アトリエの
鉱物・化石



福島 紫水晶左右17cm
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  鉱物編は鉱物アルバムの追記が主目的でしたが今は補筆や、鉱物の想いでが多くなりました。深刻なのはパソコン側のアップデートに伴い使用中のソフトの機能が次第にマヒしてきたことで、回避するのに手間がかかる。 自然が語りかけることなら好きなので化石、鉱物、地形などクロスオーバーで興味があります。
 中身の変なところはあるかもしれません。その連絡はメール
鉱物化石アルバムボタンにアドレスあり)で気軽にご指摘ください。

         
                  
(タイトル) 
   3ページより→1ウルツ鉱→2ベルチェ鉱→3ダンブリ石T→4黄銅鉱→5黄鉄鉱→6緑閃石→7斧石→8スズ石板チタン石10トパーズ(黄玉)W11ベリル(緑柱石)T12鉄黄安華→13チロル銅鉱→14,15方解石→16ダンブリ石(U)→17満バンザクロ石(T)→18鉄バンザクロ石→19苗木石→20トール石→21ベリルU(石)→22コウルス沸石→23黒鉛(石墨)→24辰砂→25自然テルル26肥前石→27ロスコー雲母→28日本式双晶U→29日本式双晶V→30クロム苦土鉱→31炭酸青針銅鉱→32剥沸石→33輝水鉛鉱→34レビ沸石→35マンガンパイロスマライト→36頑火輝石→37赤鉄鉱→38磁鉄鉱→39珪乳石→40鉄電気石(U)41鉄電気石(V)→42紅柱石(U)→43珪線石→44藍晶石→45灰鉄輝石→46ゲルスドルフ鉱→47紅簾石→48・クリストバル石→49.重晶石50あられ石(2)  下記のうち鉱山はほとんどが操業終了。
アマチュアがとり上げるトピックであり信頼度100%ではありえません。間違いも多々あるかと思うので、いろいろあれば、ぜひぜひ"鉱物・化石アルバム"か、"リンク;アトリエぶどり"からのメール等で指摘いただければ幸いです。
  
                       1 ウルツ鉱      あのころだから

 宮城県細倉鉱山産の銀灰色のウルツ鉱<Wurtzite>(繊維亜鉛鉱)。画像のウルツ鉱は、白色の蛍石脈(紫色の蛍光示す)中に黄鉄鉱−方鉛鉱−黄銅鉱などと共に縞状構造を成すものでハイレベルの標本だと思う。浅熱水鉱床部からのもののようだ。ウルツ鉱の結晶は判然としないことが多いが、六方錐状または六角板状(六方晶系)になるようだが、それらは粒状に見えるようだ。化学式はZnSで閃亜鉛鉱(等軸晶系)と同じ。繊維状の亜鉛はウルツ鉱を含むことが多く繊維亜鉛鉱というが、表面部は腎臓状にも見える。年月をかけて閃亜鉛鉱へ変化してゆく。
 色は閃亜鉛鉱と同じで通常の金属のような色から、赤、黄色など含有成分比率によって変わる。海外産には透き通るような赤い色のものも見られる。ウルツ鉱はまとまって産出することはなく産出は稀とされている。 
 日本の大小鉱山の多くが休山、閉山というころ(昭和60年)に細倉鉱山に訪れた。当初思っていたより大きな鉱山だったが、最盛期(昭和20年代)の1/4ほどの従業員数になっていたようで景気の動向の影響をもろに受けていた。ここは岐阜の神岡鉱山のような亜鉛、鉛、銅タイプの鉱山で精鉱、精錬での硫黄を利用しての硫酸製造もやっていたはず。
 国内鉱業の抱える問題は資源の枯渇、金属とその製品の需給変化、安価な輸入鉱石。求められる公害防止事業、割高になった人件費。など対応困難なことが多く衰退していった。
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栗原市鶯沢町 ウルツ鉱Wurtzite画幅17p
ウルツ鉱
                                                  2 ベルチェ鉱              

 上画像は岐阜県金華鉱山のベルチェ鉱<Erthierite>(輝安鉱のSbの一部がFeになっている)。斜方晶系で通常は細柱状〜針状で輝安鉱(小さなもの)とベルチェ鉱は共存することもあり性質も似かよっている。また、毛状になることがあり、このときはブーランジェ鉱や毛鉱とも外見が似ているが産出状況、共存鉱物をみることで察しが付きそう。 
 輝安鉱(有名な市ノ川鉱山)しか知らないときに初めて兵庫県の中瀬鉱山でベルチェ鉱(下画像)を得たころは、この二つが判別しづらい鉱物とは思いもしなかった。
 輝安鉱(2p-44,45)とベルチェ鉱では、Feのせいでごく弱い磁力があることを利用するとか。それは”言うは易く行うは難し”的な作業。これは希土類磁石でなんとかわかる程度である。それでベルチェ鉱の結晶を取り出し、希土類磁石一個を細い糸に吊るし近づけるとくっつくという程度。鉱石に希土類磁石をそっと近づけたくらいでは紛らわしい。
 ベルチェ鉱は大きくならない。柔らかさはないので細くても結晶は曲がらない。風化でメタリックな青色や赤といった虹色の錆色を生じる。そして変化しない部分との間でまだらになるが、最後は黒っぽくなる。いっぽう輝安鉱のほうは明るい銀白色を結構保っていて変化しにくいようだが、変化するなら全体が暗くなるとか黄色ぽさをまとう。しかし、輝安鉱も副成分で少しだけFeを含むものとかあれば色変化がある可能性があるので、境目がはっきりしているわけではない。
 それから同様なもので比較してみるとベルチェ鉱は輝安鉱ほどの柔らかさはないようだ。
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加茂郡白川町 ベルチェ鉱Erthierite 1mm前後
ベルチェ鉱
兵庫県養父郡関宮町 max6mm
ベルチェ鉱
               3 ダンブリ石(T)あのころだから

 宮崎県土呂久鉱山のダンブリ石<Danburite>である。今は土呂久鉱山ではまともなダンブリ石の産出は無理と聞くが、北にそびえる祖母山の周辺、例えば北側の尾平鉱山の数か所には今でも少しは見られる模様。
  たまたま置いてあったスポーツ紙でダンビュライトという競争馬の名前が大きく出ていた。鉱物のダンブリ石を知っている馬主、まさか?「へー! 滅多にないというダンブリ石にあやかったのだろうか」。しかし、Danburiteの綴りからはどう読んでもダンブライトである。ダンビュライトというのは??。鉱物以外の何かかもしれない。
 土呂久は亜ヒ酸製造による住民被害のため大きな問題になり、早くから公害防止工事が行われていたところ。関係のないダンブリ石も坑口もろとも埋まっている。
 訪問計画を立てたのは昔のことで頼りになる情報はほとんどなく、当時見ることができたのはH社の図鑑だけでバイブルのような存在だった。少ない情報をかき集め、繋ぎ合わせての成り行き旅行したが、当時は初めてのところばかりで思い通りに進まず苦労の連続。まだ訪れる人は限られていたころだと思う。ダンブリ石はトパーズに似ているはずという気持ちがあったので、いろいろな産状でも迷うことはなかった。それから何度か訪れたが、今回このコラムのために画像標本を改めて見ると、これほどのものを得たことが信じられない(ほとんど当時を忘れている)ほど満足。その後の土呂久は訪問しても他の鉱物の探査だけになった。
 昭和の初めころ、トパーズに似るがヘキカイが弱いダンブリ石は、屈折率が高いので透明な部分をカットすればダイヤモンドの代わりにできたとされる。上画像の標本ならそれに耐えるような気もする。トパーズはいくつもあったので試みた(3p-46)。ダンブリ石でも見たい気がするが、手持ちは少ないので止める。誰か作ってないかなあ。
 ダンブリ石は柱面に条線があり色は無〜白色。ガラス光沢のもの。長柱状になりやすい。斜方柱状結晶は硬度が高いこともあってトパーズに似ている。が底面にヘキカイはなく産状は主にスカルンなので間違うことはない(上画像では底面の欠け方が違う)。
 下画像は群晶タイプ(ふたつ)ということと、不透明、玻璃長石のような光沢のもので淡灰色〜淡緑灰色。上画像のそれとはだいぶ趣の違ったものである。
 おなじく産出していた斧石と共にホウ素を含む鉱物であり、その資源として、斧石などと共に戦時中に利用していたという。だとすれば、ホウ素ガラスというのがあるので当時の飛行機の窓や風防ガラス部分だったのだろうか。
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西臼杵郡高千穂町ダンブリ石Danburite max2.4cm
ダンブリ石
同群晶 白色と灰色 左端結晶2.9cm
ダンブリ石
                                              4 黄銅鉱      あのころだから

 三重県は熊野市になる紀州鉱山の黄銅鉱<Chalcopyrite>である。鉱区は和歌山、三重、奈良の県境付近をまたがった域にあり、銅、亜鉛、鉛を主体に昭和初期に盛んに掘られた大きな鉱山で昭和53年に幕を閉じた。戦時中ころには強制連行の朝鮮人、捕虜のイギリス人とか過酷な採鉱作業のため命を落とした人がいるという話がある。それで調べていたら一部の他の鉱山でも似たような話があった。
 この黄銅鉱(CuFeS2)は白板鉱山(1P-50)の方鉛鉱のところで、画像と共に少し触れたことがある。
 銅の鉱石としては最も多く産出しやすいので多くの鉱山での重要な鉱物。真鍮黄〜黄銅色、多くは塊状になり結晶になることは少ない。正方晶系だが三角を組み合せたような四面体が基調。面の発達が様々で、双晶していることも多い。肉眼サイズなら判別にも問題ないが、最近のは微結晶〜塊状ばかりが多く、こうなると簡単ではない。塊状はまだいいが微晶が点在する鉱石となるとなおさらだ。カッターナイフでかすかに傷がつくのだが、これとて結晶が小さいときはルーペを片手にしないと見にくく、微晶になると無理。
 紀州鉱山を訪れたのは鉱物が好物になって少々熱心になってきたころだが、すでに鉱山は閉山していた。観光の瀞峡舟下りにかこつけて訪れている。見学してズリの場所を教えていただき、そこに行ったのは覚えている。しかし、昨年石友と久しぶりに訪問したのに、場所はさっぱり思い出せない。ここでの画像のようなリッチな画像標本を見ると、忘れないうちに再訪を果たしておけばよかったと思ったりもしたが、それも昔のこと。今は何とも思わない。
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熊野市紀和町板屋 黄銅鉱Chalcopyrite
1cm強 前後
黄銅鉱
                  黄鉄鉱            ちょっと怖かった抗内

