のときは何をとっても事件だったし、バイタリティーがある。e-i,e-
アガード石
Agardite  奈良県御所市朝町 
最大のロゼットの直径約0.3mm以下
   ポイントは別拡大写真
アガード石
広島県瀬戸田町 ポイントは白川町
                                  
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