1◆束沸石
岐阜県中津川市蛭川地方の2枚と、静岡県土肥町大洞林道〜愛媛県久万町槙の川地区を組み合わせての束沸石<Stilbite>である。束沸石は沸石グループの中では比較的見かけやすく、薄板の束状の集合でカリフラワーのように丸くなったりもする。ただ、いつでも常に束状構造が見られるわけでもない。なので時折見かけられる、真珠光沢を持ち六角板状が基本の輝沸石と、さらにはステラ沸石とも似ているところがあり迷うことがある。大体だが束状があれば束沸石としておこう。
上の画像は花崗岩ペグマタイト(深成岩)に見られたもので、カドがそぎ落とされた長板状結晶をなしている。また、いくつもの結晶が束になっているように見え厚みのある結晶になっている。そぎ落とされた面がもっと発達したものが六角板状の結晶になると思われる。上の画像をマウスポイント(マウス矢印を画像の上におく)したものはそれが束状に集まり、もこもこに発達したタイプである。
下の画像は安山を主体とする火山岩中のガマに発達した束沸石で大洞林道の産地はNaよりCaのほうが卓越する環境の沸石が多い。薄板状の鉱物がずれて重なり合って扇状になっているものがある。やや透明に見える部分は色こそ違え、結晶の形は上の画像と似ている。また、画像から外れてしまったが、薄くて透明な六角板状になるものがあった。そうなってくると真珠光沢もみられない。ただし輝沸石の同様なものとは角度と雰囲気が違う。
下の画像をマウスポイントすると過去に大きな沸石を産出した愛媛県久万町槙の川地区の採石場の束沸石でガマの部分の差し渡しが7.8cmある。束沸石が束になってカリフラワーの一部みたいになっている。
上下画像地域は採石を終了しているところが多いし、とくに久万町の採石場は今ではどこも立ち入り禁止になっているらしい。e,a-i |

Stilbite 岐阜県中津川市蛭川 2〜3mm

束沸石 静岡県土肥町新田 1mm前後
ポイント; 愛媛県久万町画幅10cm前後 |
2◆緑鉛鉱 緑を入れない方がよかった
鉱山の鉛を含む風化帯には鉛のリン酸塩鉱物にあたる緑鉛鉱<Pyromorphite>が時々見られる。その緑鉛鉱の見分けは難しい気がする。砒酸塩鉱物も混じってくるとミメット鉱とは明確に区別できないし、カラーのバリエーションも多く大小もさまざまで小さいのは、解像度の劣るmy実体顕微鏡では限界だ。ここではなるべく画像を多くして、何となく傾向が分ればというつもりでいるが、まとまりがなくなっている感もある。
緑鉛鉱の形状は鉛筆のような断面(変形していることも多い)を持ち柱状〜細柱状で、先細りになったり中央部が膨らむ傾向もあるようだ。それと樹脂光沢を持つとされるがガラス光沢寄りのミメット鉱とは形状も含め微妙なのだ。まあ、分析できる環境にないアマチュアの見解で貫き通しているので、その程度のレベルで見てもらうしかない。
画像は順に観音滝(緑色)、五加鉱山(淡緑透明)、金平(紫褐色)、数坂峠(黄色)、茂住峠(緑)、それに今回差し替えで、巖洞(黄色)としている。
上左画像;観音滝のは含砒素緑鉛鉱とされているが、見た目はいたって普通の緑鉛鉱だ。ここではもうかなり少なくなっている。 上中画像;五加鉱山はもう少し色が薄いものが多かったが、ここも現在は結晶を見るのが困難になっている。画像は見つけた小さな結晶群で淡緑透明のもので、樹脂光沢でなくガラス光沢を持っている。現地の鉱物種と緑系統なので緑鉛鉱としているがミメット鉱の可能性もある。
上右画像;金平のは緑鉛鉱でも緑色ではないものがある・・としてよく引き合いに出される。実は普通の緑のタイプもけっこうあった。標本は赤紫色でかなり長さのあるもの(通常はここでも短柱状)。よくいう産出ポイントとは離れていた。なので産出からしばらくの間不明種としていたものだ。
数坂峠については本邦産出の少ないバナジン酸塩のうちバナジン鉛鉱〔ここが一番立派〕が出た。それが細長くなったものもあるのでここはリン酸塩、砒酸塩、バナジン酸塩の三つ巴でわかりにくい(ここは特殊な産状)。
いまの数坂峠は、友人から様子を聞く限りバナジン酸塩は絶産のようだ。緑鉛鉱もその付近に集中していたのでこれも同じ運命だろう。サイズは一回り小さい。所持しているものに限ると、下中画像;一応緑鉛鉱では有名な長棟鉱山(茂住)の緑鉛鉱だ。下右画像;黄色のものは、ある範囲で集合しやすい傾向があったので緑鉛鉱かなと思う一方、ここでは砒酸塩の存在も示されていたのでミメット鉱の可能性で困った。ところが、よりミメット鉱と思われる標本を別に得たので逆にこちらの画像は緑鉛鉱と自信を持った。
もうひとつ数坂のオレンジ色の自信ない緑鉛鉱を省き黄色でも緑鉛鉱の他の例に差し替える。緑鉛鉱にれっきとした黄色があるのはいくつも見ているとわかるようになってくる。ずいぶん後になるが巌洞鉱山(下右画像)で、緑〜黄緑〜黄色と移り変わってゆく緑鉛鉱が観察できた。こういうのを見ると、先ほどの利根町の黄色の緑鉛鉱(下左画像)が、何の抵抗もなく緑鉛鉱に見える。c-i,c,c-i,e,e,c |
Pyromorphite 大分県佐伯市宇目町. 3mm 岐阜県加茂郡白川町 画幅2cm 石川県小松市金平町 .
14mm程度

群馬県沼田市利根町 0.5mm
岐阜県神岡町茂住 1〜2mm程度 福井県大野市和泉 |
3◆ルソン銅鉱 ついに収穫
ルソン銅鉱<Luzonite>で有名な手稲鉱山では限られた坑に一時期に出たとある。他もおして知るべしであり、Cu,As,Sの平凡な組み合わせながら、稀産品とされる。が、赤石鉱山にはあるといえばある。近くの春日鉱山でも顕微鏡レベルならあるようだ。ルソン銅鉱のネーミング由来はフィリピンのルソン島とされる。
特攻隊の出撃で知られる鹿児島県の知覧町。そこの赤石鉱山は稼働中の鉱山で立ち入りは厳しく制限されている(春日鉱山も稼働中の鉱山だけど)。含金銀の珪化岩鉱床は熱水滞留に伴って生じたもので、今は露天掘りをしているが珪化岩が恐ろしく固い。金鉱石は当然あるはずなのだが、石を見たところではほとんど金気のない石ばかりで、たまに見るのが硫黄の粒や微細な黄鉄鉱、針鉄鉱くらい(きつい還元環境)。しかし、ある時期には金の冨鉱体が存在した。基本的にここの原石は露天掘りなので、そのまま熔剤として運び出され電解精錬に投入されて金銀が姿を現すわけなので、赤石産の自然金は直接採集では無理だろうと思う。
ここに産するというルソン銅鉱もこのような状況のなかで、簡単に姿をあらわすわけがない。もともと結晶になるのはさらに稀とされるルソン銅鉱だが、でた画像はまさにその結晶であり、四面体構造をスタンダードとする。赤みを少し帯びることがあるというはずの画像だが、これは色気がないので地底の世界のようになってしまったが、欠けた部分からみれば、わずかに赤みを帯びた鋼灰色となっている。o |