 黄鉄鉱<Pyrite>(FeS2) は金属鉱山にみられ還元環境を示す鉱物だ。Feは4価イオンには通常成らないが、-S--S-が共有結合でつながっている。Feは2価なので黄鉄鉱は還元環境の産物だ。現場では出始めるとじゃかじゃか出るのでジャカとか言っていたそうである。用途はあってもあまりもうからないらしくズリに捨てられたり、美麗なものは鉱夫が持ちかえったり、一部が土産物屋に持ち込まれたりしていたとのこと。
 黄鉄鉱は黄銅鉱や閃亜鉛鉱も同時にでるような鉱山によく見られる。等軸晶系でサイコロのような六面体になることが一番多いが、その結晶の角を八面体で切ったような形、五角十二面体、それらの集合したような形を見る。色は真鍮色で、生成環境や錆び方によっては金色に近くみえ、黄銅鉱と違って、カッターナイフでは傷がつかないが、微結晶の散在(チップ)ではそれでも黄銅鉱、金、他の金属と迷うこと珍しくない。
 上画像は秋田県小坂鉱山産。ここは銅の大鉱山だった。今どき画像サイズの黄鉄鉱がズリに無事に残っていることはまずない。これは石友K氏からの恵与品。鉱夫が持っていた品とか、遺品整理とかで放出されたものだろうか。後生大事に囲い込んでいても、将来は散逸させられるか、適当に処分とか。さあどうなるものだろう。
 下画像は、飯豊鉱山からの黄鉄鉱。黄鉄鉱の中ではかなり大きいものが出るらしいと聞いていたので訪問した。もちろん石友の案内あればこそだった。ここは新潟県の赤谷鉱山のさらに奥地(東方)にある。訪れる必要のある人はほとんどいないし、現場へたどりつく道も定かではなくなってきている。
 坑口からは分岐の多い大きな坑内の奥深くたどってその一角にあったもので、施設の基礎は少し残っているが、よくもまあこんな奥地に鉱山がある。また、よくもまあ鉱物屋は石の探査で坑内を探し回ったもんだ。
 鉱石の殆どは上手に掘り抜いてあったようであまり見るべきものはない。ここでキャップランプの電池が切れるというハプニング。完全に暗くなったら予備ランプさえ取り出すのは大変になる。予備がなかったらどうなっていたやら。
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鹿角郡小坂町 黄鉄鉱Pyrite およそ1.2cm角
黄鉄鉱
新潟県新発田市加治川2.2cm角(右)〜3.5cm
黄鉄鉱
                                             (透)緑閃石               非翠

 愛媛県保土野周辺にみられた緑閃石<Actinolite>で、透閃石(白色繊維〜針状)の成分元素のうちMg部分がFeに置き換わると緑を帯びてくる。幅広繊維〜長板状になるものが普通。結晶は薄いので硬度からは信じられないほど結晶は脆い。透緑閃石ともいうこともあり画像はそれにあたり、五百津山周辺のものの中には美麗になるものがあり有名だ
 その緑閃石を普遍的に含むのに緑色片岩という変成岩があるが、緑色なだけに緑閃石に限らないものだ。さらに、FeがMgに対してモル比で半分を超すようになると鉄緑閃石とされ次第に暗い色が増していくようになる。
 ○○翡翠として流通している翡翠があるが、大抵はこの透緑閃石の超細かい結晶がたくさん絡み合って緑色の石になったもので通称で軟玉と呼ばれているものになる。やや暗さを持つ緑で比較的柔らかいので加工されて、翡翠製品になっている。これはこれでたいへん人気がある。
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新居浜市別子山Actinolite緑閃石左右8.5p
緑閃石
                                 斧石        石器時代の斧のよう

 大分県尾平鉱山からの斧石<AXinite>(鉄斧石)で、県の鉱物にも指定されている。尾平鉱山はいわずと知れた大鉱山で錫を含む主な金属の鉱石のほか、日本での産出例の少ない斧石がよく見られてホウ素資源として電気石とともに利用されていた。斧石はこの日本の中で大分県南部〜宮崎県北部に集中している。というが小さな規模をも含めれば日本各地にポツポツあると思う。それと全体に占めるB[ホウ素]のモル比率は斧石も電気石も小さいけど、うまく利用できたのかな?
 斧石はCaと(Mn,Fe)のBを含むケイ酸で、スカルンの鉱体に出るのが普通。画像のはFeが優勢なので鉄斧石になるが、Mnが多くなればマンガン斧石に移行してゆき、色も橙色化していく(チンゼン斧石)。そういえばMnの鉱体に産出したのにマンガン斧石ではないということがあった。
 結晶は三斜晶系なので何となくとらえどころのない形だが、昔の斧を上向きに接近させて並べたような外見をしている。色は黒っぽいがよく見れば紫を帯びていて(褐紫色)さらに濃淡がある。結晶が薄いものでは光を透過する。比較的硬度も高い。
 結晶の状態の違う尾平鉱山の銀鋪、亜鉛ヒ、その間の道路切り通しと三か所もアップする。径11cm
e-i        4.1p単晶 c
斧石斧石   
豊後大野市緒方町 斧石Axinite
道路切通し  6cm半透明
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斧石


                                        8 スズ石                   鈴なりの錫ではない

 岐阜県遠ヶ根鉱山では、たまにスズ石<Cassiterite>が出ると言われていた。上画像のがそれ。結晶の見かけの形は様々でその一つのパターンだ。他の石には薄い結晶が透明な褐色になっているのもあった。これは黒色。石英脈に伴って産出している。 鉱山のメインは気成鉱床の砒化物、タングステン化合物(大谷鉱山でも見られた)でズリや施設跡も残っているが、遠ヶ根鉱山には訪れる人が少ない(不毛のズリとの噂も)。ここの鉱物はいろんな鉱物が混ざり合って判別しにくく、それぞれの特有な結晶が見づらいと思う。そんな事情なので遠方からだとパスしたくなるのも無理はないが、宝くじに当たる(1p-2)こともあるものだ。
 スズ石は、SnO2の組成で錫の重要鉱石(特に日本の場合)。少し褐色を帯びた黒の正方晶系というところが、なんだかベスブ石に似ている。他に黄錫鉱なども知られるが、黄錫鉱は元々産出そのものが少ないので採集チャンスも少ない。錫は明治〜昭和は需要が大きかったと見え、木浦鉱山とか、錫で有名な鉱山でもなかなか残りものに巡り合えないものだ。
 錫の用途としてはブリキ;例えば缶詰製造とか、割合低温で溶融することからハンダ付けのハンダ合金とか、硬貨の原料とか。 
 京都府の大谷鉱山のスズ石には正方晶系の結晶を残しているものも時折見られた(下左画像)。これは石英ペグマタイト脈の中に埋没していたものが、その石英の状態によって長年の風化でそれが分離してきたもの。通常はネズミの糞(判るかなあ)の程度に見えるが、運よく形の良い結晶がそのままに残るものがある。下の右画像は石英ペグマタイトのタイプではない錫の産出が見られる鉱山(生野鉱山の例)からのものは、微粒の錫石の集合体の例をみた。これには稀に黄錫鉱がついていることもある。あまり特徴もない赤褐色の集合体で条痕色も同じような色。今どきのズリではこの状態でも残っていればいいほうだ。さらに白っぽくなるものまである。

中津川市蛭川Cassiterite スズ石1.5mm
スズ石
スズ石 京都府亀岡市行者山Cassiterite9mm
スズ石
              兵庫県養父市大屋町
                  板チタン石        「やはりね」

 三重県の湯の山温泉の小さなペグマタイト脈の中からY−エシキン石(1p-46)が出ていたということで石友に案内いただくが狭い範囲の中、他にも目を引く鉱物が出たのでルチル(1p-39)、ガドリン石(2p-28)など断続的にH.P.アップしていた。
 一段落ついたところで保管している石の一つで気になっていた石があった。それは微小のエシキン石、微小の鉄バンザクロ石(4p-18)、そして大量の微小の金雲母に交じり一個だけ少し色と形の違う微小な赤い結晶を見出していた。エシキン石の成り立ちからしてチタン鉱物があってもいい。そしてすでにルチルが出ていたので鋭錐石か板チタン石がある可能性も少しある。それで、その石を持って聞いたら「金雲母の反射光だろう」と言われ「やはりね」と放置。
 最近、石友がまったく別の場所で鋭錐石と板チタン石<Blookite>を採集済みと聞き、例の石を持ち込んだところ、「これ板チタン石だよ」とされ「やはりね」。チタン3兄弟(Tio2)のうちもっとも出現率の低いという板チタン石(原画では条線かすか)。
 鉄(V)を含むとされ、斜方板状を基本とする透明感のある結晶。もともと小さな鉱物だけど、やはり小さい。撮影のために改めて小石の中での場所を特定しようとして数分もかかり、家まで持ち帰るときに結晶が外れたのかと思ったくらい雲母だらけ。
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四日市市菰野町Blookite板チタン石1mm以下
板チタン石
           10 トパーズ(W)  黄赤色=インペリアル

 岐阜県恵比寿鉱山製のトパーズ(黄玉)<Topaz>になる。斜方晶系。ハロゲンのフッ素を含むを含むAlのケイ酸塩で気成鉱床にでやすい。磨いてルースにするときは柱面に直角の劈開がでやすいので注意が必要。
 幼少のかすかな記憶に、確かゑびす電球かエビス電球とかいう電球があったような気がする。鉱山ズリに鉄重石が残っているので、そのころタングステンを採ったはずだ。あと輝水鉛鉱も少し。ところどころグライゼン化していて、その系統のトパズがこれになる。
 昔は1.5〜1cmの無色透明な短柱状結晶が拾えたが今はなかなか拾えません。と昔の案内書シリーズにあったが、ずいぶん後のことながら画像のようにもう少し大きいのもひょっこり出ることはあるわけだ。最近は別の工業所として使われていた事務施設はかろうじて残っているが、鉱山の面影はほとんどなくなり、時の経過とともにズリは直接見えなくなり向かいの山に築かれた階段状の石組みも全く見えない。人もほとんど訪れなくなった。
 なおトパーズに黄玉という和名があるのを知っている人は、石にあまり関心がなければそういないはずだが、それでもトパーズを見たら「黄色ではないの?」と聞かれる。
褐色、ピンク、黄色もあるが、無色(ゴシェナイト)でも質がよければ宝石だ。
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岐阜県中津川市蛭川 Topaz max 2.5cm
トパーズ
トパーズ 黄玉
                                          11 ベリル T    Beは取扱注意

 岐阜県蛭川の採石場に出た花崗岩の晶洞に見られたベリル<Beryl>。産出地はトパーズよりさらに偏在する傾向がある。花崗岩採石場で見たのは小さな晶洞にひしめくように出るもの(上画像)。 
 そんな晶洞を、そっくり確保しようとして現場で割ろうとしても晶洞から先に壊れる。晶洞を含む母岩がただの一撃でうまく割り採れるような状態にはまずない。上画像のようなものでもまさに運次第。後になって、蝕像の激しいようなベリルのときは他の珍しいBe鉱物を見ることがあるものだと聞いた。情熱と努力と縁があれば採れるかも。

 福岡鉱山はタングステンの鉱山で戦時中からはベリルを資源としたそうな。扱い注意のBe鉱物を戦時中の技術で処理できたということか。現場は多くは風化変質した花崗岩〜花崗閃緑岩とその他のようで、ベリルの付いた母岩をみてもどうなっているのかよくわからなかった。数十年前の初めての訪問時は、狭い貯鉱場らしきところで汚れた石英の表面に極細透明針状のベリル(だそうだ)を得た。
 「いや、まだあるぞ」・・とかで話に火が付いたのはそれからしばらくして。今度はズリの位置が移動するほど掘り返され、今は取りつくされ現場はすっかり落ち着きを取り戻している(中画像)。ところで坑道の中で無茶して採集していた人が動けなくなったという話があったのをきいたことがある。 
 