鹿児島県南九州市知覧町
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4◆灰クロム石榴石 含Cr灰バンかも
灰クロム石榴石<Uvarovite>以外の仲間の石榴石の多くがルーペなしで観察できるのに対して、このタイプの石榴石はかなり小さく海外の有名産地でもサイズは3mmどまり、きれいなものは1mm前後どまりのようだ。 灰バン石榴石(含Cr)にも似るが、こちらは蛇紋岩系統に伴ってくるのを目安にしている。
見たところの差で言えばたいていの産出状態は緑のペンキのような皮膜状態。結晶が見えてもチカチカ程度で小さい。明るい緑色で透明感を持つ傾向(灰バンは緑のときでも少しは黄色系統が混入)。しかし、少しでも大きくなれば光の透過がうまくいかず黒ずんでくるように見える。
高瀬鉱山は、山をまたいだ鳥取県の鉱山(若松鉱山、広瀬鉱山など)にかけて散在するクロム鉱床の一角をなしていて、古い施設跡が残り昔がしのばれる。ズリは多いが皆さんの努力の後なのか、クロム鉄鉱は見られるものの石榴石は本当に少ない(それは、もともと少なかったのかもしれない)。
画像は結晶がきれいだが、選んだ鉱石の中のごく狭い範囲内のもの。ここのはベースになる母岩部分が黒っぽいことが多く、それは透明度の高い結晶であっても、かえって見映えしないような気がする。結局印象に落差がでる。 |
岡山県新見市神郷町 Uvarovite

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5◆プロト直閃石 地味といえばそう
高瀬鉱山では、プロト直閃石<Proto-anthophyllite>という角閃石仲間の新産鉱物がボーリングコアだけから見つかっていて、こちらのほうが鉱物のサイズは大きい。ボーリングコアの直径が中程度の部分から産出だと聞いたので、条件が限られるようだ。
ところで、プロト直閃石ではないかと思われる鉱物(下画像)をズリから相棒が見つけ、追加もできたのでアップしておく。
多少なりとも雲母化がすすんでいて細部は不鮮明だ(コアからのも見せていただくがこんな程度)。コアからしか手に入らないという筈の物がズリにあるのか?という気もするのでアップしてみる気になった。その後コアとは限らないようだということが判り、それを見たらやはり同じものだと思った。 これをすでに手に入れている方にみせたことがある。
ある人は「これは同じのようだ」べつのかたは「同じのような気がするが、詳しくは分析に・・」。こんな答えが返ってくる。珍しい(らしい)鉱物だから断定をしないんだな。なにか気がつくことあればお知らせください。 |

岡山県新見市神郷町 プロト直閃石 Proto-anthophyllite 4mm |
6◆ドミスタインベルグ石
ドミスタインベルグ石<Dmisteinbergite>。採取されたのは車沢地内の産出ポイントから外れた場所で友人が割り出した。それは白いドーソン石(こちらは炭酸塩)を大きくしたような形状。しかし比較してみればやはりドーソン石とはかなり違うもの。こちらはCaとAlのケイ酸塩鉱物であり風化にも結構強い。白く平らな葉片状でやや放射状に広がる傾向を持ち、表面は真珠光沢が見られる。
鉱物名の由来はドイツ周辺の人物あるいは地名のようだが、本邦での産出が極端に少なく日本新産鉱物かなと思ってもみたが、そのような記録を見ることも話題もないので「こいつ何者?」という状態で経過している。画像標本は割り出した片割れをいただいたもの。大きさと形状で完璧なので言うことない。今は探すのも大変だと思う。追加標本を見ていると、この画像標本を凌駕するものは出そうにない。
不明だった鉱物名がわかり、採集した友人に伝えるのに私自身が覚えられずドレミファソラ石と仮に覚えた。どうでもいい話。e-i
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Dmisteinbergite
群馬県利根郡片品村 直径1.5cm |
7◆ブラウン鉱 ブラックです
長崎県戸根鉱山ではブラウン鉱<Braunite>の肉眼サイズの結晶が見られることで有名である(あった)。ブラウン鉱はマンガンのケイ酸塩鉱物だが、このMnの酸化度は小さく高品位鉱である。このブラウン鉱は、他の産出場所では緻密な塊状で見られるはずが、ここのはMn-白泥石という白雲母様に包まれたり、隙間があったりしたとき自形の結晶ができることがある。画像標本を得たのは2回目の2年前。いまどき絵に描いたような鉱石がでるわけもないと思いながら雨上がりの辛い場所で、ポリ袋に放り込んだ石のひとつだった。
また、ここの紅簾石は密ではなく長く伸びた柱状結晶の立派なものがあり、画像に見られる髪の毛状は鮮やかな濃赤色ではなく柱状にも見えないが、これは酸化したものと思っていた。・・・が、妙に結晶がうねっている(髪の毛か?吹いても飛ばないぞ)
。 その後知ったホランド鉱(ブラウン鉱からケイ酸を抜いたような鉱物)なるものとも見た目が似ている。しかし,採れる場所が違うとかいわれ、やはり紅簾石なのかな。e-i
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Braunite
長崎県西彼杵郡琴海町 max1.5mm以下 |
8◆斜ヒューム石 結晶も
泰阜村幕岩の斜ヒューム石<Clinohumite>になる。斜ヒューム石を含むグループは、海外ではオレンジ色系統の宝石になるものがあるというのが驚く。現実にみるのは、色は目立つがもろくていつも細かなヒビのある不定形の小さな粒の断面ばかりで、宝石なんてとんでもないです。概して苦灰岩由来のスカルンの鉱物の多くは小さいので人気がない傾向があるようだ。?
ここ鉱山(採石場)ではCaや局所的にMgを含む母岩が花崗岩などによる熱で変成を受け大理石になったり、苦灰岩はドロマイトスカルンになっている。このうちのドロマイトスカルンには、あまり見ないハロゲンのFを含むヒューム石グループが産する。ドロマイトスカルンはどこでもありそうなのにヒューム石グループの産出場所は案外少ないのはFの供給が必要という理由だろうか。
Mgの比率の少ないものから、まずヒューム石はオレンジ色を基調にした斜方晶系となる。次にコンドロ石が、そして単斜晶系の斜ヒューム石他がある。このうち多いのは斜ヒューム石で淡褐色〜黄燈色に近いほとんど粒状で、稀に短柱状になるという。上の画像は偶然に出た短柱状の結晶で、鈍い錐面らしき所もあり、大きさは5mmもある。検めて見た残りの斜ヒューム石はおおむね1mm前後。これらの母岩の特徴・傾向を比較したが、わずかな母岩の出来栄えの違いとしかいいようがなく、表面からはまったく区別できない。
上の画像をポイントすると面が見えるのが少しある。かなりきれいな結晶の集合体。それでも有名?な岐阜県春日鉱山に比べれば、若干粒度が大きい。海外での宝石としての評価もこの粒が大きければうなずける。
最近この産地の分析済みコンドロ石の黄色に近い小さな粒状の実物にお目にかかったが、それを見て同じだと思ったのが下画像で、コンドロ石と思っている。正しいかどうかは分析しないとダメなんだが、素直に考えても捨て石かもしれない石に0.6〜1万円ほどかけるひとはいるだろうか。恵まれて分析環境にある人しかやらないだろう。
最近の鉱物分類は細かいことをいう。何の石か?、迷った挙句お聞きすることがある。肉眼鑑定の個人見解でいいのだけど、昔と違って「化学分析しないと正確にはいえません」という『昔はよかった、細かくして何の役に立つのだろう』。
ここの他の石を使い希酸に溶かしてよい結晶が現れるか試したが、見栄えが悪くなっただけだった。やめよう。o,c
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Clinohumite 長野県伊那郡泰阜村
5mm短柱状結晶ポイントのは1mmほどの
粒状結晶群下画像はコンドロ石様 |
9◆苦土スピネル(T) やや分かりにくい
スピネル<Magnesio- spinel>MgAl2O4はミャンマーなどから美品を産し、ネームヴァリューはあるので国内の鉱物図鑑にあるかと改めて見ると。 ない。 勘違いか?と思ってnet見れば、国内産地は微視的なもの加えれば結構あるものの、あくまでも記録だ。最近のブログとかと照らし合わせてみるとわかる。実際には産地も範囲も量も大きさも小さくて得るのは大変なようだ。もちろん宝石クラスは無理。微量のCrで発色したものの良品がルビーの代用品として使われる(下画像はそのサンプル品)。
岐阜県の春日鉱山から産出している。ここは以前から産出が知られていた場所だ。 粕川沿いのアプローチが楽であり殆どの訪問者はこちらだが、山のほうへたどった美束坑の方に残された昔のズリの一部で、石友がまさかというほどの良品を見つけている。
ドロマイト岩中に黒く見える縞々やスポット部が候補にはなるが、割ってキラキラしていてもよく見れば別の鉱物とか、スピネルであっても微小サイズとか、不完全で判別できないとか薄汚なく見えるものとかで「面白くない鉱物ばかり、こりゃだめだ」とかでそのままポイされることある。8面体由来の三角の錐面を目当てに探すが長年の訪問者の多さで、これぞスピネルとすぐわかるものは少ない。周りに同化したように黒っぽく見えるのも難点だが、白っぽいドロマイト岩の方に移動したものは、さらに小さいがおかげで本来の色がはっきり出やすい傾向がある。
春日鉱山で得られているNo.2の標本を上画像にしたが、それでこの程度。(海外のは大きいものもあるが美麗なものは小さい)風化に強いのでスピネルの八面体の一部を探す。面の反射ですぐわかるものもあるが、等軸晶系のいろいろパターンを思い浮かべないと見すごすことが多いと思う(2-46参考)。
ちなみに濡らして強い光のもとでルーペで見たら青色透明な結晶だった。一般的には微量のFe含有というがゲイキ―石はあるし、それってTiは考えられないのか。 |