 蛭川の一角での花崗岩採石場の晶洞タイプのベリルで、やや大きいものは内部の傷が見えてくる。(下画像)。こういう場合母岩との接触部が残っていないので何となく不思議な気がしていた。一方上画像の晶洞性のトパーズでは、母岩表面から成長し始めているように見える。 採石場が徐々に閉鎖していたころ、現場監督の話を聞いたが、日本ではより安い輸入もの石材使用が増えコスト圧に耐え切れないとのことだった。今もって石は十分あるが削岩機やショベルカーの独特な音は聞こえない。地場産業が衰退し今時に尋ねても見る影もない。

 ベリルは六方晶系に属し頭は蝕像でとろけたようなのが殆どだが、残っていれば卓面のみか、それに目立たないほどの錐面が加わる(見た範囲で)。
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                          中津川市蛭川 1.9cm
中津川市蛭川Beryl 緑柱石2.2cm 
ベリル 緑柱石

岐阜県中津川市福岡町 max3.9cm
ベリル 緑柱石
ベリル 緑柱石
                                   12 鉄黄安華                 守り神

 ?で放置していたが岐阜県金加鉱山の鉄黄安華(トリプヒ石)<Tripuhyite>でよさそう。黄〜黄褐色の色合いで正方晶系。FeSbO4の化学式で示される。輝安鉱の変質では黄安華がよく知られているが、それなら鉄黄安華はFeの入っているベルチェ鉱(斜方晶系)の変化だないうのは考えとしてはわかりやすいが、あくまでも予想。この鉱物は50年ほど前に発表されているが、その文を見るとここでは似た可能性のある黄安華(等軸晶系、通常粉末で仮晶をなすことが多い)はここのは白または、薄いクリーム色の皮膜状または結晶とのこと。そして本標本は少し褐色を帯びた黄色である。生成条件はそう厳しくなさそうなので、新産地が出てもおかしくないが、ただし既に分かっている鉱物だろうとされてしまうだろう。
 画像のガマの中の黄色のところがそうだが、見ていたら先の話とは反対に輝安鉱が元鉱物のような気がしてきた。現場では輝安鉱もベルチェ鉱も混じってでる。
 民家のすぐ際から、道なきがれ場を登ったところには旧抗がみられ、そこに蛇がいてこんなところで何を餌にしてるかと思ったが、ついにわかった。きっと蛇は金加の守り神だ。神ならエサはいらないから。はあ?
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加茂郡白川町 Tripuhyite鉄黄安華
鉄黄安華 トリプヒ石
                13 チロル銅鉱            特別なチロル

 チロル銅鉱<Tyrolite>は、ヨーロッパのチロル地方由来の親しみやすい名前だが、銅の二次鉱物の中でもなかなかのレアもの。組成式はCaCu5(Aso4)2(CO3)(OH)4・6H20というのが標準的。CaとCuの砒酸基、炭酸基、水酸基の含水化合物になり複雑なので、チロル銅鉱が生じるためのハードルはすこし高そう。産地は(木浦、喜多平、三盛、金城)あたりで現在は産出を絶っているところもあり、また各地での産出そのものも稀だ。 
 チロル銅鉱は青〜緑系の斜方板状の結晶になるが、実際にはそれが方向を変えながら折り重なるとかペラペラに薄いままの状態が殆どで、真珠光沢を見せやすい。このため採取するときらきらと輝くものが多い。ちょうどブロシャン銅鉱を薄く切ったような色合いのもある。
 上画像は岐阜県金城鉱山のもので、ソラマメより大きい程度の褐鉄鉱で覆われた黄銅鉱の表面やその割れ目に生じていた。昔は全く取れなかったが、今は得ることができている。関連してチロル銅鉱のまともな結晶はないものと思い込んでいたが、よく見ればあるではないか。 さらにもう一枚。
画像をマウスポイントする(裏画像)。厚みのせいで真珠光沢はちょっと? 結晶サイズは1.5mmのきれいな結晶だ。
 下画像は奈良県三盛鉱山産出の母岩での産状を示す(アルバム本の再撮影)。上画像とは母岩がだいぶ違う。むしろ母岩はこちらの方が標準。今回再度撮影したのに、やはり、そのキラキラが災いして色映りが悪い。
 これを見つけたときそのキラキラして美しかったので石友もびっくりしていたが、それ以上に私は興奮した。以下は、第三者には大したことではないその理由。
 子供のころから小鳥を飼うのが好き。以前、家で目の中に入れても痛くないほどかわいがっていたインコの、その名前がチロルだったといえばそれだけのことだ。チロル銅鉱は私にとって絶対手に入れるべきロマンの鉱物と決めていた。早速チロルに見せたのは言うまでもない(反応?)。産地ではなかなか取れない。稀なので「もうだめか」と思っていた鉱物だ。
 後になって宮崎県の土呂久鉱山からもそれと思うものを得ているが、ここで出たという話は聞いていない。他のたとえば水亜鉛銅鉱とかとまちがわれている可能性もあり、日の目を見てないままの産地もあるかもだ。
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山県市美山町柿野Tyrolite 〜1mmチロル銅鉱
チロル銅鉱
奈良県御所市朝町 画幅3cm
チロル銅鉱
        14 方解石(カルサイト)Tありふれててもいい

 方解石はCaの炭酸塩CaCO3<Calsite>で鉱山に限らず割合いよく見られるのと、硬度は3と柔らかく傷つきやすいのとで、鉱物屋さんは軽んじる人が多いのは事実。おろそかに扱って持ち帰ると、すぐ傷ついてみっともなくなる。
 方解石は白い色を基調にしているが、微量の不純物でよく色がついている。冷希塩酸でよく発泡して溶けるが、塩酸に限らず希酸で充分だ。
 方解石は三方向に明瞭な劈開があるので細工は大変困難。しかし、良質の原石が慣れた職人の手にかかるといろいろなカットを施すことができるようで、それは宝石級の輝きを持つ(柔らかいので残念ながら観賞用で宝石にはならない)。
 方解石は石灰岩が熱源により変化してできるタイプ他があり、結晶粒が小さいときはキラキラとした大理石(正確には結晶質石灰岩)だが、大きくて単結晶状態のを方解石という。結局石灰岩≠大理石であり、大理石は商品名になる。
 岐阜県神岡鉱山は屈指の鉛・亜鉛を主とした鉱山(スカルン地帯が多い)だったが、方解石も有名のようだ。
 それで上画像に神岡;二十五山の方解石をアップする。ここのは図鑑でもよく紹介されているが確かにこれはこれで全体がきれいにまとまっている。釘頭状というようだが、今の時代の釘の頭の形と違うのを私はかろうじて知っているが、知らない人ばかりになっていると思う。勝手に表現をかえてもなあ。
 下画像は長野県甲武信鉱山の方解石で、ここのも大半は大きくても不透明なものばかりだったが、時おり割ると透明度のよい部分が出てくることがあるが通常小さくしか取れない。これもよいところを割り出したものだが、これはアイスランドスパー状態。割らなくてもこれに近い形状で見られることがあるが、意外に少なくて珍しいくらいだが、この菱形こそ方解石の一番単純な形。
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飛騨市神岡町Calsite方解石画幅15cm
方解石
長野県下佐久郡川上村2.5cm
方解石
     15 方解石(カルサイト)U                   石灰山から

 岐阜県金生山は方解石<Calsite>産地としても有名だった石灰岩の山。方解石の源にあたる石灰岩は、製鉄の過程で不純物を取り除くために、大量に投入されている。資源不足の日本でも石灰岩は大丈夫だろう。
 石灰岩に含まれるCaCO3が、CO2を含んだ雨水により少しづつ溶け出して下部にしみこんでゆく[Ca(HCO3)]‥水溶性。それで縦に延びた岩になりやすいし、地上では墓石群のような地形になる。地下では空洞を作りやすくなる。地下での状態にもよるが、その溶水は逆の反応を起こしてもとのCaCO3をゆっくりと形成してゆくことがある。これは洞内の鍾乳石。下画像は石灰岩採掘場の一部の岩の隙間に下がっていた鍾乳石(通常は微結晶)。長い年月をかけてやっと成長する鍾乳石ということもあって、それが売りの観光鍾乳洞では鍾乳石はすべて持ち出し禁止の模様。
 右上画像は鉄分を含む赤土泥状の詰まった晶洞よりでた犬牙状とされる形の方解石で、形状が別のタイプもある。単体ものでは5pサイズのもあった。
右下画像は方解石が菱面体に成長したもの。本来ならこのタイプが多くてもよさそう   
方解石 鍾乳石 
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岐阜県大垣市赤坂 Calsite方解石中2cm
方解石
右1.4cm
方解石
                                      16 ダンブリ石U    あのころだから

 ダンブリ石<Danburite>は九州の大分〜宮崎にまたがる山塊にのみ見られたが、宮崎県土呂久鉱山のダンブリ石(化学式はCaB2OSi2O7)は同じような場所からのものでも違った顔つきも見せる。短柱状透明なもの。長柱状で白い結晶の先端が透明なもの、表面が陶器や長石のような光沢をもつ結晶(画像の下)、表面が緑灰色になったもの(ダンブリ石Tの項)。数少ないのにいろいろあるもんだ。不純物を含むためだろうが、興味を持っても、関連資料はいまだ見当たらず。
 ダンブリ石は同じホウ素鉱物の斧石とよく共存(画像の上)しているが、斧石と違って産出は少なく、すでに土呂久鉱山の坑内由来の結晶は産出を絶っているようだ。ただ、この鉱山のところどころ斧石に伴う塊状のダンブリ石がものがあることに気が付くが、斧石も塊状であり目を引かないので、目が慣れてないと素通りする。また、周辺の他の鉱山でもやはり斧石や水晶を伴って散発的に出ているが大きなものではない。ただし、斧石の産出は日本の各所で見られるものなので、今後新しく見つかるのかもしれない。 
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西臼杵郡高千穂町Danburiteダンブリ石5.1cm
ダンブリ石
                                   17 満バンザクロ石(T) 土台の石として

 満バンザクロ石<Spessartine>[Mn3Al(SiO)3](スペッサルティン)は熱変成を受けたマンガン鉱床の、低品位鉱部分によく見られるので結構ズリに残っている。それが固いので家で石を割るときの土台にしていた、その土台の石もいつしか埋まり、それを堀り起こして割ったら満バンザクロ石がころり。成分の違いで他のザクロ石の色にも似ることがあるが、基本は黄燈色であとはマンガン鉱床かどうかで察しがつく。

 画像は三重県の真泥鉱山の満バンザクロ石で、これが典型的な色合いだ。ここでは満バンザクロ石自体はやや偏在するが珍しいほどではない。ただ、小さいものが殆ど。画像のは大きいほう。同じ母岩でも橙色ザクロに近接して見かけが灰バンザクロ石のような赤褐色のものがあったが、成分が少し違ってもそれでも同じものだろう。愛知県田口マンガン鉱山でも似たようなケースがあったので。
 近くでは、貝の化石や咽頭歯の化石の採れるところがある。鉱物を産するところの近くに化石産地があることは意外にないものだ。
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三重県伊賀市大山田 Spessartine 5.5mm
マンバンザクロ石
                                     18 鉄バンザクロ石    山の鬼がネット見る