岐阜県揖斐市揖斐川町川合 max1mm
Magnesio- spinel 苦土スピネル

参考品 赤色 ミャンマー産スピネル(タイにて))
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10◆淡紅銀鉱 同じ族のSb,Asだけに
淡紅銀鉱<Proustite>といえば西沢鉱山と、佐渡の鉱山?があったような。という程度の産地の少ないレアな鉱物だ。淡紅銀鉱は濃紅銀鉱(前述)他とともに紅銀鉱または、ルビーシルヴァーと総称するが実際の産出は多くが濃紅銀鉱である。この西沢鉱山では両方が産し、しかも見かけあまり変らないらしいからややこしい(濃紅銀鉱はより暗化した赤色という)。迷ったら紅銀鉱としておけば一件落着ということになる。
濃紅銀鉱との違いについて;濃紅銀鉱の産出には立ち会っているが、その多くが黒ずんだ中の所々に赤く光るものがあるというパターンだった。この画像のような赤〜暗赤色ばかりという状態とは明らかに違う。
さらに濃紅銀鉱がSbを含む硫化物に対し、淡紅銀鉱にはAsが入っている。これに、さらにレアな黄粉銀鉱(As含む)なるものがあって、これが黄〜燈色になるとのことから二つが近接すれば(この画像の範囲外の所にそれは見られる)淡紅銀鉱のほうだろう。分析なしでもそれくらいはいいだろう。
さらに淡紅銀鉱はおなじ硫化物の針銀鉱(輝銀鉱)はSb成分がないことに繋がるので、濃紅銀鉱と違って共存はありえる。あと、淡紅銀鉱のほうが濃紅銀鉱よりは経年変化が少ないらしい。ac
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Proustite
栃木県日光市栗山 サイズはかなり小さい
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11◆ベニト石 青海川の兄弟(1)
日本でもベニト石<Benitoite>が新潟県の青海川の金山谷で発見された。Ba,Tiのケイ酸塩で、淡青〜無色のシャープな面の組み合わせからなる結晶(三方晶系とされる)であり、この地域で有名なヒスイとはまた違った侮れない美しさを持っている。短波長紫外線(商品通称;ミネラライト)で、かなり強く青色に輝く。
カリフォルニアのサンベニト川源流で、サファイアに似た青色の鉱物が出たのは大半が過去のこと。そこのベニト石の結晶はその硬度、多色性、屈折率、希少性など宝石の条件を備えていたが宝石加工にするには大きいものが少なく、ロスも多いため、さらに最近は産出がないためサファイアより高価なものとなるらしい。
青海のは曹長岩のうちでも特別なタイプの石(後述)。とくに空隙を充填する粘土質の中からは形の良いものが現れる(母岩つきはデリケート)。過去には日本でも大きさだけなら1cmの青いものが出たというがまさに宝石だ。・・・ただ我々は、それこそ宝石にしてくれるないう立場だが。
過去にここで稀産鉱物を得たことがある友人と連れ立って、青海川水系を訪れたが、今は昔ではない。産地の事情がまるで違い次第に焦りが諦めに。
しかしここで、ある地元の石拾いの人と、はなれた場所で二度も会う偶然。それで話し込むうち、今どきはとても無理なので石を送ってくれるという。しばらくして届いた石のひとつがこれだ。画像のベニト石ではその気品さえ漂う美しさを表現できたと思う。彼とのこれからの縁をもつなぐ授かりものと思っている。
下画像は参考のための通常レベルのベニト石である。最近はこれを含む独特な母岩さえ見つけるのが困難だそうである。母岩を見かけても目に見えるベニト石そのものが少なく、さらに結晶形が見えるものはそのごく一部だけ。見えてもなおベニト石付近のクリーニング(表出)は注意を要する(後述2p-15のように、青海川の兄弟(1)〜(4)には、形状によるが肺によくない鉱物の存在は大いにある)。 cg,c |

Benitoite 新潟県糸魚川市青海川  |
12◆(曹)柱石 抗夫たちどう過ごした
甲武信鉱山の曹柱石<Marialite>が有名である(下画像)。ここでは繰り返される熱水の影響などによって変化したと見られる大きな柱石が、山頂近くの川端下側に採れていた(今は残っているか?)。国内での産出地は少なく派手さはないが、海外の一部には良質なものが産し、これにやや高い硬度もあって半宝石に加工もされたことがある。
上画像の標本は、同地区なのだがこちらのほうが質感はよい。何となく長石に似た質感と風合いであり縦に条線の入った正方柱が束ねられたような形を見ることができるもの。いわゆる美品。しかしもろさがある。文献によっては斜方晶系ともあるみたい。こちらもスカルン生成物であり赤褐色の石榴石が散見していた。
下の画像がそれでこちらの場所はどれをみても最初から雲母化していた。背丈は18cmを越して迫力がある(ただ山頂近い坑口内の曹柱石はどれも雲母化していたようだ)。また、周辺には大量の方解石があった。この中からはかなり透明感のあるものがあった。
そういうこともあり甲武信鉱山は石灰岩由来のスカルン鉱物が優勢なので、灰柱石ではないのかと思ったが、ここの柱石はNaの曹なのだそうだ。これまでなら柱石とすればよかったが命名が厳密になってしまった(我々素人はちょと困る)。
その甲武信鉱山(梓鉱山)は金の鉱山だったようだが、各坑口付近にはその片鱗はほとんどない[採集はできたけど(前述)]。それとここに限らず坑口までのアプローチが大変な所なので、昔はどのような採掘形態・状態だったのだろう。
実は若いころ石友と5月に山頂付近の坑口内で夜をすごしたことがあるが、寝袋、暖かい服準備しても寒すぎてろくに眠ることができないばかりか、飯もポロポロとなってろくにたべられなかった。
いちいちふもとに戻ることもできない山頂近くの鉱産地ではいったい昔の人たちはどうやって過ごしたのか。昔の人よ。教えてください。 c-i,i
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Marialite 南佐久郡川上村 梓 上画像左右7cm
川上村甲武信鉱山 下画像 上下18cm
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13◆青海石 青海川の兄弟(2)
青海川金山谷(由来の鉱山もある)で発見された青海石<Oumilite>は、'70年代に地質調査中に発見された数々の珍しい鉱物(リューコスフェン石、ストロンチウム燐灰石も)のうち、奴奈川石(後述)とともに後に新鉱物になるもののひとつだ。この流域にたまに見られる含苦土リーベック閃石曹長岩の中に含まれるのだが、その中の珍しい鉱物の中でも少ないほうで執念と運がなければ見ることはないだろう。
淡桃色〜淡黄褐色だが、色が薄くなると無色に近くなるので似た形状の他の鉱物と迷うことがある。単斜晶系に属し、弱い絹糸光沢のある繊維状〜針状で産しそれが扇・放射状になりやすい。化学式は単純ではないが大雑把に見るとベニト石のBa,Tiの代わりにSr,Tiということだろうか。もともとSrを含む場所の分布自体は少ないものだが、青海川、小滝川流域はそのようなところでもある。
上画像は青海石の中でも、なかなか見ることのない針状の結晶である。針が芯から放射状に飛び出している(画像をマウスポイントすれば母岩ごと)。こういうのがあるということは、球状の青海石があるのかもしれない。今のところ他の国での産出はなさそうで文句なしの一品だ。これは石友のいわくの二番目の石であるが、彼によればおなじタイプのクリーム色もあるのだそうだ。
下画像は通常の産出レベルの青海石になる。イメージのための画像なので細かい構造がわかりにくいが、所々、左右に走る繊維状構造が見られる。実際はもう少し
色のバリエーションもある。
(新潟県の糸魚川市は、新鉱物や日本新産鉱物の発見が続いている稀有な場所である。cm,a |

Oumilite ポイントも新潟県糸魚川市青海町

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14 ◆明礬石 か
静岡県宇久須鉱山のミョウバン石<Alunite>である。三方晶系、結晶してないものはそのものが判りにくいが、条件が良ければ爪状稀には六角薄板状の白色、稀にはピンク色の結晶集合体が見られる(画像の結晶は汚れのため褐色)。
ミョウバン石は水に溶けないが、通称ミョウバンは水に溶けやすく昔は染色、漬物、食品添加に用いられていた。今はどうも制汗剤とかにおい消しなどにも用いられてるようだ。ミョウバン温泉というものもある。
化学式が少し違っても性質は違うものなので、例えば硫酸は確かに怖いが硫酸塩(硫酸○○)ではミョウバンのように食品製造業に使われるものもあれば、飲んだら死ぬものもある。画像の明礬石はもちろん薬品の明礬とは化学式も違うし、野外でもこちらは水に溶けない。
この鉱物の一部にNaや,Kのスペースがあるが、宇久須鉱山ではNa主体のソーダ明礬石だ。ここではこの明礬を採っていたらしいが、施設の跡は見えないしはっきりとしたズリ場も既に見えなかったが、キャンプ場奥の小川沿いにこの明礬石が点々と見られた。温熱水が作用してできるもので現役としての別府の明礬温泉は有名。他には北海道小樽市朝里温泉付近、長野県諏訪鉄山、兵庫県栃原鉱山が有名のよう。e
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Alunite 静岡県加茂郡西伊豆町 1.5mm |
15◆奴奈川石と 青海川の兄弟(3)
奴奈川石(ストロンチオ斜方ジョアキン石)<Strontio-orthojoaquinite>も青海川金山谷で発見され日本で発表された新鉱物だ。ただ、国際的申請手続きはなされてなかったようで、その後サンベニトの鉱山で発見された新鉱物がストロンチオ-ホアキン石)とバリオ斜方ホアキン石(ジョアキン石)の名称になった。関連して奴奈川石(上画像)はストロンチオ-斜方ホアキン石.と承認された。つまりは、日本人が発見分析もし奴奈川石としたが、最後の命名はアメリカ人提唱に決まったということ。
奴奈川石は青海川でたまにみる含苦土リーベック閃石曹長岩の中にあり、空隙があれば自形結晶が成長することもあるが、通常は空隙があっても石基上の黄色の被膜としてまた一部は結晶質として産するケースが殆ど。結晶になると、淡黄色〜蜜黄色系統でガラスないし樹脂光沢。先細りの台形、またはこれが両錐になった形で条線を見ることもある。 奴奈川石の化学式は中でも複雑でありレアアースを含む傾向にある。画像はそれらの特徴が見られる奴奈川石だ。
また、色あいで決まるものではなかろうが、橙褐色系統のものはおおむね単斜ホアキン石に相当するものとされている。調べたらサンベニトのは黄〜緑系統で幅広い。
下画像は結晶の形ははっきりしないが、そのストロンチオホアキン石(単斜)とのことだ。他の鉱物種も見ると日本とサンベニトは結構同じものが産出していたということ(サンベニトと母岩の様子は違うけど)。
下の画像をマウスポイントすると、奴奈川石の通常の産出状態に近いものになる。これを含む母岩自体なかなか見ないが、あればこの黄色が青海川の稀産鉱物の中ではもっとも見かけやすいほうである。ただし結晶として見れる状態での産出になると百に一つあるかないかくらいで、そう解釈すると他の青海川希産鉱物の結晶なみにレアといえる。
なお、話題になってはいないが曹長岩を割っていてリーベック閃石の微細繊維状を見るなら、それからはその粉塵を吸い込まないように注意したほうがいいはずだ。肺がんを誘引する鉱物だとされる。cc,f
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上 Strontio-orthojoaquinite(奴奈川石)
新潟県糸魚川市青海町
下Strontiojoaquinite ポイント皮膜奴奈川石