 上の画像は茨城県山ノ尾の元鉱山か採石場の鉄バンザクロ石<Almandine>(アルマンディン)だ。ザクロ石(種類は何でも)は1月の誕生石。なのに日本では宝石相当クラスというのは、ないに等しい(だから宝石)。そのなかでも、遭遇したものの中ではここのものがポイントが高い。一般に鉄バンザクロ石は24面体が多くころりとした結晶形態を取り易いが、岩石からの分離は良いかどうかは別問題である。
 茨城県の山の尾では、鉄の含量も関わってるだろうが、そのままで赤くきれいな宝石タイプのザクロ石も出ているかもしれない。
 光を通さない黒色ザクロ石ももちろんあるが、中には赤っぽい光を放って見えるのもある。上画像のザクロ石は、選んだ一個の山の尾ザクロ石にわざと強い光をあててみたもので、透過した光はまさに赤色に見える。ここで
画像をポイントすると同じものを通常撮影したものになる。すべてではない。例えば黄褐色を帯びているものがあり透明感があっても赤くはならない。 
 山の尾探索はだいぶ以前のころで、花崗岩ペグマタイトだったと思うがここのはザクロ石が、細かい雲母に包まれているのをよく見た(下画像)。そのほかベリルがそばで産出するのも思わぬ珍しいことだった。
 他の地区の鉄バンザクロ石との違いは、微小なものを含めると多くのザクロ石が産出したわりには大きく成長したものはなさそうなこと。形は整っていたこと。これらは雲母や長石に包まれていてそれが生成時の周りからの圧力を和らげるため自形をとりやすかったり、ヒビが少ないという結果かもしれない。
 山の尾は遠方だったが二度行った記憶があり、もう一度くらいはと思ったが、さらなる新鮮味はないだろう、同じようなものだろう。として結局遠のく。
 そのうちトラブルのうわさを聞くと、ほどなく採集禁止のうわさ(事実に)に変ってゆく。特にキラキラ系鉱物にはこういうところがあちこちにみられる。産地はいったん禁止になると元に戻ることはほとんどないもの。これからという入門者のことを思えば残念だ。
桜川市真壁Almandine ザクロ石8mmに強い光
画像をポイントしたものは同一のザクロ石
鉄バンザクロ石
別画像  〜5mmまで  これも、ほの赤い
鉄バンザクロ石
                          19 苗木石   20 トール石   放射性鉱物

 上画像は岐阜県蛭川地方の苗木石<Naegite>である。中津川市苗木地方だけ限定というわけではなく苗木型花崗岩の分布する地域に時折見られるというわけ.
 この地域の川の中のトパーズをパンニングで探す人たちの中に重い鉱物としてたまに得られるとのこと。
 こちらは旧花崗岩採石場から得られたもので、奇跡的に母岩に埋もれず、母岩から浮き出た形でご対面となった。
 通常ジルコンは、Zr(ジルコニウム)のケイ酸塩。苗木石はそれが放射性元素を幾種か含むジルコンの変種とされている。ジルコンが四角の錐面体が多いのに比べ苗木石はジルコンと同様の正方晶系でC軸方向が延びた短柱〜長柱状になることが多い。これらの集積したものが摩耗した形で川の中から得られるようだ。母岩に入る場合は肉眼サイズになったもので、周りに放射性元素によるハロが生じているものが目につきやすい。
 画像の苗木石は褐色から黒色(緑味を帯びるのもある)。希土類を多く含むケイ酸塩である。普通の状態とはちがって結晶のメタミクト化(自己破壊による)が進んでいないものなので、結晶の形がかえってはっきり残っている。これの母岩に蛍石を含むためでもある。ちなみにこれは測定器で見たら自然界の1.7倍ほどの線の強さしかなかった。
 下の画像は追加したトール石で産出は岩手県宮守鉱山(Y氏恵与品)。これも苗木石と近い鉱物でこちらはUやThを含むケイ酸塩。正方晶形という結晶の雰囲気も似ていてペグマタイト系に産しやすい(ここでは石英の上に乗る)。通常はやや強い放射能を放つとされるが、これも結晶は一個だけだしメタミクト化が小さく形がややしっかりしているので大した線量ではなかった。
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中津川市蛭川 Naegite 苗木石4mm
苗木石
岩手県遠野市上宮守 Thoriteトール石2mm
トール石
                                 21 ベリルU        緑柱石は緑にもなる

 ベリル<Beryl>(緑柱石)の産出は殆ど花崗岩ペグマタイト系、また関連する熱水鉱床由来の石英脈に産出するが、そうそうはない。軽いBe鉱物は石切場の比較的上部に出やすい傾向がある。よって、切り進むと見かけなくなってくるが、その石切場自体店じまいのところが多くなっている。
 最近ある化石の友がこれ何ですかと持ち込んできたのが、私が数十年前に訪れた佐賀県杉山鉱山のベリルとそっくりで、並べても区別がつかないほど。聞けば産出は未確認の三重県四日市市の川。鉱物から転向したという化石屋さんに聞きただそうとしたが相手もやはり数十年前の採集物ということで、川のどの付近かを聞いても自信はないという。少しだけの手掛かりで見当をつけて鉱物の友の2人で尋ね捜し歩いたが匂いはするものの結局挫折した。結局、いただいたものが手元にはある。
 ベリル(緑柱石)はレアメタルとされるBeとAlのケイ酸塩で六方晶系。硬度はかなり大きいもののヒビが入りやすい鉱物で、例のエメラルドも樹脂を浸潤させることもあるという。色は透明、青、緑色。出現は稀なものの、いざ見つかれば傍にもいくらか見つかる。
 なかでアクアマリンとよばれる宝石レベルは、傷がなく透明感を持つ部分が多いものが必須。日本ではワンランク落ちるものなら少しある程度。ちなみにエメラルドレベルは…まったくない。
 上画像のベリルは古くから知られていた、その杉山のもの(今はゴルフ場化)。地元不案内で自信のないまま心細いほどの山の踏み分け道をたどると石英片が突然に現れた。思えば昔は誰も欲張らず必要な分だけ採っていたような気がする。下画像は蛭川地方の和田川沿い石切場の小さな晶洞から産出したベリル。ゴマ粒サイズの不明鉱物を伴う小さな形の悪い水晶と共に、黄色の粘土に包まれていたもの。他に大きいものがでたが、整理箱の片隅にあったこれが今回画像にするまで、こんなにきれいなものとは思わなかった。
 水晶などと同じように大きくなるにつれダメージを受ける率が大きくなり、大きくてしかもきれいなものはごく一部で、指輪にできるほどならそれが宝石級というやつだ。
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佐賀県佐賀市富士町Beryl緑柱石真ん中1cm
ベリル 緑柱石
岐阜県中津川市蛭川 緑柱石1.5cm
ベリル 緑柱石
                          22 コウルス沸石     インフルエンザウイルス

 長崎県の番岳麓のコウルス沸石<Cowlesite>(単斜晶系)である。島といっても今は海上橋で陸地とつながっている。たまたま現地では産出ポイントも母岩の状態も知らず、さらに雨模様の海岸に降りたってから1〜2時間で退散したが、それでもあった。ということは稀な沸石とされるが、それは産地が少ない(島根県隠岐の島も知られている)という意味あいなのだろう。ちなみに市販の鉱物図鑑では、コウルス沸石は取り上げられてはいない。
 この地域の玄武岩には空隙が見られ、いくらでも出る菱沸石と共に入っていた小さな沸石だったが単独も晶洞内にもあるようだ。サイズが小さいので少ししかない場合や、菱沸石の陰に隠れていたりすると見つかりにくい。
 丸くて少しイガイガの沸石で、そういった外観は他所のも画像と同じようなものだ。これを見て連想したのは、細胞壁に吸着したインフルエンザウイルス。これがしぶとくて石を小割するときの振動でも外れない。ウイルスと同じだ。画像で一緒に見える大きな鉱物が菱沸石。
 いつのころからか「金と時間と苦労してこんなもの」「将来どうする」という言葉がどんどん重くなる。採集できてもできなくても有意義な時間で後悔はないので、いっそ、行って採れないほうがいいのかもと思ったりする。
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北松浦郡生月島Cowlesite1mmコウルス沸石沸石 コウルス沸石
                 23 石墨                 黒鉛

 愛知県の春日井市の土取場で小さな水晶(米水晶)が出ることが昔から知られていた。子供たちやその家族を連れて出かけたことがあったが、初めての水晶を見つけ始めるとどんなに小さくても歓声が上がっていた。
 休憩中におにぎりを食べながら拾い上げたのが画像の黒鉛<Graphite>。こんなところでこんな形でまさかと思ったが、紙にこすりつけると簡単に鉛筆のような線が描ける。
 私の初めての購入鉱物はダイヤモンド(八面体)だ。理由は[黒鉛とダイヤモンドは
*同素体]だからということだった。このころから黒鉛を得ようと思いながらそのままで、4Bの鉛筆の芯で代用していた(4Bとても混合物だ)。
 「黒鉛なんぞその気になれば」と思いながら今まで何も得られてなかったもの。無視してはいなかったが以外に手に入らない。六方晶系でハチの巣構造が平たく積み重なるが、六角形に結晶しているわけでもきれいでもないので、たぶん鉱物趣味の人の興味をそそらないような地味な鉱物だ。
 昔から鉛筆や乾電池など利用されていたが、今はアレンジして炭素繊維他、高機能で脚光を浴びている。
  
*親戚みたいなもの;同じ一種の元素でできている物質どうしで結晶構造が違う。b-i
春日井市高蔵寺 黒鉛Graphite 6.4cm
石墨 黒鉛
                24 辰砂                  丹

 黒辰砂(3P-29)の次のはずが・・。上画像は北海道旭鉱山の紅の沢の辰砂である。採集は20年以上前のはず。常呂川のどこかわかりにくい沢にある小さな露頭で、熊はいなかったがちょっといやだなというところだった。
 辰砂<Cinnabar>の化学式はHgSで六方晶系になるが、六角板状にというよりは擬立方体や八面体に近く見える。ちなみに高温相側の同質異像の黒辰砂は等軸晶系だ。
 水銀はたいした技術力なしに鉱石から金を取り出すのに古くから使われていたので、国によっては河川が汚染されていることが現代でも続いているのをTVで放映していた(下流で水俣病が出ているだろ)。アマルガムを作りやすいことを利用して同じ考え方で金属に対する金メッキの手法にも利用されていた。毒性は当時からなんとなくでも知られていたはずだ。辰砂の赤色は高貴な色ということですりつぶして顔料として利用もされていたという。ただ、辰砂は自然界で水に溶けず存在しているので辰砂を触るくらいならなんともない。硫化物なのでHgとして取り出すのは容易で昔から利用されていた。思い出しても消毒薬の赤チン、虫歯の詰め物、体温計、朱肉などかなり身近に。
 しかし今の研究では有機水銀だけでなく、吸収率の低いとされる無機水銀が体に影響を及ぼす可能性についても知られるようになってきた。
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網走市置戸町Cinnnabar 辰砂max3mm辰砂
                                      25 自然テルル           結晶?

 自然テルル<Tellrium>が見られたのは種々の鉱物を産することで知られる札幌市の手稲鉱山や下田市の河津鉱山くらいのもの。上画像は手稲鉱山に行った石友からの恵与品(もうほとんど残ってないのだとか)。ここは結晶がみえていることが多いらしい。気になって画像標本を拡大撮影してみたら、長柱の結晶というよりヘキカイ面の集まりに見える。六方晶系の結晶のはずだがそこまでよくわからない。
 次に下画像は静岡県河津鉱山産。通常は微粒が集合した時の独特な灰黒〜藍黒色のスポットあるいは縞模様になっている。結晶は微小なうえ稀であり、相当に運がいいと六角形の柱状(断面が正六角形とは限らない)になるものがあるということだ。
 どうせならと、キラキラしている部分の多い石をピックして超拡大してみた。そしたら画像の下端(白矢印で示す)には結晶がちらほら見えるではないか。これがテルルの結晶だろうか。こちら無理やり拡大なのでキチンと判断できないものの、柱状結晶がいくつか見える。これも自然テルルなのだろうか。
 自然テルル(Te)自体は稀だが、少し似ている Bi(ビスマス)とは仲良しで何種類ものTe-Bi系鉱物を作っていて、こちらのほうが自然テルルより多くみられる。この二つの標本産地の自然テルルも恐らくTe-Bi系の鉱物を伴っているだろう。光を反射するところなどはそっち系によく似ている。大体のTe-Bi系は六方晶系なのにそれらしい形を見せるのをあまり見ないというのは共通している。

他に自然テルルは自然金と仲良しでこれを含むことがあるというが、自然テルルの方が金より産地は圧倒的に少なく珍しいので金の発見に実用的とは言えない。
 テルルの用途は金属への添加で、その性質を補強・強化している。DVDなどの記録媒体としての利用のほか、周期表での位置が半金属の性質の場所なので、半導体として利用されてるかもしれない。それでか太陽光パネルの膜材料にも使われていた(今はどうだろう)。
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札幌市手稲区 Tellrium自然テルル 拡大
自然テルル
下田市蓮台寺 Tellrium自然テルル 超拡大
自然テルル
                26 肥前石        あえて肉眼鑑定

 佐賀県唐津市の世界新産鉱物の肥前石<Hizenite>(今はkanaということで)である。なにしろ所持する人、情報、資料すべてがレア。「肥前石にかかわった人物以外は肉眼鑑定は無理」とそのお知り合いがのたもうた。
 肥前石は、CaとYの炭酸塩で、25〜60μほどのサイズの白〜透明の鱗片状(フレーク)とされ、それが絹糸光沢になっている。化学式のよく似たものにテンゲル石(繊維被膜状)とロッカ石(斜方薄板状結晶)があり、福島県の水晶山にもこの二つについては産出しているのを画像で見たが、どうもこのふたつではないようだ。
 さて画像の結晶のサイズはまさにその大きさのもので、全体が白くみえる画像の左上には共存しやすいロッカ石と思しき結晶が見えていて、その他部分はふわふわキラキラしたフレーク状結晶の集合体となっているようにみえる。。
 採集当日、現場付近の説明で「肥前石は到底無理とは思うが・・・爪で簡単に傷がつくくらい柔らかい」と聞いたのを思い出したので、家に戻って「もしやこれか」と思って爪で触ると抵抗なくそのまま凹んでしまった。もっともロッカ石もかなり柔らかいということをずいぶん後で聞いた。 肥前石は運次第で得られるようなものでないと分かっているが、これは特徴はどれもが一致している。ロッカ石でなさそうなので肥前石だと思うがいいのでしょうかね。
 小さいので分析すればコストかかるうえにすべて失う可能性がある。が、このままではいつまでもこのまま。ここにアップすれば"肥前石を少しでも知る人からの意見を仰ぐことができるかも”ということで切り替えた。
 肥前石について、情報や肯定否定の立場からのコンタクトを取ってほしいです。その際連絡はリンク(アルバムのトップへ)からお願いします。es
唐津市満越 Hizenite肥前石
肥前石
             27 ロスコ―雲母      えっ!どこ?どれ?

 群馬県茂倉沢のロスコ―雲母<Roscoerite>になる。この鉱山は変成を受けたマンガン鉱床となっている。小さな鉱山の割に種々の鉱物を産することで有名だ(だったかな)。ちっぽけな鉱物のために狭い範囲にたくさんの人が訪れていたから、行った時はすでに、マンガン焼けの黒い石自体が少ない。ハンマーをふるう機会が少ないといえばわかりやすいか。石そのものが持ち去られたり、長年にわたる沢水の力ですでに流されてしまったとか、そんなところだろう。でももっと早くに訪れておくべきだったとかは考えない。女々しいに通じる。それよりは縁がなかったなと考える。
 雲母といえども(ヴァナジウム)を含むタイプはそうそうあるものではない。バラ輝石、菱マンガン、石英あたりに紛れてごくわずか入っている。ペラペラで色は濃緑〜暗緑色をしている。画像は拡大と光を当てているため緑の色が映えるが実際はもっと小さく黒ずんで地味で見過ごしそうなので注意。この鉱物は同じように産出の少ないV(ヴァナジン)を含む鉱物の鈴木石、長島石などと共に有名だ。
 今後は遠方からマンガンの石が少なくなったこの茂倉沢に坊主覚悟で訪れるのはちょっとした覚悟がいるなあ。
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群馬県桐生市菱 Roscoeriteロスコー雲母
ロスコー雲母
                   28 水晶(日本式双晶U)      昔話 ロック オン

 1ページ以来の日本式双晶(ハート水晶,双子水晶)だ。日本式双晶(T)では御託を並べたような内容なので、趣を変えてここでは過去に尋ねた有名産地での出来事の思い出&こぼれ話。
 山梨県乙女鉱山は昔から有名だった。学生時代のころの石友が、町から鉱山に向かう出荷用トラックに乗せてもらって現役時代の乙女鉱山を往復したという話を聞き、ロマンを感じたもの。私はここの双晶は大きなのを持っていて、差渡しが約14cmもある。しかし、冊子アルバムでは画像化は控えた。それは・・・双晶にたいして申し訳ない思いがあったから。
 昔々、一人で乙女を尋ねたら現場もずっと一人きり、少し怖いし心細くもあった。昼下がりになって運よく水晶帯を見つけロックオン。水晶を引きずり出していたが、そのうちに長く並んだ水晶が見えてきた。最初は丁寧に掘っていたが、帰る時間も迫ったのでまずは・・ということでそのうちの一本をガバッと掘り起こしたらこれが二つの水晶ではなかった。母岩付きツインだったのだ。母岩部分は気が付いたらすでに残骸。双晶も傷ついて変な形。・・・・・その日以後乙女の双晶にはまったく縁がなくなってしまった。そんないわくつきの双晶が(上画像)。乙女鉱山は現在は立ち入り禁止になっているとのこと。
 長野県大深山鉱山は、昔、石友クリスタルマンにお連れいただき入抗した。本来は亜鉛や、鉛の鉱山らしいが、現地に残るズリをしばらく見た限りそんな風には見えなかった。坑内での危険は感じないが、今回の水晶脈が固いのとハンマーを上向けて振り回すのと、薄い硫酸の水滴?(タンバンがあったのと酸味あり)らしいのが落ちてくるのとで結構大変。液が目に入ると危ないとかいうので閉口した(閉眼はできない)。当然苦労したがサンプルは得られた(下画像)。画像エリア内には5個(1個見にくいけど)
、母岩全体で10個前後とてんこ盛りである。大深山の採集者が水晶がメインなので年々状況が悪くなり今は、一見すると脈が終わって白い骨組みのように残っていると聞いた。景色もかわっているだろうし、もう行くことも無理やろう。
 
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山梨市牧丘町 14cm(差渡し)日本式双晶
日本式双晶
長野県南下佐久郡川上村 max 2.4cm(同)
日本式双晶
        29 水晶(日本式双晶V)  ロック アウト

 昔々は川端下の水晶山と言っていたはずで、そこへは川端下側からの登りが常だった。山の反対側からは甲武信鉱山と言っていたようで、いつのころからか川端下の水晶とは聞かなくなった。川端下山では水晶に伴って日本式双晶という双子水晶が出るのだそうな。
 甲武信鉱山は水晶類で有名だがスカルンの山で金(1P-4)も産出した。しかし、水晶モードでは金にはお目にはかかれない。山のあちこちに坑口がある。場所がら武田信玄の金山というのは本当だろう。こんな標高の高い所からどうやって鉱石を下したか思うが、上の方は大正〜昭和とか別の時代の開発ではないか。
 多人数で川端下から初めて入ったが、小さなトラックがギリギリ走る程度の道が途中まで残っていて所々が崩壊しかけていた。中途からはかすかな踏み跡をたどる初級者には大変な行程。それゆえ期待したが、そのころでもズリでは水晶は大きいが不透明でビンタ切れが大半。双晶はわずか一人だけが得ている。そのころは初心者であり、水晶以外もすべてが、他では見られないスケールにびっくりしたものだ。
 ずいぶん後になるが尾根に近い坑口になぜか男女4人で入坑。坑内では最初からビンタ切れはやはりあるものの錐面ありも多い。うち二人は、坑内のかなり危ない場所で交代しながらそれぞれ水晶や双子水晶を得る。水分で濡れた双晶は坑内のヘッドランプではきれいだったが明るい日差しの下で見直すと「やっぱりね」(上画像)。
 さらに昔のこと、日本の西の果てに近い長崎県奈留島。ここは荒井由実がかかわった学校の高校の校歌の島ということでも知られるようだ。そのころよりまだ前。
 奈留島は遠い遠い場所。島の民宿では遠くからの珍しい客で歓迎を受け「どうぞ頑張って水晶採ってらっしゃい」現地に着いたら、いくらでもある水晶に歓迎され30分ほどで引き揚げた。・・・嘘のような話。ただ、昔は自分の必要なぶんで「OK」というスタイルだった。 いつのころからか、今は島の人だれもが知るほどの立ち入り禁止になってしまったそうで(たぶん顰蹙をかう)。クリスタルロック(水晶)は立ち入り禁止となる例がかなり多いがここもロックアウト。
 家ができたり崖が吹き付けられたりで止む無いこともある。これまで水晶のトピックを何度か取り上げてきたがどれも昔の話ばかりだ。最近の様子を聞くと水晶は産地締め出しの比率が多いように思う。この流れはまずい。そうでない所に集中して、ますます悪い。
 ハート水晶ともいう。ハ−トが心臓の形のデフォルメだとしても全然似てないが、世界中に広まっている。誰が提案した?。
cs,j                                           
南佐久郡川上村 7.7cm(差渡し)日本色双晶
日本式双晶
長崎県五島市奈留町  2.5cm(同)
日本式双晶
                  30クロム苦土鉱        クロム鉱

 大分県若山鉱山のクロム苦土鉱<Magnesiochromite>になる。この鉱山ルートは迷いやすいところ、主にニッケル鉱物の産出で知られていたところだ。上画像の鉱物は最初Ni−スクテルド鉱ということになっていたが、検討の結果クロム苦土鉱となった。
 通常のクロム苦土鉱は、クロム鉄鉱のFeのところがMgに置き換わった形をしていて、両方とも同じような場所で産出し固溶体になる。したがって弱い磁性があることもある。いわゆるスピネルタイプの結晶をしているというがクロム鉄鉱と同じく、粒状どまりでまともな結晶になっているものはほとんどお目にかかることがない代物である。ところが若山鉱山では産状がだいぶ違っているためか結晶になっている。そして、うんがよければ欠けてない八面体のスピネル型結晶が確認できる。若山鉱山は針ニッケル鉱(1P-15)の結晶で有名だったところだが、少し場所が違う。晶洞タイプではなく欠損も多いが運がいいだけではなさそう。珍しさではクロム苦土鉱結晶の方が針ニッケル結晶よりも上だろう。
 下画像クロム鉄鉱の通常のものが出てきたので参考までにこの場でアップ(愛媛県保土野)。クロム鉄鉱は、クロムの鉱石として最重要なものだ。基本的にはMgがFeの大きく置き換わった形。もって重く感じる。
 過去にはただ一度だけ、「珍しいぞ」ということでクロム鉄鉱の結晶つきを見せてもらった。そのころは経験も知識も少なかったため、も一度見てみたい。
 Cr(クロム)は特にステンレス、それからクロムメッキほか用途は多いが6価クロムの毒性が知られるようになってから、用途によっては使用が制限されている。これも微量なら土中の微生物によって、3価のクロムに変えられるが、人工的に吐き出されればカバーできないことはもちろんだ。
 ところでクロム鉄鉱もクロム苦土鉱も、黄色の薬品のクロム酸カリウムと同じくCrは6価になる。強固に化学結合しているために水にも溶けず、大丈夫なのだろう。
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豊後大野市三重町Magnesiochromite
クロム苦土鉱、
クロム苦土鉱
クロム鉄鉱 愛媛県新居浜市保土野
クロム鉄鉱
               31炭酸青針銅鉱      美しい結晶