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16◆鱗鉄鉱・針鉄鉱 見かけの違いが大きすぎる
もともと地味だったが 褐鉄鉱という用語を使わなくなって、おもなものは針鉄鉱と鱗鉄鉱ということになった。これも科学分析の精度が上ってからの改定の余波だろうか。めんどう。
化学式は鱗鉄鉱<Lepidoclocite>も針鉄鉱もFeO(OH)さらに共に斜方晶系なので、これを例えて、手で言えば左手と右手程度の違いか。これにH2Oが加わった形はFe(OH)3でこれは水酸化鉄(V)といいドロッとした鉄さびそっくりのものだ。針鉄鉱の由来が針状ということだが、明快な形のは少ない。鱗鉄鉱のうろこ状も実物と似合わない。なので慣用的に褐鉄鉱を使ったほうが無難なのでは? ここでは、典型的なものをそれもおなじ産地のものも揃えて画像にしておく。
まず虹の石(レインボーストーン)なるものは鱗鉄鉱とされるが(上画像)、それでも針鉄鉱との正確な区別はX線回折によるとか。もこもこしているが鱗には見えない。虹の色は母岩に層状に重なる薄膜での光の干渉とされる。
下画像は見かけは違うものの、これも針鉄鉱とされる高師小僧である(不純物は多いが)。愛知県高師町には今でも造成地などがあれば見られるのではないか。珍しいものではないので結構産地はありそうだ。よくよく見れば中心部に穴が開いていて植物の根の周りで放射状に成長したことを物語る。産地によってはひょうたん、とっくり、つぼなど下画像のように妙に個性的な形をした高師小僧もあり、そういったものはけっこうな人気者になる。七福神の形にさえ見えることがあるという珪乳石(能登半島、恐山・・)と共に個人的にもこんなものも好きである。
下画像をさらにマウスポイントすると先ほどの鹿児島県赤石鉱山産の針鉄鉱<Goethite>である。こちらのほうは黒い魚卵状あるいはその集合体のもので、同じものでも特に大きいところは石の隙間に入りきらないとみえ断面になっていて、そこは赤褐色となり、それは針状結晶の集合体のようにも見えるが幅もあるようで板状といえなくもない。これならそのまんま針鉄鉱なのか。e,i |

鹿児島県南九州市知覧町 Lepidoclocite
下はGoethite:愛知県豊橋市高師
、同 知多郡美浜町 ポイントは赤石鉱山

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17◆リューコスフェン石 青海川の兄弟(4)
画像のリューコスフェン石<Leucosphnite>の発見には運命的な出会いがある。ある日、石友が青海川金山谷に入ったら(上流採集禁止区域あり)手に余るサイズの母岩を見出した。そのままにしておいたら台風の大雨で流され行方不明に。それが後々になって1.5kmほど下流で再度お見合いするという偶然。これは神様がくれた宝物だと感じ格闘の末、色々な魅力ある鉱物を取り出した中の最後の一品がこれ。サイズは1p前後にもなる。
リューコスフェン石はSrを含まず、Na,Ba,Tiを含む硼ケイ酸塩鉱物で、淡青色(それは小さければ無色だろう)柱〜針状でC軸に平行な条線を持つことが多い。無色に近い場合は、沸石・ベリルあたりが似ているかもしれない。母岩が限られるので淡青色が見えればもうそれだけでリュウコスフェンだ。ちなみに情報からすれば、青海川のレア鉱物群の中ではこれが最も少なく、石友のお気に入りとなっている。現在は、青海川で含苦土リーベック閃石曹長岩(結構特徴的)を新たに見つけることが難しい状況になっているので、今後典型的な結晶を見つけることはたやすくないだろう。
糸魚川市周辺からは、このほかにもヒスイや高圧変成岩から数々の珍しい新鉱物(蓮華石、糸魚川石、松原石・・・)や新産鉱物(輝葉石、ストロンチウム燐灰石、・・・)が出ていて、さながら新潟県は新が多県ともいえる場所で、まだまだ新発見がありそうだ。cc
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Leucosphnite 新潟県糸魚川市青海町
中央部 長径1.0cm 左上 太さ2mm
マウスポイントで拡大画像あり
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18◆ランシー鉱 二酸化マンガンへ(2)
高根山鉱山のランシー鉱<Rancieite>である。二酸化マンガン系統の鉱物なのに産地は世界でも少ないというが、今は珍しいというべきか。そのうち増えるのだろう。日本での代表的なものは静岡県だ。ランシー鉱は、箔状で火焔状の赤い鉱物だという(古い本にあった)。これは昔のズリが新鮮なころのことではないか。現在の海外も含めてのネット上の画像に赤いなといえるのは見られなかった。
現場でもなかなか見つからないものの、友人が採取したので見せてもらうが「どこ?これ?」状態。それでもヒントに自採したものは少し赤っぽく光ったもの(気がしただけかもしれない)だった。・ところが最近改めて見るとこれがよく分らない。そこで深く考えもせずに酸でエステしてやると消失。悪夢となった。
ダメもとで小さな石をさらに割り込んで、ただ、ひとつだけルーペサイズのランシー鉱が残ったので、初々しいうちに遺影?を撮影した(上画像)。そして、この小さなランシー鉱を目にしてやっと、なるほど"火焔状をなすことがある"というのはこのような姿のことだと悟った。で、普通ならアルミホイルをくしゃくしゃにしたような(葉片状のたぐい)のが普通。
現実に見るのはアルミホイルを細く切ってヒラヒラを適当に集めた(葉片状)ようなもので、断面が赤銅色に見えるのはないわけでもない。実際は銀白の金属光沢を呈しているか、多くは酸化して黒ずんだものが圧倒的。ただこの日は現場が曇りの日さらに木々が多かった、そして目的鉱物はほとんどが薄暗いガマの中という条件で、殆ど黒にしか見えなかったというのが実情。ときはかなり地味なもので、押せばへこむほど柔らかいし水に浮かびそうなものだ(
金属なので比重は1以上でも、形状によって、表面張力も作用)。
悪夢を払拭するため再訪。空隙の多い二酸化マンガンで汚れた石や孔雀石、水晶、藍銅鉱を持ち帰る。今回のも火焔状というのか微妙だ(下画像)。閉山から久しいので、こんなものだろうか。 鉱はMn2+Mn4+の混在する酸化物であり不安定。次第に表面から黒ずんでゆく。海外のランシー鉱にしても画像とさほど変らない。安定の二酸化マンガン系統に変ってゆくのだろう。(これで脱酸素剤とともに封入しているが、さらしたままと比較すると、この保存は変化をだいぶ防ぐのがわかった。しかし、それほどの価値があるのかは知らない)。e,e…ということで、脱酸素剤とともに封入している。
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Rancieite 静岡県下田市高根山上画像の
鉱物 長径1.5mm前後 下画像のガマ1.8cm
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19 ◆ベイルドン石 緑の絨毯
岡山県、小泉鉱山のベイルドン石<Bayldonite>である。ポピュラーではないためか手持ちの市販の図鑑のどれも掲載されていなかった。Pb,Cuの水酸基を含む砒酸塩で、今も出るかもしれない所は3箇所程度と少ない。ありそうだが滅多にないたぐいのものだ。ほとんどは皮膜状、ある種の地衣類のような色の緑で状態によってはかなり美しいが、野外に曝されていたものは、水和水が失われたのか弱ったコケのような色あり。また量が多いのか盛り上がって小さな半球顆状の集合にもなることがあるが、それの木浦鉱山産のものをルーペで観察したおりに非晶質かと思うくらいの微細で針状の結晶の集合体を見た。
石友との小泉鉱山遠征ではこのベイルドン石が目玉品だということだったが、「えー?これ?」と思わず口にしたほどのコケのような地味な鉱物だったという記憶が残っている。それからも機会を捉えて行けばそのうち目も慣れてくるもので、画像のような新鮮なコケ(水を与えなくても枯れない品)みたいなを得ることができた。 木浦観音滝旧坑を訪れた際も、慣れで程なく見つけたものだ。ところがそのあとも行った石友が、「一緒に行ったときはまだ良かったけど、さらに行った今回ではもう思わしくない産地になってしまったという。うーん。運か。運が良かったのだろうか。がっ良かっただけだったのか。e |