 新潟県三川鉱山からの炭酸青針銅鉱<Carbonatecyanotrichite>である。1mm程度までの毛玉のような青さの際立つ美しい鉱物だ。初訪問までの当時のポケット版図鑑には載っていなかったが(昔は肉眼サイズの鉱物が主な対象だったので図鑑にはミニサイズの二次鉱物は少しだけ)、昔から判っていた鉱物のようだ。三川鉱山は区域がいくつかあり、金属鉱物と共にいろいろな二次鉱物の結晶、めのう、水晶、紫水晶まで見られた。
 次に訪れたときは早朝に現場付近で熊を見たという話を聞く(黒っぽいやつというが?)。もう現場の色つき石は急に減っていた。それでも、いつかもう一度訪問しようと思っているうちに年月が過ぎ、ゲートができて遮断されたそうだ。・・「マナーだけの問題ではなさそう」。
 成り立ちは炭酸基と硫酸基をもつアルミと銅の化合物になる。毛玉のような球顆針状とか菊花状になって出てくるが、画像をよく見ると針状ではなくて長板状(斜方晶系)が中心から伸びて集まり全体として球状に見える。に近い。上画像は"まりも"を青くしたような結晶とその断面を見せる結晶。外周は目の覚めるような青さだが、その結晶の断面は真っ青ではなくグラーデーションっぽくなる。結晶成長に伴う銅イオン濃度が違うのだろう。
 この球顆状鉱石の周辺にあとからハンマーなどでショックを与えたくらいでは菊花状にならない。また、菊花状で出る多くの場合は母岩から直接菊花状に花開いているというタイプのものばかり。色合いも薄く水色を帯びる。なので、球顆の割れたものとは空隙の状態、母液の条件とかで結晶成長状況が違うものだろう。炭酸青針銅鉱の実物をよく知らないままでの石友との初訪問で、先客の関東方面の詳しそうな方に石を見てもらうと「これがそれだよ」とのことで感慨もひとしおだった。現場はサルの威嚇がうるさかった。 
上画像をマウスでポイントする裏画像は、その菊花のような水色を帯びた結晶で、まさか水亜鉛銅鉱の結晶(肝心の針の先端がこの撮影レベルでは不明)か?。けど、この周りには水亜鉛銅鉱は見当たらない。 それに有名な中国産のものではこれと似た"イガグリ"を青くしたような炭酸青針銅鉱がある。
 下画像
は、標本撮影時に見つかったイガグリのようなタイプでそれなら、と他も探したがそうあるものではなかった。このタイプの中国産が入ってきてるが日本では稀なのだろう。また改めて下画像の鉱物を見ていると、サイズはさらに小さいが福岡県産の新鉱物の宗像石(ムナカタセキ;1P-54)によく似ている。そちらはセレン酸塩なのでまさか関係あるとは思えないのだが似たものがある。
 炭酸青針銅鉱の炭酸塩の割合の少ないものを青針銅鉱というが、分析の必要なことだそうで、手に負えない。ちなみに三川鉱山では多くは炭酸青針銅鉱とのこと。ここは炭酸塩も硫酸塩も多い。
 この鉱物の英名の種名にシアノが入っているが、青酸イオンCNは含まれない。おそらく鉄イオンの検出でできるプルシャンブル―液の色に似ているからだろう。
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新潟県東蒲原郡三川村Carbonatecyanotrichite 径1mm〜 毛玉状
マウスポイン炭酸青針銅鉱 菊花状径1mm超
炭酸青針銅鉱 青針銅鉱
 放射球顆状 炭酸青針銅鉱  他に孔雀石と藍銅鉱
炭酸青針銅鉱 青針銅鉱
                32剥沸石             長封筒

 剥沸石<Epistilbite>は希少でもないが産出の少ない沸石で、普通の沸石がそうであるように無〜白色のガラス光沢である。単斜晶系だが双晶するのが多くその形態の一つに縦長封筒を膨らましたような形になることがあり、封筒の折り返し部分に相当する三角形が目立つ。おかげでそうでないタイプの時はこの沸石とは気づきにくい。
 へき開が一方向に顕著ということで剥沸石と言うのかもしれないがその方向の加減で、たとえ封筒が立っているような不安定そうな形の結晶でも、剥沸石の場合は岩石整形時のかなりの衝撃に耐えることができる。
 沸石の化学式はたとえ種類が違ってもわずかづつしか変わらない。例えば近い仲間では結晶水の部分の違いだけだが有名な湯河原沸石がある。
 画像の剥沸石は稼働していたころの愛媛県槙野川地区産出で休山している。初めてこの沸石を見たのは新潟県の黒岩というところだったが、7年ほどに前に石友を案内して行ったつもりが採石場は閉鎖されていて自然に帰りつつあった。一般に採石場は石が固いところを選ぶことが多くいったん休山すると、人力では手も足も出ないケースが多くなる。
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上浮穴郡久万町Epistilbite 剥沸石4mm程度
剥沸石
                                       33輝水鉛鉱          六角もある

 国内有数の産出量を誇った岐阜県平瀬鉱山の輝水鉛鉱<Morybdenite>MoS2である。柔らかく銀灰色だが、わずかに青みを帯びていて時間がたつと少し色が暗くなってくる。石墨のように紙にこすると黒ずんでよく滑る面になる。その性質を利用して潤滑用オイルの添加に用いられたり、それとCr-Mo鋼材としてドリルとか硬い金属に加工されたりしている。
 輝水鉛鉱Morybdeniteは、通常は葉片状結晶の集合体が多いが六方晶系なので、中には六角板状、あるいはそれが重なって六方柱状にみえたりするのもある。画像のは六角板状タイプの集合体が目立つが、このようなものはそうそうは見つからない。もし見つかった時には不用意にくるんでしまうと結晶がよじれて丸まったりするのでちょっと注意を要する。
 その
画像をマウスポイントする裏画像では、すべて葉片状のもので左に並べた結晶片は重なるものでじつは厚みがある。画像のうち右端は産状の違うものとして並べた。右端は同県蛭川地方の花崗岩ペグマタイト中の輝水鉛鉱でペラペラに薄い。産出は各地の花崗岩ペグマタイトではやや稀。
 平瀬鉱山の坑口の前に大きく広がっていたズリは、大したものもなくなったのか訪れる人も少なくなり今は、草木におおわれ気味になっている。蛭川の採石場も現在はほとんど閉山して、ブルやユンボなど機械力がない状態になり大石を相手に手も足も出なくなっている。
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大野郡白川村 Morybdenite 8mm以上
画像ポイント同産地 左側max6cm
 輝水鉛鉱  右端のみ中津川市蛭川
輝水鉛鉱
                                         34レビ沸石          六角は普通

 国内では産出の少ないレビ沸石<Levyne>とされるが、経験上、玄武岩中に産出しやすいようなのでそれは日本海側や太平洋側には見られる可能性が大きそう。実際に確認できたのもこ山口県の川尻含め、いずれも日本海に近い方の数カ所だ。
 すぐ前の
33輝水鉛鉱と同じく六方晶系だが、こちらは普通に六角板状になりやすい(所によっては不透明、六角厚板状とかもある)。
。レビ沸石は1〜2cm前後の小さなガマ(晶洞)にひしめきあって、多くはガマの中央部に向かうか不定方向の集合体になる。無色・白色でガラス光沢の六角板が立ち上がっているのがわかる。ヘキカイはないようで、大きな石を小割するときもレビ沸石は壊れないでよく残る。もし、これら一つ一つの結晶が大きければかなり見栄えするものだ。
 同じ石の中では他の種類の沸石ともよく共存するが、同じガマでの共存はしにくいようだ。エリオン沸石との共存は見たが、そのほかの沸石との直接共存はあるにしても見てない。
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長門市油谷町 Levyneレビ沸石 ガマ径8mm
レビ沸石
                    35パイロスマライト(Mn)  六角はさらに稀

 栃木県の足尾でマンガン鉱物のでる久良沢鉱山のマンガンパイロスマライトになる。MnのいくばくかはFeと置き換わり、応じてその色も変わる。久良沢鉱山ではたくさん出た過去があったそうだが今は全然そんなことはないはず。あとから近くの鷹ノ巣鉱山にも出ることが判ったが、どちらにしても世界的にも珍しい鉱物とされる。
 現場でもかなり少ないMn-パイロスマライト<Pyrosmarite-(Mn)>の特徴は六角板状結晶(重なると短柱状にも)だとインプットして捜すとすれば、現場では絶望的。画像のような分かりやすいものは超ラッキーで、まずないと思って探したほうが良い。完全な一方向のヘキ開面を持ち、その面が雲母のような光沢を見せることが目当てにできるが、石の割れ方にもよる。画像右下端のようなくすんだ赤色からピンク色を帯びたものは、見慣れないと塊状のバラ輝石と取り違いそうで「こんなのはどこにでもある」と言いたくなる程。
 バラ輝石に似た色と33の輝水鉛鉱のような薄板の重なり方で、六角形の一部のようなところが見えることがある。かなり風化しやすくてそのときは黄褐色系統に退色してくるなど一応の目安になるが、それはFeがおおいのかもしれない。ただ黄褐色といえば満バンザクロ石もあるので形が違うが一応注意。
 百聞は一見に如かず、良品でなくてもサンプルさえ持ち込めば何となくその雰囲気が判ってくる。
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日光市足尾町 Pyrosmarite-(Mn)
中央ので1.5mm  奥に少し大きな雲母のような光沢面あり マンガンパイロスマライト
マンガンパイロスマライト
                                36頑火輝石             火に強い

 頑火輝石<Enstatite>は中〜塩基性岩に含まれるむしろ造岩鉱物だが、時には目立つこともある。その一つが画像の岩手県道又で針状の集合した放射状結晶の状態で見られる。その放射状結晶のサイズはけっこう大きく、割れた断面が花びら状に見えたりして母岩(変蛇紋岩系統のようだ)とのコントラストがよいものは過去に菊寿石と称された。輝石の中では斜方晶系のタイプで、Mg>Feのケイ酸塩になる。この標本は石友からの恵与品。
 その菊寿石という愛称から岐阜県美山町産の石を思い出す。こちらは頑火輝石ではなく灰鉄輝石という違いはあるが、同じように菊寿石といわれ過去に水石として好まれた。頑火輝石とは火に対して頑固つまり耐火性があるということだが、鉱物レベルなのでその用途に供されているとは思えない。
 
画像をポイントしたほうの裏画像の方は日の出松の頑火輝石で、こちらは小さなものだがガマの中に発達するので、すっきりしたきれいな結晶。斜方晶系もうなずけるがその見かけが道又のと全く異なっていて同じ種類と思えない。ちなみに新産鉱物のY-ラブドフェン(2P-29)で使った画像を流用した。e
下閉伊郡川井村 Enstatite 頑火輝石径2cm
画像ポイントは佐賀県東松浦郡玄海町
頑火輝石
                   37赤鉄鉱        当然赤もある

 岩手県下和賀仙人鉱山の赤鉄鉱<Hematite>。この鉱山の主要鉱石で、他からの鉄鉱石と合わせて処理していたと聞く。鉄鉱石として最も有用な一つでいろいろな産出状態があり、赤っぽい土状にもなる。それなのか海外のでかい鉱山が赤っぽく染まる写真を見たことがる。
 条痕色は赤褐色で、そのためか鉱石の一部にベンガラ色がみられることがある。また、六角板状に発達していて金属光沢部で反射するものもあり、鏡鉄鉱ともいわれる。結晶が小さいときは雲母状になりそれはキラキラと見える。花弁状になることもあり、画像
マウスでポイントしたものは何となく
その例である。
 鉄を含む鉱物種はいくらでもあるが、日本では赤鉄鉱をメインとする産地は少ないので外さないが、どうも鉱物マニアには人気がないようだ。その人の好みだからとはいえ、「赤鉄鉱かあ」となる。見栄えの良い鏡鉄鉱の立派なヘキカイ片だったらそうならない。
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岩手県西和賀町 Hematite左右7cm
画像ポイントは岐阜県飛騨市神岡鉱山約3o
赤鉄鉱
                 38磁鉄鉱             砂鉄遊び

 岡山県の三宝鉱山の磁鉄鉱<Magnetite>になる(画像)。磁鉄鉱の鉱石は鉄くぎを吸いつける程の磁力を持つものが一部にあるが、通常はそれほどではなく磁石に吸い寄せられる程度だ。
今でも磁石をもって砂場で遊ぶのかな。子供だけでなく、ある程度分っているはずの大人でも、集めた砂鉄のくずが磁石に反応して整列して動く微妙な動きは興味深いもの。磁鉄鉱は造岩鉱物にもよく含まれていて、いろいろなタイプの鉱床に出現する。この成分の多い地帯では方位磁石がおかしくなるほど。
 触れなかったが上の赤鉄鉱はFe2O3になる。磁鉄鉱と共にいずれも優良な鉄鉱石である。磁鉄鉱はFe3O4なのでFeの酸化数の違うものが共存。つまり、FeO・Fe2O3と考える。
 ネット検索すればどうしても見栄えするような結晶鉱物ばかりに偏るが、国内での磁鉄鉱産地は多いといっても典型的なよくわかる結晶ばかりではない。等軸晶系で八面体やら十二面体の結晶が見えなくても黒っぽく重く感じる石とか磁石を持っていれば一応わかる(結構強く引き付ける)。今は荒れた産地が多いけど、産出しやすい鉱物で有用で量も多いのでぜひ持っておきたい鉱物だと思う。
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高梁市川上町Magnetite 磁鉄鉱Max1.2cm
磁鉄鉱
                                            39珪乳石          面白 淡白石

 石川県本村の珪乳石である。この地区にはおびただしい珪藻化石が見られ、これがオパールの不純鉱物の珪乳石のもとになっている。この珪乳石の形は不定形だが、形の面白いものがあり"仏石"とか、"こぶり石"とかいわれ黒塗りの台石に載せて土産になっていたそうだ。
 そういうのは鉱物好きオンリーには興味はないかもしれない。ここの何気ない珪乳石だが採集者の観たて方しだいで、ちょっとありがたい(楽しめる)ユーモアのある石になり捨てがたくなるというもの。こういうのは水石の世界に通じるものがありそれは心の余裕だ。
 表面に出た珪乳石を拾うだけなので、少し前に拾われていたら例えばひとシーズンくらいはおしまい。そういう意味では訪問採集にはリスクがある。どこか人の知らない産地を新しく探し当てたほうがましになる。
 画像は真ん中配置が"仏さん"。上から”お魚”"マリア像"”オウム””犬””猿”という自分なりの観たて。想像力を働かせばいいわけで画像の他でもある。だけど、これまでに暇なときに眺めまわしたのは1000個を軽く超える。自然はそんなに人間の思い通りの形になるもんじゃない。
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石川県珠洲市本村
珪乳石 こぶり石 仏石
               40鉄電気石(U)   昔はBの資源だった

 宮崎県鹿川と長野県向方で見られた鉄電気石<Schorl>である。電気石は手に入れたい気になれば困難ではないが、選ばれて持ち込まれた海外産の美品に比べれば見劣りするもの。それでもたまに気に入る品だってある。そんな、行かなければわからないあやふやさがかえって採集の魅力。なお、トピックは1P-40に続いて2回目。
 宮崎県の鹿川地方は不便なところだったような気がするが、ペグマタイト産地として有名だった。現場は離れているが、放射状になった電気石があり昔からサントルマリンという素敵な愛称がついていた。そういえばタイプは少し違うが、大分の尾平鉱山にも少し小さめの同様なものがあった。別にこのような形状は特別ではないと思うのだが、この地域を離れてはそうそう見ていない。多いのは少し膨れた三角柱のような形状だが、細柱を束ねたルーズな六角柱状は、ままある。
 上画像一つ一つはつまようじみたいな結晶で、やや照りがあり一本の長さは3cm〜だが、他には6cm〜におよぶものもある。通常の花崗岩ペグマタイトに直接出る場合は、針状のが密集して出たが、鹿川の現場では石英あるいは長石の上に晶出していた。それとここのズリ?はホウ素資源目的ではないようだが、すでにサントルマリンとよべるものは少なかった。
 下画像ずんぐりして見えるがこれは撮影角度のため。 先輩に「工事に伴う電気石が今ならあるはずよ」と聞き、お出かけしたところは長野県向方で火成岩由来の石英脈みたいだ。鉄電気石は縦に条線があり、三角柱に近いような六角柱状。多少、表面から白雲母化し始めていたりする。
 その現場では紅柱石も出ていたのを見たが、当時は大きいだけの紅柱石よりは整った形になっている電気石を好んで選んだ。もともと少なく黒雲母の見える石英脈には見られない。再訪時に石友と行ったころにはもう採集困難箇所のみ残る状況だった。
 丈夫な太い石英脈から、硬くてもろい電気石を含んだままで取り出すのが困難。石の内部を透視することはできない(あたりまえ)。思ったより長いのがあり、画像にしてないが10cm〜20cmなど。母岩を大きく取るのは大変なので中途半端になる。
 電気石が殆ど見られなくなってから後に、紅柱石の産地として知られるようになった。(普通にあった紅柱石も、有名になったら最近は取り易いところは何も残っていない)。
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延岡市上鹿川 Schorl鉄電気石 左右12cm


長野県下伊那郡天龍村 Schorl 5.2cm
鉄電気石
               41鉄電気石(V)     そのまた昔

 その道の先輩より現場周辺の写真と共に、得意げに見せられた福島県石川町の鉄電気石<Schorl>。電気石というネーミングの不思議さもあってとっても魅力的だった。しかし、とっても遠い。それは昔のことで情報も少なく活動は非効率的で、近県だけでも踏査は精いっぱいのころ。ある程度まで行動範囲が広くなった数年後に福島含め訪問したが、やはりというか土地開発工事はほとんど終わっていたが、少しだけ地面の下に運が残っていた。
 上画像は12×20cm程の石英母岩に中に小さめの電気石の5個以上が端面もある状態で、埋まったもののうちの最大の一個。昔のことで大した道具も持たず母岩ごと拾う程度だが太いタイプもあった。石川地方のは母岩と電気石の間にわずかな隙間ができてるかのように分離が良い。母岩の石英も強靭ではなく、他ではありえないほど。
 鉄電気石の産状は割合広く、ペグマタイト、アプライト、スカルンにもみられる。花崗岩の中に入ってくることもあるがそれは結晶が脆く、割っても断面になりやすいもの。数少ないホウ素資源として利用されたこともあった。FeよりMgが多くなったものが苦土電気石でこの場合は、黒よりは色が薄い傾向がある。
 
下の画像は、後になって石友の案内で訪れた福島県のまだ都路村のころで私有の山だったような気がする。鉄電気石はマッチ棒のような見かけ。大きさもマッチ棒以下(六方晶系ゆえ形は違う)。殆ど分離状態で見られるという不思議な産状だった。そんな産状なら母岩はどうだったか‥今は、とっても気にするだろうが記録もない。
 石は指ではじけば音がするというしろもので、錐面はおおかたが蝕像?溶けたようになっていたが画像のように錐面があるものもわずかあった。整形の難しい電気石だが、福島県の電気石はなぜか扱いやすかった。
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石川郡石川町 Schorl鉄電気石 5.2cm
鉄電気石
福島県田村市都路町 鉄電気石  4cm前後
鉄電気石
                 42紅柱石(U)      変成指標(T)

 紅柱石<Andalusite>といえば真っ先に思い浮かぶのが京都府木屋産で、ここのは黒色片岩〜千枚岩のようなやや低変成度に見える母岩に形のよい紅柱石が母岩にくっきりと見えるというもので、表面は黒鉛をまとっているためかなんとなく黒ずんでいるが内部はピンク色に近い(画像)。少し離れた場所には火成岩が見られたが、ホルンフェルスでも生じる。
 紅柱石は斜方晶系で赤〜桃色系統もあるが幅があり、Feなどの不純物がまったくなければ白っぽいモノトーンの系統の色にもなる(2p-23)。ここのものは泥質岩由来のためか黒鉛を中心に含み、いわゆる空晶石と言える状態のものがある。種名の由来はスペインのアンダルシア地方か? それとここでは少ないが紅柱石以外に菫青石も混じってきている。
 この同質異像(三像)に珪線石や藍晶石がある。これら三種がペグマタイトに生じたものもあり、海外の例では、非常に少ないけれど貴石〜宝石クラスの透明度を持ったものさえあるのは驚きだ。
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相楽郡和束町 Andalusite紅柱石 4p程度
紅柱石
             43珪線石                変成指標(U)

 変成岩でみられやすいAlのケイ酸塩Al2SiO5は、圧力と温度による領域で安定して生じる鉱物が違う結晶系の違う紅柱石(2p-23,2p-42)、珪線石(2p-43)、藍晶石(2p-44)となる。例えば地下で広域変成岩ができる条件でおおざっぱには低温低圧では紅柱石、圧力が高いと藍晶石、温度も高いと珪線石<Sillimanite>とされるので生じる鉱物(群)から、おおざっぱではあるが母岩の地下での生成条件をある程度推定できる指標になることが知られている。ただ、産状はまだ変成岩のペグマタイト、火成岩の一部とかもある。
 3種のどれもが造岩鉱物のたぐいなので普遍的にありそうだが、日本では紅柱石はまだしも珪線石や藍晶石の採集は分布がひろい割には限られる。この両方は国内では地味で重要という鉱物。変成岩の話では知らないでは済ませない鉱物なので欠かせないが、こういうのは見た目重視の鉱物屋にはややスルーされると思う。。
 産出は多いはずでも全国的にはこれという産地が少ないが、四国地方には広域変成岩帯が目立つのか、これら3種のどれもが見られる。
 珪線石(画像)は斜方晶系。石友から案内された三重県の賀田の山のたぶん花崗斑岩採石場からで、ゼノリス(捕獲岩)のような状態で産出。外周の黒く変質した(石墨?)あり、灰白色のややルーズな結晶という状態だった。
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熊野市大泊地区Sillimanite珪線石2.5cm
珪線石