Bayldonite こぶこぶ状態 岡山県高梁市成羽町
画幅 1.8cm |
20 ◆水晶(2) 両錐のタイプ
このHPでは1ページの水晶(1)は小さい水晶に光を当てていたつもり。こちらは大きな両錐水晶の紹介。
川端下の水晶<Quartz>。とくに長峰山への標高の高いところには大きな白水晶(多くは不透明)が見られた。甲武信鉱山では他に緑っぽい水晶。大小の日本式双晶でも知られている。上画像は体の入るほどの大きなガマの中にすっぽり入りこんで赤土にまみれて採集したときのひとつ。ガマを充填する粘土〜赤土が付着したのは水洗いしただけで済ませている。このような両錐の水晶は、粘土の充填されたガマから産出しやすい。基部(根元)が母岩に繋がっていないからだ。
ふもとからの高度差が大きな鉱山は他にもあるが、そんな坑口を見ると湧き上がる疑問がある。とくに採鉱夫さん達、採掘現場までのきつい高度差を毎日通勤してたのだろうか(どの現場付近でも小屋の跡すらないなと・・・前にも述べていた)。例えばまともな索道のない開発初頭、鉱石を担いで麓まで降ろしたのだろうか?。もちろん近年のケーブルが活躍する前のことだ。他にも鉱山のズリを見て何を掘ってたのかと思うくらい不毛のズリばかり広がる時(まあ大抵は調べれば済むだけ)。
下の画像は岐阜県下の中津川市のペグマタイト中の黒水晶の大きなやつでこれも両錐のもの。二つの画像を見比べてみれば白水晶でも黒水晶でも右のほうへ緩やかな先細りになっている。両錐だからといって左右対称に成長するのではないことを暗示している。
黒水晶といえば、まだ旧恵那郡(現中津川市)で採石場が稼行していたころ。はしごを使って降りるほどの大ガマの跡がありそこから出た水晶を見せてもらったことがあり写真(昔のことでありそれはスライドにしている)に撮らせて頂いた。 それは殆ど欠けのない60cmサイズの大物であった。脇に添うようにあったのが下の画像より少し大きいだけの20cmサイズの黒水晶だったが、それがおもちゃのように見えたのが記憶に焼きついている。この画像の標本でも結構なサイズだが、上には上があるものだと感心した。
石友が恵那産の煙水晶を手磨きでカットして貴石にしあげてくれた。アマチュアなのになんと言う器用さ。o,ac,e 
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Quartz 長野県南佐久郡川上村川端下
20.5cm

岐阜県中津川市高峰
16.5cm
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21◆緑簾石 珍品:やきもち石
緑簾石<Epidote>は造岩鉱物としていろいろな岩石に見られる。(Ca Al Fe)のケイ酸塩であり、Fe→Alのものが斜灰簾石ということになる。 ここでの緑簾石は昔から知られている長野県武石村の変質安山岩中のやきもち石をピックした。
武石村では変質した安山岩(だそうだがそこまでよくわからない)中の所々に大きなシミとか被膜のような形での緑簾石が見られる、その中で、まれにそれが球顆状(ノジュール状)になったものがあり、それを割ると小さな緑簾石が晶洞に族生しているものがある。これが地元ではやきもち石と称して親しまれていた。やきもち石といえるほど餅型をしている形のものになると最近は地元の古老も、「昔はあったけどねえ」とのたもう(1982年の頃にはもう珍しいとされていたほど)。
やきもち石という愛称を付けたからもう食べつくされてしまったのだろう。ただの緑簾石としておけば食べようとする人も少なく残っていただろうに。
緑簾石あんこはうぐいすあん、水晶入りのは白あんだそうで。両方混じっているのもあるがそれはミックスあんとでもいっておこうか(上画像)。たとえ饅頭があったとしても中身はあんこなしがよくある。あんこがあっても、なんだか緑がわさわさとしたようなものが多い。上画像のようなきれいな結晶が見られるケースとなるとまさに珍品にふさわしい。上画像はおいしそうなミックスあんの部分の拡大と、おいしそうでないうぐいすあんのやきもち石母岩つき(画像をマウスポイントする)とした。
ほんの最近なんだか久しぶりに石友と行ったが、典型的な下画像のようなノジュールは簡単には見つからないのであせった。まさに運次第。ノジュールはいいけれどもあんこは”そんなに甘くないうぐいすあん”だ。 現実はあんこの形が扁平だったり偏っていたり、自然のなすことは人の思い通りではないもの。
ただし、形状が珍品のやきもち石型でなくてもいい、例えば母岩中に点々とミニ緑簾石のガマとか母岩のヒビに沿っての緑簾石の被膜状でも良しとすれば、それはある。
ところで過去に訪れた岐阜県神岡鉱山では大量の緑簾石がそこかしこに見られたが、まともに緑簾石は結晶していないものばかり、岩手県釜石鉱山のはぎゃくに肉眼サイズ結晶が普通。
産状〜惨状は千差万別。 |

Epidote 長野県小県郡武石村 mixあんタイプ
ポイント画像はうぐいすあんタイプ左右9cm
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22.◆メッセル石 終わり?
三重県多度町のメッセル石<Messelite>である。エオスフォル石(前述)に続けるはずだったもの。この鉱物は40年ほど前に茨城県雪入で、日本でのリン酸塩鉱物がまとめて出て話題になった時以来とおもわれる(他のニュースは知らず)。どちらの採石場でも短期間産出しただけのようで、それからのち資料をやっと目にすることができたので、石友と多度町方面に再確認に行ったが、稀産とされるエオスフォル石、メッセル石はもう殆ど見られなかった。早すぎる。
メッセル石は不透明な白色〜黄白色。Ca (Fe ,Mn)のリン酸塩であり、黄白色はそのFeとMnは共に2+であり安定とはいえないためだろうか。また藍鉄鉱がメッセル石を伴うことがあり、それが探すときのひとつの目安でもあった。形状は針状〜葉片状でこれが放射状、短冊状に配列するのを見る(あまり規則性はない)が、葉片状のほうが大きい。1mm内外。マウスポイントで別タイプ画像
他には、さまざまな形の菱鉄鉱(薄茶色。次第に濃色)、二酸化マンガンで覆われた菱マンガン鉱(ピンク色)、燐灰石の類、自然銅など見られた。e-i |

Messelite 三重県桑名市多度町針状
濃色部は藍鉄鉱 ポイントは葉片状別画像 |
23◆紅柱石(T) 紅の柱ねえ
紅柱石<Andalusite>といえば京都府和束町が有名だが、こちらは山口県日の丸奈古(なご)鉱山の紅柱石である。@おおかたと違って紅柱石でも赤っぽい色になるとは限らないということ。Alのケイ酸塩だからそのままでは紅柱石には色に関するイオンはないはず。それはFeの影響だろうな。Aここのは晶洞を作ることがあり、おかげで本来の形になりやすい。
画像は、大きさこそないが形が分りやすく、柱面に条線のあるものもあり光沢まである。また、紅柱石そばにコランダムが見られることがあり、たとえば長野県向方のペグマタイト中の紅柱石の中にも灰色に近い粒状のコランダムを含むことがあるマウスポイントの画像(これはない)。
変成岩の中で見られる場合はその生成環境によって、大雑把に言えば紅柱石(高温・低圧)藍晶石(低温・高圧)珪線石(高温・高圧)となり、これらは同質異像でみかけも違ってきている。変成岩中では生成環境の物差しとなるものがこれらの鉱物だ。
紅柱石(U)は4Pへ.。e-i |