          44藍晶石               変成指標(V)

 もう一つの藍晶石<Kyanite>(画像)も造岩鉱物であるがこれも産出してくれる場所が少ない。石友と愛媛県に行く折にチャンスが訪れ鹿森に入った。それ以前にヒマラヤ土産になる藍晶石を持っていたので鹿森でも見つかると思ったが、実際河原で見れば似たような色・雰囲気の多量の大岩石ばかりで、その中の一部に目が慣れるまでたいへん。母岩の状態も結晶のレベルも違うサンプルは自分にはあまり役に立たないものだった。
 なお、これら3種には例外的にそれぞれ宝石クラスがあるなんて信じられないがある。
変成鉱物の生成環境の指標の一つとされる鉱物で、同質異像になるものが紅柱石(2p-23)やケイ線石になる。そのほかペグマタイトでも生じるとされるが、その場合でも変成岩中に生じるペグマタイトや、石英脈とかになるケースが多い。
 例えばここで
画像をマウスポイントした時の別画像鉱物(ネパール土産だった)がその、ペグマタイト由来のようで石英や黒雲母が目立つ。c
新居浜市鹿森Kyanite藍晶石9mmもう少し青い
藍晶石
マウスポイントしたものは、ネパール産
               45灰鉄輝石          スカルンとか

 岐阜県金城鉱山の上方にあり、ここの灰鉄輝石<Hedenbergite>は昔の鑑賞石ブームのころ菊寿石として採掘されていたとのこと。母岩中に扇状、放射花状に並んだ灰鉄輝石メインの石ころは見かけよりかなり重く感じる。中には時折方解石や水晶を噛んでいる。
 岐阜県神岡鉱山では、この灰鉄輝石を主にして鉱床を形成する地域がある(杢地鉱床)ほど大量に見られることもある鉱物なので、マニアには軽視される傾向にある。ところでここの一部に方鉛鉱などと共に紫石英を伴うものがあり、ごくまれにだけ紫水晶となったものが見られた。それが2P-34にアップした紫水晶で、これだけはまるで外国産みたいだった。
 灰鉄輝石の鉄は2価になっていて、褐緑〜黒色。産状はスカルンのことが多いが、限らず他もいろいろある。単斜晶系で通常は放射繊維状集合体になっているが、結晶になると通常は画像のような割りばしのような柱状になる。
 なお、標本は酸処理せずに削り出したので、色の微妙な違いもなく母岩と同じ風合いになっているはず。
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山県市美山町柿野 Hedenbergite灰鉄輝石
⇔6cm
灰鉄輝石
             46ゲルスドルフ鉱      硫砒ニッケル

 初産でもないがゲルスドルフ鉱<Gerssdorffite>の長野県金鶏鉱山産は珍しい。化学式はNiAsS。ただし石友ので少しピンクを帯びたのも見たので、もしかしてこれは輝コバルト鉱ではないかとは話し合っていた。
でNiはそこにCoが存在していれば、それと成分が置き換えられる。Coが多いものは色がやや赤みを帯びてきて輝コバルト鉱となる。石友とこの石を得ての帰りの車の中で八面体は見えないが「たぶん輝コバルト鉱だよね」としたほどで、色もかすかに赤みを帯び(てるかな)銀白色の質感も似ていた。両方とも同じ等軸晶系で、その結晶は8面体や5角12面体になりやすいところも似ている。金属光沢をもつが、表面が酸化により曇ってくるのも似ている。
金鶏鉱山ではわずか産出し、鈍いカドの多い塊状を示すものが多かったが、中にはズニ石のような形の結晶を示すもの(画像)があった。そして、わずかではあるが、金鶏鉱山での目的鉱石であった金を伴うようなものも見られた。
 ついでにFe,Co,Niは三つ組元素と言われ周期表で近い場所にあり、原子半径もあまり違いがなく、ふるまいを示す要素の酸化数も同じになる。NiのところがFeに変わったものは有名な硫砒鉄鉱になる。

茅野市金沢Gerssdorffite ゲルスドルフ鉱
八面体結晶1.2mm
ゲルスドルフ鉱
                                 47紅簾石          紅簾は赤いすだれ

 長崎県戸根鉱山の紅簾石<Piemontite>である。この鉱物は紅簾石片岩があるくらいなので、決して量的に少ないことはない。埼玉県の長瀞や、徳島県など四国の広域変成岩中のが有名になっている。造岩鉱物としての紅簾石のサイズは当然小さいものが多いが、Mnを含むことで色が赤味を帯びているので変成岩の中でもよく目立ち見栄えがするものになっている。他に熱水脈由来などの産状もあるので、産出は変成岩分布域に限らない。
 戸根鉱山は小さなマンガン鉱山でブラウン鉱結晶をはじめ、他にも珍し系の鉱物をいくつも産出していたところで、見たところでは結晶片岩系が目についた。 ここでは紅簾石はさほど珍しいものではない。立ち寄ったのは小雨の降る中のひとときだったがブラウン鉱より、注目されないがきれいな紅簾石のほうに目が行く。標本はそこかしこに散らばっていた石から選ぶ余裕ができたが紅簾石の中には大きな結晶やきれいなのがあり、それはそれでよし。
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西彼杵郡琴海町 Piemontite紅簾石2cm以下
マウスポイントでの左側結晶 1cm
紅簾石
               48クリストバル石    SiO2といっても

 長野県和田峠のクリストバル石<Cristobalite>(クリストバライト)でこの地域に広く産出していた黒曜岩(黒曜石は一般名)中に時おり含まれていた。
 流紋岩質の岩石の多いところでは、黒曜岩もよくある。そんな中でクリストバライトはSiO2画像のように灰白色球顆状になるケースが多いようだ。黒曜石はガラス質で、その割れ口の鋭さから屋の先の矢じりとして使われていたことがよく知られている。このガラス質は流紋岩質の岩石の一部が水中で急速に冷やされたもの。真っ黒な黒曜石と共にこのようなクリストバライトが球状またはレース状に入ったものも、磨いたものは一般には好まれるようだ。
 クリストバライトは水晶と同じ成分だが、生成温度圧力の違ういろいろなものが生じるそのうちの一つでいわゆる他形になる。高温水晶などもそう。ちなみに右水晶と左水晶はもっと細かいレベルのことで、化学的には光学異性体になる。 見てみるとクリストバライトがパラパラと入った水晶もありパワーストーンとして珍重されているようだ。
 ちなみに黒曜岩は化学組成は一定せずSiO2成分の多いものでいわゆる岩石になる。それで鉱物とはいえないことからして黒曜石というのは通称になる。
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小県郡長和町Cristobalite クリストバライト球顆9mm程度(球顆も見られる飛び出た跡穴も)
クリストバライト
            49重晶石                  胃検診

 重晶石<Barrite>はBaを含む鉱物の代表。昭和20〜30年代のころに北海道の勝山鉱山は有名だったようだ。ずいぶん以前になるが石友と二人で訪問した時にはもはや地形自体が変っていて、あきらめかけたところでやっと上画像の重晶石は得られた。
 Baは同じ2族のCaと置き換わることがありうる。砂漠のバラなんぞの例のように、これが石膏と似ることがある。
さらにイオン半径の近いSrやPbがあれば連続する。勝山鉱山の重晶石はその大きさと形の良さで有名なものだった。
 斜方晶系で、無〜白色系が多いが、無色でも微小でない限り大抵はどこか濁っている。さらに不純物によって褐、緑色だってありうる。また、勝山鉱山では弁当箱サイズみたいなのが出たとかは嘘みたいだが伝説的‥‥。その弁当箱の角が斜めに切れたような結晶になりやすい。まあ、一般に大きくなれば無色のものはないものだ。
 初めて重晶石を採集したのは下画像の宮城県の重晶石のほうで、現地近くの所有者を尋ねたら親切にも石膏の鉱山現場までお連れいただいた。現場は正に石膏の鉱山だが今になって思えば、これが重晶石なのではないか?と思うものもあった。それはかなりの昔のこと。知識も情報も少なく、採集できてもしばらくは半信半疑でラベルを付けられなかった。そのうち重晶石の結晶の形をしているが、名前の通り重晶石は重い石のはずなのでそこは違うだろうと考えていた。後になって母岩の状態によっていろいろあることが判った。下画像
マウスでポイントすると石川県小松市金平石川県の金平にあった小さな鉱山で、少し見かけの違ったタイプになる。このような重晶石ばかりの標本では持ってみると見かけによらず重いことが実感できる。初めて行ったときは簡単にいくつも採れたはずだったが、しばらくして石友を連れて行ったとき、ほとんどなくなっていたのには焦った。
     重晶石BaSO
4←硫酸バリウム→胃のX線造影剤
鉱物を直接利用しているかどうかは知らないが、このような関係が知られている。
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北海道檜山郡上ノ国町 Barrite重晶石
Barrite長径1.3p
重晶石
宮城県加美郡宮崎町 重晶石長径8mm
重晶石
マウスでポイント
                             50あられ石(U)       溶けないあられ

 三重県白木のあられ石<Aragonite>は、蛇紋岩の隙間に生成したものでこのケースでは方解石はあまり見られない。方解石(4p-14)と同じくCaCO3だが、方解石は六方晶系、あられ石は斜方晶系なので同質異像になる。生じる結晶の形は違うというものの結晶の形が変化に富むのであてにしないがいい気もする。ちなみに方解石は三方向にへき開があるが、あられ石は一方向だけ。また、あられ石自体珍しいものでもないが、方解石よりはぐんと出現が少ない。もちろん希酸に発泡して溶ける。あられ石は条件によってはあられのような丸粒になることもあるが、通常は針状〜柱状、しばしば双晶で六角柱になるものもある(2p-39に他の有名産地の例がある。それでも何となくスムーズな六角ではない)。
 アルチニ石(2p-24)も透明〜白色系で蛇紋岩には出るが、そのばあいでもそれぞれを見たことがあれば違いが分かりそうだ。放射針状になるのはアルチニ石のほうが細針が放射状に整列する、輝く、刺さるほど尖る傾向がある、放射状だけでなく球状にもなることがあるといった具合だ(これらは個人的感想)。
 かなり前にこれも図鑑で紹介されたりして有名だったが、白木地域で採石場が稼行していた時代に出会った、大きな母岩の隙間から現れるあられ石の美しさには驚いたものだ。母岩の表面だけが黒くなったところにあられ石が乗るものがありそれはコントラストが良かった。
 ただ、それをトリミングして手ごろなサイズにするまでに、美的で気に入った部分ほど先に壊れていってしまったのが事実。 他にはゾノトラ石やソーダ珪灰石などあり、それらが珍しいと言われても、やはりあられ石の方に目が行ってしまう。そんなころの採集だった。
 そういえば現地で紫色方解石と教えていただいたものがあるのを思い出し、久しぶりに捜してみるとちゃんと標本箱に収まっていた。これはまたチェックしてみる。
ae,k
鳥羽市白木旧丸又Aragonite あられ石
あられ石
あられ石

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