Andalusite山口県阿武郡阿武町2〜3mm前後
ポイント長野県下伊那郡天龍村 3.5〜5.0cm |
24◆園石 どれがそこ 石?
田口鉱山の園石<Sonolite>を含む母岩。園石は50年以上前に認定された新鉱物、その後各地のマンガン鉱山で産出が報告される。ここのは褐色がメインだが他山も含めると紫灰褐色まで幅がある。殆どが微粒どまりだが、田口鉱山はそれの肉眼サイズの産出で知られているとのこと。元画像では結晶が確認できるが、本画像にすると再現の程度が甘く画像が荒れ、結晶面の反射もあって見づらい。勘弁ねがう。もっといい撮影が必要だ。 斜ヒューム石(前述)のMgがMnに置換された形で、色と雰囲気は似ている。正直メインのズリには殆ど見ない(ここは立ち入り禁止と聞くが、その直前にはパイロクスマンガン石含めてもう終焉状態だった)。
ここでの高品位鉱は菱マンガン鉱、ハウスマン鉱、ヤコブス鉱、テフロ石、閃マンガン鉱あたりで鉱石として運び出されているがこちらに含まれるのだ。粒状の満ばん石榴石に色、形も似ている。よくある低品位の石英やバラ輝石には直接接しては産出しないという。
アレガニー石とはMnの構成がわずか違うだけで色も褐色〜肉色なので園石に似ている。経験則とされるのは菱マンガン鉱にヤコブス鉱が多く入るものは、おおかた園石だろうなのでフェライト磁石(普通の磁石)を利用したが現実的には磁硫鉄鉱もあるのでややこしい。そこで黒っぽいいところが変化するようであれば、ヤコブス鉱よりはパイロクロアイトだったことになる。この場合は茶色ぽく変ってゆくはず。
ちなみにアレガニー石のほうは菱マンガン鉱にハウスマン鉱(Mnの酸化物)というタイプに入ることが多いとのことだ。g
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Sonolite 愛知県北設楽郡設楽町八橋
茶色のところ ポイント画像は 母岩
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25◆ブライアンヤング石ka どれがそれ?
新潟県白板鉱山のブライアンヤング石<Brianyoungite>。ここの産出鉱物から見れば典型的な金属鉱山タイプだ。グリーンタフに伴い形成されたのだろうか。坑内の奥深くには少し鉱脈が残っていて興味深いが、穴もぐり経験が少ないとそこまでは危険な所だと思う。
前のページで白板の鉱物(方鉛鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱;1p-57〜59)を話題にしたが、このブライアンヤング(人名)石は亜鉛を炭酸、硫酸、水酸基がとりまく化合物で、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱の上に生じている白い鉱物になる。ところで、ここの方鉛鉱の上にはたいてい白い硫酸鉛鉱が生じていて、肉眼ではブライアンヤング石との区別がつかない。ただブライアンヤング石の方は短波紫外線で青白い蛍光を発するのでかろうじてこの標本では分る。ここの硫酸鉛鉱は黄色に光るのが普通のようだ。これが閃亜鉛鉱の上なら白い硫酸塩鉱も出ないので分りやすいだろう。思うに蛍光は微量成分の多少とかいくつかの要素に左右されるようで、鉱物鑑定の目安にこそなれ特定はできないものだと思う。
金属上に白い粉を吹いているのなら他にもあったが、持ち帰った石ではブライアンヤング石があったのは一個だけだった。この白い色の区別は難しく何度も紫外線を当てて場所を特定しそこをルーペで見ると、この個体では少し半球状に盛り上がった部分があり、そこにはかすかに繊維状組織が見えたかも程度。ちょっと疑問を持っている。e |

Brianyoungite 新潟県魚沼郡入広瀬村
ここの方鉛鉱表面の所々に硫酸塩鉱が生じている |
26◆斑銅鉱 変化する
今まで鉱山で斑銅鉱<Bornite>を何度か採取したものの、現在の標本はメタリックブルーに変化している。きれいな変色であり、それはそれでいいのだが、そうなると新鮮な斑銅鉱を得たい。が出陣が減った今ははチャンスがめぐってこない。ようやく小さな鉱山で斑銅鉱を見つけたが、カメラの持ち合わせなし。それで町でとりあえずラッカーを購入して塗るが、色変より鉱石の風合いが変ることになりこの時点でもうあきらめモード。
それで表面保護をした鉱物の、その後を撮る事に変更した。そして一週間ほどおいておき撮影したものが右の画像である。それは結構最初のイメージを保って銅赤色に近いような気がする(石友からどうせ変るぞといわれたね)。
この斑銅鉱を最初からしばらく放置しておいたものは画像をマウスポイントするとでる。兵庫県明延鉱山の斑銅鉱なので厳密に比較しているわけではないが青や紫系統の光の干渉膜のメタリックカラーは共通だ。これも持って帰ってくると変化が始まっていた。まずは、紫色っぽく変わるところが目立ち始める。
なお、黄銅鉱も虹色に錆びるケースがある。結晶表面をカッターナイフか何かで削ってやると斑銅鉱の方は画像のような本来の暗い銅色が認められるはず。
斑銅鉱の中の銅の比率は大きいので高品位鉱になる。しかし、日本のはすべて産量が少ないのでそれほどでも。c
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Bornite 画幅1.5cm
ポイント画像 兵庫県大屋町 左右6.5cm |
27◆キュマンジェ石 微細とはこういうもの
CumengeiteのほかCumengiteという綴りもあり,これがキュマンジェ石となる?ようだ。石友のおかげで串本での新産鉱物としてかろうじて採取できたが、いつまで待っても日本産はネットにアップされないので恐る恐る自分のできの悪い画像をアップしておく。
このキュマンジェ石はもともと微細なサイズと発表されているが、まさにそのとおり私と機材の能力を超えているので不満な画像だ。ちなみに微小でも1mm以下が標準このままで済ませられない。
この鉱物のサイズは20ミクロン程度そして八面体になると聞いた。一見すれば皮膜状だが20×のルーペでよくよくみると、光の状態でガラス光沢と三角形の反射面がきらきらと多く見えるといった状態(マウスポイントにて、別画像拡大版あり)なのでもう少し大きいかなという気がする。そしてマウスポイント像でみてみれば何とか擬八面体に見える構造が観察できる。外国産キュマンジェ石は小さくてもかなり高価らしいが、これでも仮にサイズが1mm程度ならきれいな結晶のオンパレードである。この画像のほとんどがキュマンジェ石とみられるが他の場所採取のを見せていただいたときは他の鉱物も同居していた。
PbとCuの塩基性塩化物なのでハロゲン化鉱物のグループだが、例えばアタカマ石(前ページに)とは共存してはいない。現地は海岸で、塩分の影響があるような場所だったが極々限られた場所しか産出しなかった。o |

Cumengeite 0.02mm以上 別画像とも
和歌山県東牟婁郡串本町 |
28◆ガドリン石 ガドリンは、希土類研究者
三重県四日市市でのガドリン石<Gadrinite>。耳にすることはあってもこの鉱物の産出は少ない。化学式からすれば希土類(REE),Fe,Beのケイ酸塩という構成でありREEのところに入るのはCeとかYとかが割合多い。このREEはレアアースのことでもともと性質が似すぎて単分離しにくい元素のグループとして知られる。これが放射性元素の場合はハロを生じたりして見つかりやすいが、ガドリン石自体も痛めつけられ、結晶の形そのものが崩れてきたりする。その含有率が小さいときは結晶の外形がしっかりしてくる。このようなことはおおむね産地ごとの性質だろう。
菰野町の温泉近くのガドリン石(上画像)はごく狭い範囲だけの産出だったが、微粒の石榴石、黒雲母、紅柱石,それにエシキン石などの放射性鉱物に伴ってほんの少しだけ産出した。そのころはここでのガドリン石の産出が報告されておらずモナズ石(1ページ)の項でふれていた。ガラス光沢のある濃緑色の自形結晶が硬い母岩の中から顔を出したときはびっくりした。ガラスのようにデリケートだったが、化石成形の時の化石クリーニングの要領で表出することができた。今までも化石クリーニングのノウハウによって本来の姿を現したデリケートな標本ははかにも結構ある。
下画像の現場は、同じ四日市市内のマメドチ谷という石英を主とした少しペグマタイトの混じる急峻な谷あいにて。ここでも暗緑色の結晶はすべて母岩に埋没した状態で産出し、母岩よりも脆く破断面での産出がほとんどだ(凡そ1cm以下)。しかし稀には運よく面の揃った結晶が見られるが、殆どが小さいもの。
ここのは眼が悪い人、現場で曇っている、結晶が微小だ、とかになると緻密に積層した黒雲母がほんとうにガドリン石に見えてしまうのは難点。ガドリン石とは破断面の見え方が違うとはわかっているのにだ。暗緑色の色合いも目安でありおおきくなると黒にしか見えないのもあるのだ(画像も光沢面のある暗緑色だが、黒く見える)。
予想どうりエシキン石と違って放射線測定器にはあまり反応しない。g
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三重県四日市市菰野町湯の山 2〜3mm

三重県四日市市水菰野町水沢 8mm |
29◆Y−ラブドフェン おまけがいいようで
佐賀県唐津市域内には希土類元素(REE)が埋蔵の可能性との指摘があるようだ。画像のは玄海町産の頑火輝石<Enstatite>とY-ラブドフェン<Rhabdofane-(Y)>の組み合わせでいいだろう。そのラブドフェンとは、希土類のリン酸塩に当たるものの総称である。
玄海町にも玄武岩の分布は普通にみられるがその一角にある玄武岩のさらにスポット的な部分にだけ多く産するらしく、少し離れたところではまったく見られないか、あっても分析しないと他の希土類元素かもしれないということだ。つまり熟知した方の案内がないとこれは無理だったと思う。
さらに、大きさが1〜3μ前後と小さすぎて、個々の結晶(六方晶系)の判別は、まったくできない。その集合体がルーペで見えるだけだ。
ただ、右画像のように玄武岩の晶洞部には頑火輝石の半透明な結晶がみられ(これだけでもそれなりの標本)、この輝石の一部がスリガラス状になったところがあり、その上に白粒が見られ、これがY−ラブドフェンということで分りやすい。画像では確認しがたいが厚みが小さく半透明な白粒もある。
もうひとつ、記録では黄色を帯びた白色〜薄茶あたりの色合いとあるが、小さすぎて厚みが足りないので本来の色は出にくいようだ。その上ここでは白粒のクリストバライトもあるということだ。その点も含め熟知した石友に案内していただいた。そうでなければ生きつけなかっただろう。ありがたいとしか言いようがない。(感謝)×2である。
画像は少し見た感じの違う2枚を用意したが、少しは参考になるだろう。i |

Rhabdofhane-(Y)とEnstatite(スリガラス状)2mm以下
マウスポイントではやや透明な結晶の上の
Y-ラブドフェン 佐賀県唐津市玄海町 |
30 ◆水晶(3) 変りもん水晶×3
岐阜県美濃福岡の山中深くには珪石の採石場跡があった。見栄えしない水晶ばかりだった印象。で残っている一個がこれ(上画像)。「変な?でもたぶん水晶だろうな
」と採集したものを画像にしてみた。おおむね四角形の珍奇なキャラメルのような水晶<Quartz>である。いったいどうなっているか。よーく眺め回したら。
柱面は少ししか発達せず、水晶の六ヶ所の錐面の傾斜(屋根の勾配)がゆるく6つの錐面のうち3〜4面は発達しているがあとの面がなかなか分らない(痕跡程度に退化していた)。それに加え頂点は中心軸から極端に片よった両錐の水晶であることが分った。なんとも珍しい形の水晶だ。今まで数え切れないほどの水晶を見たが四角ぽい水晶はこれだけだ。上画像をマウスポイントすると逆さまでの画像になる。
次の中画像は甲武信鉱山産出の曲り水晶(三日月水晶)で、両錐でもある(Wポイント)曲がり水晶である。大きさは10cmを超えている。採集して25年以上経過したが、今もってこんな3拍子揃ったのは見たことがない。結晶成長が休止したのち少し角度を変えて再成長した”くの字型水晶?”。これが普通に曲がり水晶として出まわる不思議だが、逆に言うと中画像のような真の曲がりは少ないということか。
最後のひとつはねじれ水晶(下画像)である。まれには水晶の柱面の部分が紐をひねったようにねじれたようなものを見ることがあったが、殆どはねじれているのでなく、隣り合う柱面が曲線を描いているようにみえても、直線の組み合わせで曲線になっている。ねじれ水晶ならば隣り合う柱面の境が滑らかな曲線を描いてねじれているのだ。
実物ではすぐわかるが、画像では想像力を働かせないとわかりにくくなってしまった。この水晶はねじれ水晶ではあるが、裏側は不坦平になっているので、
たぶん斜長石母体の表面で成長したのだろう。
これまでの3つのタイプの水晶の成因については、聞いても調べても納得できるようなものはないので気になっている。関心ある人いませんか。 |

Quartz 岐阜県中津川市福岡植苗木2.1cm
Quartz長野県南佐久郡川上村川端下10.7cm
中津川市蛭川東山4.2cm
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31◆水晶(4) 黄・赤の水晶
奈良県五代松鉱山のレモン水晶である(上右画像)。少しだけ関わることができたから良かったものの、ほんの一時的に出て、話題になりかけたらすぐ終わった。貴石に相当するシトリンとまでは言えないだろうなと思っていたが、誰がネーミングしたか普及したのか、レモン水晶という愛称がいつのまにかできた。どんな愛称でも水晶<Quartz>は水晶である。水晶の表面だけが黄色を帯びていることならよくあるが、こちら色が淡いがそれでも内部からの発色が見られる。ただしここでも表面だけ黄色水晶のものもあった。それでも国産の黄水晶の他産地を聞かないのでレアなのだろう。ここのレモン水晶の発色の原因は角閃石とあったが、どんな角閃石で黄色になるのだろうか? 下画像のように中心部に硫黄(だといわれる)が黄色の芯として突き通っているのが見える(例えると鉛筆と芯の関係のようだ)。
上中画像は同じ旧五代松鉱山に産出した赤水晶である。初めて見たわけではないが、いきなりの産出であった。もちろん二個目を求め現場付近をくまなく捜したが、おしまいだった。なんとも不思議な気分。五代松での産出はその後も聞かない(ここは立ち入り制限されたと聞く。荒れた様子もなく何か問題があったのだろうか)。
昔25年以上前のこと、滋賀県の〇〇さんの家で赤水晶を見せてもらったことがあるが、滋賀県北部の、鉱山ではないところから少しだけ出たものでそれは立派なものだった(今考えると表面だけが赤というものだったかは不明)。産出はこれも少なすぎて同じく産地とまでもいえない程度の規模だった。
産地と呼べるものもある(今はどうか?)。サイズは小さいものが多いが、水晶好きの人には |